7,両親不在姉妹二人きりの明け方
あたしが玄関のドアに寄りかかっていると、しばらくしてバイクの去っていく音が聞こえた。
同時に玄関の扉が開き、慌てて倒れそうになった体勢を整える。
「うわっ! びっくりした~何やってんの?」
倒れそうになったあたしを見下ろしながら言う。
履いていたサンダルを脱ぎ、部屋の中へ入っていくお姉ちゃんに続くように、あたしもサンダルを脱いで、部屋の中へと入る。
「お父さんたちがいないから、良かったけど・・・受験生のあんたが朝帰りなんて、バレたら怒られるよ?」
幸いなことに、今は親戚の法事があるということで昨日の夜から両親が不在なのだ。
受験生のあたしとバイトとデートで忙しいお姉ちゃんの二人だけが、この家でお留守番をしている。
「あ、あたしだって・・・好きで朝帰りしたわけじゃ・・・・」
そう言うと、お姉ちゃんが楽しそうな瞳で聞いてくる。
「それよりさ♪和人くんとより戻ったの?」
「ななな何言ってんの!? そんなわけないしっ!!」
慌てて否定するあたしの身体は、さっきの告白を思い出して、熱くなってくる。
高鳴る心臓を押さえながら、あたしは言葉を続けた。
「あたしは息抜きにコンビニに行ったら、あいつがいて・・・強引に誘拐されて・・・」
言いながらもあたしの心臓はドキドキうるさい。
あの海で見た先輩の真剣な表情が頭から離れられない。
「そそそんなことより!!! 何でお姉ちゃんが、あたしと先輩がつき合ってたの知ってるの?」
「あぁ、だって、和人くんってモテるから何度も告白されてたし、その度に好きな子がいるって断ってたみたいだけど」
そうだったんだ。そんなこと、全然知らなかった。
何度も告白されてたんだ・・・。
「・・・って何で、好きな子があたしだってわかったのよ」
「あんた達、3年の中では有名だったよ? 和人くんにはファンクラブがあって、その子たちが調べ上げたらしいよ。それに、部活を引退した後も図書館で二人がいるところ、見られてたみたいだし」
お姉ちゃんはそのころのことを思い出しながら懐かしそうに言う。
「和人くんってさぁ軽く見えるけど、杏菜とつき合う前はずっと彼女作らなかったんだよね」
「だから、杏菜と和人くんがつき合ってるのを知ったときはびっくりした」
お姉ちゃんの話しは中学時代のあたしには知ることもできなかったことで。
「てか・・・」
そこで区切って、あたしを見る。
「入学式で見た杏菜に一目惚れって聞いたときはびっくりしたわ~!」
「・・・・・・え?」
お姉ちゃんの言葉を頭の中でゆっくりと繰り返す。
【入学式で見た杏菜に一目惚れ】
えぇぇっ~~~~~~~~!!!!!!!!!!!??????
そそそそうなの・・・!!!???