第十五話 柚葉視点
「栗原柚葉さん!好きです!一目惚れです!
付き合って下さい!」
柚葉は内容よりもその声にビックリしてしまった。晴人くんが大絶叫告白をしてしまったからだ。
柚葉の頭の中でやまびこの様に晴人くんの声がこだまする。
「あの……友達からお願いします……。」
柚葉の思考は停止してしまって、自分の読んだ小説の定型文みたいな返答をしてしまった。あれ友達って、じゃあ私達って今は何なんだろ。
2人共、ん?となってしまい、次の言葉が見つからないでいると。
「あちゃー。晴人振られちゃったかー。」
同じ班の男子達だ。草陰から顔を覗かせる。もしかして最初から最後まで見られていたの?柚葉はカッと紅くなり俯いしまう。どうしよう気まずい。皆んなとどうやって顔を合わせていいか分からない。
「晴人はバカだね。最初から脈無しなんだよ。」
今度はキラリちゃんが顔を出した。アコーディオンを持っている。キラリちゃん、ホテル抜け出して唄いたかったんだね。でも居てくれて良かった。
班のみんなが集まって晴人くんがいるにも関わらず、何故晴人くんが振られたのかを話し出す。
「ゴルァ!またお前たちか!」
一斉に皆んなの肩がビクッとなる。また先生に見つかった。フラレ会議が盛り上がってしまい誰一人先生がこっちへ向かってることに気付かないでいた。
なんでも晴人くんの大絶叫告白はホテルのロビーにいた先生達にまで聞こえたらしい。
とうとう柚葉の班は明日の予定が謹慎処分となった。そして今日中に反省文を提出することが義務づけられた。
キラリちゃん他みんなは、ごめんなさい。この一行のみだった。柚葉は真面目に反省文を書いた。まず初めて飛行機に乗ったこと。沖縄の海が綺麗だったこと。歌に励まされたこと。島の人々が暖かったこと。そして最後に皆んなで修学旅行に来れてかけがえのない思い出が出来たこと。
何枚にもなった反省文を先生に提出すると、読んだ先生が感動してしまった。柚葉の書いた反省文のおかげで明日の謹慎処分は免除になった。
次の日、柚葉の班は水族館に来ていた。大きくて立派な建物だった。謹慎処分がなくなってよかったな。柚葉は水槽を眺めながらそう思った。
途中で柚葉の足が止まる。柚葉の目に入ったのはマナティーだった。初めてみた。マナティーは眠そうな目をしながらモシャモシャとキャベツを食べる。可愛い。フフッと笑うとマナティーが奏と重なる。あの優しい眼差しとかゆっくりな動作が奏に似ていて柚葉は切なくなる。
奏、会いたいよ。
奏を思い出すと胸がズキズキする。
一度は諦めた恋なのに。
柚葉はずっとマナティーを見ながら、その場所から動けなかった。




