第九話 柚葉視点
15歳春 入学
柚葉と両親は長い道のりを経て寮に着いた。
柚葉の部屋は3階の角部屋でエレベーターの隣だ。
シャワールーム、トイレがついた部屋でベッド、デスク、冷蔵庫、電話機が備えられていた。
荷解きが済んだ所で寮の係員から食堂、大浴室、ランドリールームの順に案内された。
とても綺麗な設備で心配していたお母さんも自分が住みたいと言うほどだった。
両親はその日に帰って行った。寮生活を許し遠路はるばる来てくれた両親に柚葉は感謝した。
高校の入学式は中学校同様に辞退した。
登校初日、クラスと席順を確認して柚葉は教室に入った。席は1番後ろで柚葉は気が軽くなった。
「プリント配るから、前の席から渡して下さい。」
前の席から順々にプリントが配られていく。柚葉は前の席の男子から渡されるのを待った。前の男子が後ろを振り返った時、
「うわっ!ヤベエ!」
柚葉の顔を見て言ったのだ。
なんだろうと柚葉はキョトンとして男子を見つめる。
男子はみるみる内に顔が紅くなり、口をパクパクさせた。
「あっごめん!」
と、急いで振り返ってしまった。
柚葉は少し気になり、名簿で彼の名前を確認した。
柿崎晴人くん
柚葉と晴人の最初の出会いだった。
お昼になるとクラスの半分が食堂に向かった。
柚葉はお弁当持参だった。
まだ足の不自由な柚葉に、寮母さんが特別に作ってくれたのだ。
柚葉が自分の席でお弁当を出してると何人かのクラスメートが集まって、一緒に食べようと誘ってくれた。
クラスの中で県外から来ているのは柚葉だけで、寮はどうか。とか柚葉の地元は何があるか。など沢山聞いてくれた。
みんな暖かい優しい人で柚葉は嬉しかった。
帰宅時間になると各々が教室を出て行って。柚葉も皆んなの流れにそって帰ろとした時に声がかかる。
「栗原さん!時間ある?」
呼び止めたのはさっきの柿崎晴人くんだった。
柚葉に今日の予定はない。はい。と答えると、柿崎くんは、ついて来てと柚葉のリュックを持ち上げた。
柚葉はリュックについてやんわり断った。
しかし柿崎くんは柚葉の足を心配しておんぶすると言い出した。
柚葉はブンブンと力強く首を振った。
すると抱っこの方がいい?と両手を広げてきた。
この人、どうしてナナメ上を選択するのか柚葉は開いた口が塞がらなかった。
柿崎くんが連れてきたのは、学校のプール施設だった。
施設というだけあって温水プール、飛び込み台まであった。柚葉が感心して見回してると、水泳部の人たちが入ってきた。
「よう晴人。入学おめでとう」
「ちわっす。」
え、もう知り合いなの?柚葉がビックリしていると、部長らしき人が柚葉を見て柿崎くんに尋ねた。
「この子は?」
「マネージャーです。」
ちょっと待って。柚葉は水泳部もマネージャーも希望していない。何も説明なしに柿崎くんに連れて来られたのに。柚葉が否定しようとすると。
「よっしゃー!!」
部員から大歓声が上がる。当の柿崎くんはというと、よくやった晴人!と背中を叩かれてまんざらでもない様子。
ちょっと待ってよー。柚葉はもう後には引けなくなっていた。




