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閑話 桃花視点

 昔から柚葉だけが褒められた。


「柚葉はえらいね。」

「柚葉はお利口だね。」


 だから、私は大声で泣いた。私が泣くと皆んなが心配してくれる。


 元々あった柚葉への視線は全て私のものとなる。

 

 そして年齢が経つにつれ、男の子たちがチヤホヤと持て囃してくれた。


 ただニコニコ笑って上目遣いをすればいいだけ。


 柚葉には到底出来っこないけど私がやれば皆んな喜んでくれる。そう思ってた。


 だけど……

 1人だけどうしても桃花を見てくれない。


 奏ちゃんだ。

 

 奏ちゃんは桃花がどんなに笑顔を振り撒いても、どんなに哀れに泣いても柚葉を見てた。


 どうしても意にそぐわない桃花は次第に奏へ執着していった。


 どうしても奏ちゃんが欲しい。


 幼い頃、保育園の遠足で動物園に行った。各々が好きな場所から好きな動物の絵を描くよう言われて桃花は奏を誘った。


「桃花はシマウマが描きたいの〜。」


 同じ班の男の子たちは皆んな桃花に賛同し着いてきてくれた。でも奏は着いてこない。


 奏ちゃんの向かう先には柚葉がいる。どうして来てくれないの?桃花は焦れて奏の腕にしがみつく。


「奏ちゃんシマウマ描きたい。着いてきて!」


「シマウマなら他の子も描くからみんなに着いていけばいいよ。柚葉が前からゾウを描きたいって言うから俺はゾウの所に行くよ。」


 はぁ?なんでそうなるの!桃花の腕に力が籠る。


「私は奏ちゃんと一緒にいたいの!」


 ウルウルと上目遣いで懇願したものの、奏ちゃんは困った顔で更にこう続けた。


「じゃあ、3人でゾウ描きに行こう。」


 ズルズルと桃花を引きずるカタチで奏は歩きだした。

 

 途中でキリンにするって言っても聞く耳もたず、ゾウを描き出す柚葉の座る横に座った。


 柚葉は夢中になってゾウ描く。


 柚葉はいつだって自分のやりたい事を曲げない。そしてやりたい事をしてる柚葉は集中して最後までやり抜く。

 


 阿呆らし。


 なんで桃花がゾウなんて描かなきゃいけないの。桃花は途中で飽きてただ灰色のクレヨンで丸く塗りつぶして絵を終わらした。


 一方、柚葉はゾウをピンクで塗り背景に青空を描いた。奏はふと気になりどうしてゾウをピンクにしたのか聞いた。


「ピンクは私が1番好きな色だから。」


 柚葉は頬を紅くして答える。


  奏はそんな柚葉から目が離せず自分の頬まで紅くした。


 結局、柚葉の絵はクラスの代表になって、誰もが見る掲示板へ飾られた。

 

 それを1人眺めた桃花は誰も見てないことを確認すると絵を破り捨てた。


 ……絶対、柚葉の好きなもの全て奪ってやるんだから。


 

 

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