すべての始まり
今回は台詞だけ。
とある世界…そこは『火ノ本』と呼ばれ…
東に妖狐、西に妖狼…二匹の妖怪の山神が治めていた。
そんなある日――
ある晩、妖狐の住む山にある屋敷で、巫女服のような服装をした幼い少女が一人縁側に座っていた。
長く伸ばした髪は茶に近い黒をしており、程よく手入れが施されているのか…夜風に吹かれる度に清らかに揺れ、月光に照らされていた。
目は火炎の様に赤く、子供とは思えない目をしていた。
「…『紅蓮』、話したいことがある。」
独り言のように呟いた刹那、少女目の前に…紅蓮色の猫が現れる。
しかし…不思議な事に宙に浮いている。
紅蓮『…めずらしいな“カレン”…お前が俺を呼び出すとは。』
カレン――猫が少女の名を言うと、カレンは申し訳なさそうな顔をして
カレン「いきなりで悪い、紅蓮。突然すぎるが…私と契約してくれ。」
紅蓮『契約? お前の口からそんな言葉が出るとはな…』
紅蓮が少し驚いた顔をしたのにも構わずに、少し悲しそうな顔をしながら話す。
カレン「…この世界は嫌という程見飽きた。何の変化のない毎日、
たまにフラッと山を下りれば、石を投げられるわ『化け物』言われるわ…
そんな世界に…私は存在する意味があるのか?
…私は知りたいんだ、この世界の存在価値を。」
カレンの意見を聞き終え、紅蓮が思ったことを一言。
紅蓮『…今の言葉、“師匠”が聞いたらどう思うだろうな…(汗)』
カレン「話したが?」
紅蓮『話したのか。』
カレン「笑顔で泣かれて抱きつかれた。」
紅蓮『だろうな。』
と、此の間二人は淡々と会話。
しばらく沈黙があったが、紅蓮が軽く鼻で笑い
紅蓮『…まあ、俺が拒む権利はないと思うぜ?…新たなる小さき我がご主人様よ♪』
悪戯でも思いついたような笑みを浮かべながら、言った。
カレン「…有り難うな。」
ぽつりと、カレンが言った。
――次の日
二人は契約を交わし、妖子と別れを告げて…別世界へ旅立った。




