3,現れた理由
『今日は天気いいし、月もキレイだよなあ』
いまいち、この状況が飲み込めていないあたしは隣に立って、のんびりと言葉を発する宮田先輩を軽く睨むように眺めていた。
『俺、夜の海って好きなんだよねー』
突然、先輩が砂浜に横になり始める。
わけわからない・・・。
どうでもいいことしか言わないし。
ってか、突然現れて、何でこんなことになってんだろ・・・。
しかも!!
デートって・・・あたし、ジャージにスッピンですが??
あたしたちの間に沈黙が流れる。
先輩は寝ころんだままだし、あたしはどうしていいかわからず立ちつくしてるし。
早く何か言ってよ・・・。
気まずさ100倍だってのっ!!
『杏菜、ごめんな』
「・・・はい?」
突然謝る先輩にあたしの頭の中はクエスチョンマークでいっぱいになる。
まぁ、謝ってもらうことはたくさんありすぎるけど・・・。
『・・・5年前のこと』
「へっ・・・?」
今のこの状況じゃなくて、5年前のこと!?
今さら謝られても困るし・・・どっちかっていったら今の状況について説明&謝るべき!じゃない?
「あの・・・宮田先輩?意味がわかんないんだけど」
あたしがそう言うと、先輩は一瞬目を見開き、すぐに寂しそうな表情をした。
なななな何よ? 何でそんな顔すんのよ!?
『【宮田先輩】はないだろ・・・仮にも俺達は・・・つき合ってたんだし』
「まぁ・・・そうですけど。今はちがうし」
あたしはじっと先輩を見下ろした。
もう、ホント、本気で意味わかんないからっ!!
『まあいいや』
何だそれ・・・。
「あの・・・ほんと、これって何?何であたしたちはここにいるんでしょ??」
そう言うと、先輩は勢い良く立ち上がる。
そして、真剣な表情で。
『あのさ、俺達、もう一度やり直さない?』
今は夜中で。
真っ暗な初夏の海辺には誰もいなくて。
天気良いから、月明かりで海がキラキラ光っていて。
突然、現れた元彼。
しかも、昔よりかっこよくなっている。
月明かりに照らされた真剣な顔の元彼。
あたしは・・・・。
この状況に流されそうになっていた。