蝉が鳴く頃に
「ねえ、知ってる?うちらの学校、昔、大量殺人事件あったんだって~」
「え?なにそれ知らない」
「なんでも犯人は学生で、しかも最後に殺そうとした人に逆に殺されたらしいよ」
「え、ヤバッ。それってもう映画の内容じゃん」
すれ違う女子高生達のそんな雑談が耳に入ってきた。
照りつける太陽の元、久々に歩く故郷の道は、都会とは違い人や車の喧噪などはほとんどなく、変わりに聞こえてくるのは大量の蝉の鳴き声だけ。
ふと聞こえた会話の内容に私の口角は自然とかすかに上がってしまう。
(…………昔か、もうそんなに前の話なんだ)
耳をつんざくような蝉の鳴き声の中、私は空を見上げる。
雲一つない青空に、まぶしく光り輝く太陽。
そういえばあの日もこんな感じの天気だったな。
私は思い出す、あの夏の日を。私の人生が変わったあの鮮烈な日のことを
「ねえ、蝉って生き物のことどう思う?」
「え?蝉?」
ある日の夕暮れ、私の親友である彼女は突然、そんなことを聞いてきた。
「うん、蝉。私はね大好きなんだ、蝉。だって、かっこいいもん」
満面の笑みでそう答える彼女。そんな彼女に私は素直に疑問を投げかける。
「かっこいい?どこが?」
「だって、人生のほとんどを地中で暮らすのに死ぬ直前になって、地上に出てきて空を飛んで、鳴きわめくんだよ。かっこいいじゃん、最後の最後にやりたいことやって自分の思いぜんぶぶちまけて死ぬみたいなさ」
「いや、あれ、ただの繁殖のための求愛行動だから、思いとか、たぶんこもってないから、こもってるとしたら性欲だから」
「え~、そんなこと分かんないじゃん。中にはいるかもよ叫びたいこと叫んで死んでいく蝉。性欲以外で」
「いてもそいつらは生物として破綻してるからすぐ絶滅するぞ」
「ハァ~、私もそんな生き方できたらな~」
「おい、人の話聞けやコラッ、そっちが始めた会話だぞ」
(ほんとに変な奴)
彼女は世間で言うところの変人だった。いつも突然、おかしなことを言い始める。他とは考え方やモノの見方が違うのだろう、そんなことを思わせる子だった。
私はそんな彼女が大好きだった。たまにとっぴょうしもないことを言って会話がおかしくなることもあったし、本気で何考えてるのか分からないこともあった。それでも彼女が大好きだった。
彼女は誰よりも優しい子だったから。周りに流されず常に誰かに寄り添おうとする、そんな子だったから。
今のこの状況だってそうだ。
私の家の玄関の前で家着の私と制服の彼女が会話をする。この状況が彼女のそんな優しさを表していた。
私は学校に行けていない。
なぜならいじめに遭っていたから。
彼女以外の制服の子たちは皆、私をいないものとして扱っていた。私の聞こえるところで私の話はするのに私をいないものとして扱っていた。
私は、学校に行けなくなった。何もかもが嫌になって家に閉じこもった。
だけど、彼女はそれでも私に会いに来てくれた。毎日、学校が終わった後、必ず会いに来てくれた。
気を遣わないでと、そんなことを言ったこともある、しかし彼女はそれに対して、
「気なんか遣ってない、私の会話に付き合ってくれるのあんたぐらいだから、そして、あんたの家は私の家と学校の間にある。帰るついでにおしゃべりするのにはちょうどいい。ほんとに気を遣うとしたら制服なんかで来るか」、そう言った。
どこまで本当のことで、どこまで嘘なのかは分からない。
それでも、私にとってはそれも救いだった。
彼女は私にとっての救いだった。
「で、蝉についてどう思う?」
そんな彼女が私に聞いてきた。
彼女との会話は私にとってかけがえのない時間だ。よって彼女との会話で私は嘘をつかない
「正直言うと私は嫌いかな、うるさいし、鬱陶しい。害虫認定されればいいのになんて思ってる」
そう言った私に対し彼女は、
「そっか」
と笑った。
「じゃあ、将来は蝉駆除業者だな」
「いや、私の将来勝手に決めんなよ。やだよ、そんな職業。一生蝉と関わっていかないといけないじゃん」
「え~いいじゃん。どうせ、将来の夢とかないんでしょ。ならやろうよ、蝉駆除業者。大量にいるから夏の間めっちゃ稼げるよ」
「いや、夏だけじゃん」
彼女との会話の時間はとても楽しくて、どんな内容が出てくるかも分からないからずっと飽きることもなかった。
こんな楽しい時間がずっと続けばいいのに、もし学校に行けるようになってもずっと、ずっと、彼女と共に、そう思っていた。
「はぁ、はぁ、はぁ、くッ」
学校への通学路を全力で走る。
あの時の会話から数日たったある日の朝。
私の携帯に一本のメールが届いていた。
『もう我慢の限界。
土の中はもう嫌だ。
鳴いてやる
私は鳴いてやる。
蝉のように生きてやる。
最後の最後に一心不乱に生きてやる
私は今日、蝉になる だから、
駆除はお願い』
携帯に届いたそのメールを見て鳥肌が立つ。
彼女からのメール。
とてつもない嫌な予感が身体中を駆け巡る。
急いで制服に着替え家を飛び出す。
(お願いだから何も起きないで、お願いだから)
胸の中で必死に唱えながら照り付ける太陽の下を全力で走り抜ける。
久しぶりに着た制服が汗で身体に張り付く感触を感じながら全力で身体を動かした。
そこら中から蝉の鳴き声が聴こえてくる。
本当に鬱陶しい、蝉なんかやはり大嫌いだ。
後、もう少しで学校にたどり着くというところで違和感に気づいた。
蝉の鳴き声があまりにも五月蠅すぎる。
そしてかすかに蝉の鳴き声に交じって聞こえる悲鳴。
さらに足に力を込める。
そして見えてきた学校の姿は異様なものだった。
校門前ではパニックに陥って蹲るようにして泣き叫ぶ生徒や大声で周りに助けを呼ぶ生徒。頭や肩から血を流し、校門の塀や壁に寄りかかる生徒など。まさに悲惨な有様で、さらに校舎の入り口から、何かから逃げるように出てくる大勢の生徒や教師人でごった返しになっていた。
校舎の所々の窓ガラスが割れ、中から煙まで出ている。
しかし、そんななかでも最も異様だったのが、割れたガラス窓や校舎の入り口から響く大音量の蝉の鳴き声だった。
それは校舎の外にいたとしても耳を塞がなければその場にいられないほどの音で、中にいる人々はおそらく身動きすら取れなくなっているであろう大音量であった。
彼女のメールの文面が頭をよぎる。
目の前の情景をおそらく彼女が作り出したのだろうと思うと一気に絶望感が高まっていく。
(彼女に早く会わないと。会って、ここから逃げないと)
そう思いながら躊躇しようとする足を無理やり動かす。
耳を塞ぎながら、校舎から逃げ惑う人々の中をかき分けて進んでいく。
ここにいるほとんどの人々がパニック状態でおそらく周りにいる人の顔の判別すらできない状態なのだろう。
校舎の中に入っていく私を止める人は誰もいなかった。
(まず、この蝉の鳴き声を止めないと)
耳を塞ぐというよりもほとんど頭を抱える形で校舎の中を進んでいく。
校舎の中はひどい有様で、机や椅子が乱雑にそこらに転がっていた。
窓ガラスは当然のように所々割れており、床に硝子が散らばっている。
どこかで燃えてる教室もあるのか、校舎の入り口から離れていくほどに煙が蔓延していた。
(早く、彼女を連れてここから出ないと)
鳴り響く蝉の鳴き声に耐えながら片方の手のひらを、煙を吸わないように口に持っていく。
目指すは放送室。
しかし、ここであることに思い当たる。
そういえば放送室に向かうまでの道中に私が通っていた教室がある。
確認しないわけにはいかなかった。
教室に近づくにつれ、私は起きていることの大きさをまだ甘く見ていたことを思い知る。
廊下の端々に人が倒れていた。
頭から大量の血を流して。
しかも一人じゃない。
教室に近づくたび一人、また一人とそれを見かける数は多くなっていく。
ピクリとも動かない人々。
彼ら、彼女らから流れる血で廊下は血の海になり、私の靴も赤く染まっていた。
そして、私と彼女が通っていた教室にたどり着く。
私は教室の中をのぞいて、目を見張る。
教室の中はこの世の光景とは思えない有様になっていた。
おそらくは全員。
乱雑に転がる机や椅子と一緒に私の元クラスメイト達はその顔や身体を赤く染めて、変わり果てた姿で全員が教室中に横たわっていた。
そんな地獄のような教室の中心に彼女は立っていた。
教室の窓ガラスは割れ、外の青空が見えている。そんな青空を眺めるように彼女は立っていた。
その制服はいつも見ている純白の色とは違い隅々まで赤く染まっており、片手に血だらけのシャベル、片手に火を出した状態のガスバーナーを持って彼女はたたずんでいた。
この耳をつんざくような音の中で彼女はそれを全く意に介さぬように、それはもう穏やかな顔で外の景色を眺めていた。
彼女の名前を一心不乱に叫ぶ。
私の声に気づいたであろう彼女はこちらを振り返り、いつものような笑顔で私に笑いかけてきた。
彼女はポケットからリモコンのようなものを取り出し、ボタンを押した。
すると、とたんにあたりに鳴り響いてた大音量の蝉の鳴き声がピタリと鳴りやんだ。
「も~遅いよ~。あまりに遅いから危うく煙で意識を失うところだったじゃんか~」
静かになった教室で彼女はいつもの声音で暢気にしゃべり始める。
「・・・・・・・・・・・」
私は言葉が出なかった。なんて言っていいのか分からなかった。
彼女はそんな私にかまうことなく喋り続ける。
「こんな所で話してたら火が回ってきて焼け死んじゃうね。ちょっと移動しよ」
そう言うと彼女は持っていたガスバーナーをポイッと教室に投げ捨てて、私の所まで駆け寄ってきた。
変わり果てたクラスメイトをなんの躊躇もなく踏みつけて。
「ほら行くよ」
彼女は空いた手で私の手を取った。
私は初めて彼女に恐怖を抱いた。。
それからどれくらい歩いただろう。他の人に見つからないように校舎の入り口から離れた位置の窓ガラスを割り、学校の裏手の塀を登って外に出た。
人目につかぬように歩き、気づけば私たちはうっそうとした林の中にいた。
「ここまで来たら大丈夫だよね」
そう言って、彼女は手を離し私のほうに向きなおる。
彼女は片手にシャベルを持ったまま制服のポケットから何かを取り出した。
「はい、これ」
それをそのまま手渡される。
その手に持っていたのは折り畳み式のサバイバルナイフだった。
「これで、私の駆除、よろしくね」
そう笑いかけてくる彼女にいよいよもって言葉があふれてくる。
「あ、あんた何言ってんの?自分が何してるかわかってんの」
すると彼女は肩を竦めながら、にこやかに話し始めた。
「何って、メールで伝えたじゃん。私は今日、蝉のように生きるって。死ぬ前に散々、散々、鳴き喚いてやるって。だから今日一日、必死に鳴き喚いた。そして、もうたくさん鳴いて鳴き疲れた。後はもう駆除されて終わり。伝えたじゃん、駆除お願いって。だからほら、それ」
彼女は私の手にあるナイフを指さす。
本気で彼女が何を言っているのか、分からなくなってきた。
「だから、よろしく」
指さしながらにこやかに笑う彼女。
私はその手にあるナイフを地面に叩きつけた。
「・・・出来るわけないじゃん‼そんなこと‼・・・わ、私に人殺しになれっていうの‼」
思わず感情が爆発してしまう私。
今までにない感情の発露に肩で息をする。
そんな私を見ても彼女は投げ捨てられたナイフを拾いながら、淡々と続ける。
「え~、蝉嫌い、鬱陶しいって言ってたのに~?・・・ならそっかー、しょうがないか~」
そう言いながら、彼女は拾ったナイフをポケットに戻し、シャベル片手に近づいてきた。
「じゃあ、もういいや、死ね」
「えっ?」
次の瞬間、ガンっという衝撃と共に身体と視界が横に揺らいだ。
何が起きたのか、全く理解できなかった。
地面に投げ出される身体、遅れてとてつもない痛みが全身を襲う。
特に頭の左側。
それが彼女によってシャベルで殴られたのだと気づいたのはもう数秒たってからだった。
「あ~ウザったい、ホントに。鳴きもせず、喚きもせずにただただ生きるながらえるだけのあんたが、あんたらが」
地面に倒れ伏す私を彼女はシャベルを肩に担いで見下ろしてくる。
今まで見たことのない冷たい顔で。
「言っとくけど私、あんたのこと嫌いだったから。自分の思いも口にせずただ言われたい放題言われて、それでも鳴こうともせず土にこもり続けるだけのあんたが」
そう言って彼女はまたもシャベルを振りかぶる。
次の瞬間、肩に強烈な衝撃と痛みが走る。
「がアッッッっ‼」
そして、それは一発だけでははすまなかった。
背中、腰、頭、と鈍い音を立てながら次々とシャベルは振りおろされていく。
全身の酸素が口から出ていき、呼吸ができなくなる。激しい全身の痛みに涙がボロボロとあふれていく。
(なんで私がこんな目にッ・・・・)
そう思いながら痛みに耐えていた。
すると痛みの雨が突然止まった。
「痛いか、怖いか。」
彼女の声が聴こえてくる。
「なら戦え」
そう言って目の前に何かが落とされる。
それは先ほどのサバイバルナイフだった。
「それで私を駆除しない限り、痛みはやまないし、あんたは死ぬぞ」
彼女はそう言って私を見下ろしていた。
目の前に落とされたサバイバルナイフを何とか拾う。
痛む身体に言い聞かせて何とか立ち上がろうとする。
ここで立ち上がらなければまた先ほどの痛みの雨に襲われる。
そんな恐怖にかられて何とか身体を起こす。
ナイフの刃を出し、握りしめ彼女に向ける。
しかし、やはり人殺しは怖い。
それにどれだけの仕打ちを受けても今までの彼女の笑顔が思い出される。
(無理だよ・・・、私には)
そう思いながら、涙を流す。
そんな私を見て彼女はシャベルをもう一度振り上げる。
またもや強烈な一撃が私に襲い掛かる。
しかし今度は連続して痛みが襲ってくることはない、立ち上がる私を待ってそのたびに一撃を加えてくる。
「私はね、ずっとアンタが嫌いだった。何も言わない、何もなさない、自分の思いを内に抱えて自分の存在価値を見いだそうとしないあんたが。生きてる価値なんてのを考えず、そのままの自分を許している、そんなあんたが。周りの連中だってそうだ、自分たちは何もせず、ただ誰かを笑うだけ、自分たちの存在する意味なんて何も考えず、ただこの世界に居座り、のさばるだけ、考える力はあるのにそれを自らのためにしか使わず、他の生き物を貪り食うだけの連中。そんな人間という生き物が私は大嫌いだ」
数々の打撃を加えられる中、彼女の声を聞く。
全くもって理不尽で訳の分からないことを言う彼女の声を。
与えられる痛みの中でふと目を開けて彼女の表情を見る。
彼女の顔は涙で濡れていた。理不尽に暴れるだけのくせに彼女は苦しそうに泣いていた。
「そして私はッ、私はそんなことを思いながら何もしてこなかった自分が、自分が一番大嫌いだ。アンタが何を言われても何を言われ続けてもそれを見ているだけで何も出来なかった私が大嫌いだ。・・・・・・・だから私は変わった、変わって見せた。あんな奴らをぶち殺して見せた。今度はあんただ。今のあんたを私がぶち殺してやる」
そんな声が聞こえた。
(ふざけるな)
そう思った。
何たる身勝手、何たる押し付け。
そんなことで勝手に苦しんで、勝手に自らを地獄のどん底に追いやって、そんな顔で苦泣いているなんて本当に許せない。
(ああ、鬱陶しい、ホントに鬱陶しい)
私は手の中にあるナイフを強く握りしめた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
攻撃の合間を切り抜けて彼女のお腹にめがけて突っ込んだ。
グサリッ、と肉をかき分ける感触が手に伝わる。
「がはッ」
彼女の口から血が吐き出される。
ナイフを握る手が震える。
耳元から彼女の声が聞えてくる。
「ああ、痛ってえなぁぁ」
「ああ、ご、ごめっ、がぁッ」
とっさに謝ろうとした私の顔を彼女の拳が襲う。
「サバイバルナイフなんだ。お腹を一刺ししたくらいじゃあ、死なない。狙うんだったらここ狙え」
そう言って彼女はお腹に刺さったナイフをこちらに投げ捨て、自分の首を指さした。
ナイフを拾う。
(もうどうにでもなってしまえ)
そんな思いでナイフを握りしめる。
「う、うあああああああああああああ」
彼女に向かってナイフを振りかぶって突っ込む。
「うわああああああああああああああ」
彼女はシャベルを頭上に振り上げる。
次の瞬間、衝撃が身体を襲う、しかしそれはシャベルの柄が肩にぶつかっただけで、私の突き出したナイフは彼女の喉元をしっかりととらえていた。
「が、ガふッ」
彼女の口から大量の血が噴き出される。
彼女の身体から力が抜け、私によれかかる。
「そう、それでいいんだ。・・・・・・ありがとう」
喉を刺されて言葉になっていない言葉が彼女の口から飛び出す。
しかし私の耳には、はっきりとそう聴こえた。
私の身体に寄りかかる彼女の身体が冷たくなっていくのを感じながら、私はひたすらに大声で泣き続けた。
最初から分かっていた、彼女に私を殺す気がないことくらい、彼女は私をシャベルの平面でしか殴らなかった。もし本当に私を殺しに来ていたのだとしたら最初の一発で終わっていたはずだ。
私はその後もその場に警察や大人たちが来るまでひたすらに、ただひたすらに泣き続けた。
あれから20年は立ったであろう。
私はあの後、彼女を殺した罪で捕まることはなかった。
殺されそうになって逃げまくり、必死に抵抗したうえでの正当防衛、ということになったらしい。
私はあれから歌手になった。
子供のころからの念願を叶えることができた。
高校の頃、いじめられたきっかけとしても、その夢を宣言してしまったためだと今更になって気づいた。
夢を叶えるまで、それなりに苦しんだし。泣きそうな思いも何回もした。
しかしそれでも鳴くことをやめなかった。
彼女のように鳴いて、鳴いて、鳴きまくって死んでやるとあの時に誓ったから。
今ではそこそこ名が売れた人物になったと思う。
今日は、地元のイベントでゲストとして呼ばれてきた。
故郷の景色はあの時と何も変わっていない。
しかも、あの日と同じく快晴で、雲一つなく、太陽が照り付ける暑い夏の日。
まさに、運命だろう、そう思った。
「今回はゲストでわが地元出身の○○さんにきてもらいました。それではどうぞ」
私はステージに立つ。いつまでもここで自分の思いを鳴き続けることを誓って。これこそが私の生きる意味だと誓って。
遠くからあの日と同じように蝉の鳴き声が聴こえる。
(ああ、もう本当に・・・・・・・・・・・
私は目を瞑って、あの日を思い出し、笑いながらこう思う。
・・・鬱陶しい・・・。)
終




