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第三話 柚葉視点

15歳12月24日 誕生日(前半)


「今日、一緒に帰れる?」

 柚葉にとって何気ない一言だった。しかし奏は何か考えるように瞼をふせて答える。


 「……ごめん。今日は予定があるから。」

 少し申し訳なさそうに言う奏の目は長いまつ毛に隠れて柚葉の視線は重ならない。


「そっか。じゃあ、先帰るね。」


「あっ待って。あとで柚葉の家行く。……話したいことがあるから……。」


「……?……わかった。じゃあね。」


 柚葉は笑顔で手を振って、くるりと踵を返した。


まあ、仕方ないよね。奏にだって予定はあるし。


今日は柚葉の誕生日だけど別に祝ってほしいとかそんな気持ちはない。


ただちょっとだけ特別な日にしたかっただけ。やっぱり少し寂しいなと思いながら家路に着いた。

 

デスクに座って、数学のノートをパラリと捲る。


そういえば奏はあの時、何を話したかったのだろう。


柚葉の目に数学の公式が入った。奏のことだから解らないトコ教えて〜とかかな。


小さな頃から奏は解らない問題があると必ず柚葉に聞いてくる。


それ以外でも消しゴムを忘れたとか小さな事で柚葉を頼ってくる。


たまに桃花が私が教えるよといっても、桃花には分かんないだろと言って柚葉を頼る。


 そんな奏が柚葉は大好きだった。私だけを求めてくれる奏は柚葉にとって掛け替えのない特別だった。


 スマホが鳴る。通知は桃花からだった。通話ボタンを押すと一方的に桃花が話しかけてくる。桃花の癖だ。


「もしもし、柚葉〜。聞こえてる〜?

 今ね〜ajittoにいるよ〜。

 

 私ね〜奏ちゃんと一緒にいるの〜。

 ネックレス買ってもらうんだ〜。

 付き合った記念日だもんね〜。」


 呼吸が出来なくなった。


頭から手の指先そして足の爪先へ何か冷たいものが駆け巡る。


冷たくなった指先からスマホを落としそうになる。


ようやく震えてることに気付く。


何も言えない柚葉を嘲笑うかの如く桃花の言葉は紡ぎ続いてく。


「もう人多いな〜。

 今日は遅くなるってママに伝えて〜。じゃ。」


 雑踏の街から急に静寂へと変わる。


 柚葉が自宅で1人ぼっちでいる現実に戻される。

 

 何があったのだろう。

 

 頭では理解してるが心が着いていけない。

 

 咄嗟に部屋着の上からコートを羽織る。携帯だけ握りしめて家を飛び出す。鍵はかけたとかどうでもいい。

 

 ひたすら駅前のビル街へと駆け出した。


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