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零話
零.
時期は梅雨真っ盛りだった。この日は翌朝まで雨との予報である。
外の空気と湿気の放つ、独特の香り。深夜ということもあり、どこか神秘的な雰囲気を醸し出していた。
青年は傘をさしながら、当てもなく歩いていた。生きていく上で、夢や希望を見失い、どうしようもない無気力感を抱きながら。
家で大人しくしようとも思わなかった。ただ何の目的もなく、フラフラと、深夜一時を回った外の世界を歩いていたかった。
それが青年の不健全な精神から身に付いた、不健全な習慣だった。
細い路地を歩いていくと、前方にはコンビニの灯りが見つかった。
何か飲み物でも買うか。そう考えたとき、ふと真横の公園を見やった。何故自分でもそうしたのかは分からない。
こんな時間でも点いている、街灯がその光景を照らしていた。
サアサアと降り注ぐ雨の中。ただ静かに。傘もささずに少女が独り、佇んでいた。