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第十一話 柚葉視点

16歳12月24日 再会


8月中旬


 「柚葉どうしたの?元気ないね。」


 茜先輩に聞かれて柚葉はハッとなった。今日からインターハイなのにしっかりしなきゃ。

 桜ヶ丘高校の水泳部は強豪で全員がインターハイに出場する。開催地が県外だったため皆んなでバスを貸し切ってやってきた。

 柚葉と茜先輩はスタンド席から部員達の結果をノートに記録していく係だ。選手が本気で頑張ってるんだ、私も頑張らないと。柚葉がそう気張った時だった。茜先輩が言った。


「恋の悩みだね。相談しな!」


 茜先輩は自分がインターハイに出られないのが心底悔しいのだ。記録、応援する気は更々なかった。

 柚葉はいいですと断っても茜先輩は聞いてくる。根負けした柚葉がポツリポツリと事情を話してしまった。

 相槌を打って、険しい顔をしていた茜先輩が


「つまりアレだね。その恋諦めてさっさと次行きな!

 もっと目標を持って楽しく生きな!」


 諦められないから苦労してるんです。柚葉はムウと膨れた。茜先輩……ひょっとして恋したことないですよね。

 だけど目標を語る茜先輩の目は輝いていて、女性同士だけど柚葉は思わず見惚れた。一理あるかも、柚葉の中で悩みが解けていった。

 インターハイが終わって3年生が事実上引退となった。スポーツ推薦を勝ち取ったほぼ全員の3年生が卒業まで毎日来ると宣言してたけど。新部長はなんと茜先輩だった。茜先輩が部長をやれば新入生に女子が増えること間違いなしということで満場一致で決まったらしい。


 雪が舞い散ると共に冬休みがきて。柚葉は部活を理由に帰省せずにいた。幸い強豪校の水泳部はクリスマスも正月も部活の予定があって、柚葉の寂しさは皆無だった。


「クリスマスイヴなのにー!」


 部活中に部員の1人が叫んだ。彼は彼女がいるらしい。

 彼女にあげるプレゼントの話で盛り上がる。その彼女が1月に誕生日だから金欠になると嘆いた。すると晴人くんが柚葉に誕生日を聞いてきた。


「……今日です。」


 皆んなが一斉に柚葉を注目する。みんなから拍手をもらい、おめでとうと言ってもらった。照れくさかった。

 茜先輩がなぜか固まった晴人くんを肘で小突いて、晴人くんの意識を戻した。素早くジャージを着た晴人くんが


「俺、ランニング行ってきます。」


 えっ、雪が積もっているのにランニングするの?柚葉は心配になった。しかし部員の皆んなは何故だか暖かい目をして晴人くんを見送った。

 16時に部活が終わり着替えて帰ろうとすると晴人くんが待っていた。柚葉が雪で転ばない様にらしい。寮までの短い道のりを2人で帰った。

 寮の前に着くと晴人くん何やらポケットをゴソゴソとあさり出して。


「すまない。田舎のコンビニはこれしかなかった!」


 と、柚葉にシャープペンシルを差し出した。

 どうやらランニングと称して部活を抜けてコンビニへ駆け込んだらしい。学校からコンビニまで5キロはある。

 晴人くんが雪道を往復10キロも走って買ってくれたのが、柚葉にはたまらなく嬉しかった。


「ありがとう。」


 柚葉は微笑んでシャープペンシルを受け取った。

 その時だった。


「柚葉!」


 後ろから聞こえるその声にドクンと胸が鳴る。

 奏が立っていた。

 

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