第十五章:偽装報告
逆転した尋問、そして偽りの報告。ヤマシタの口から語られるのは、崇史の想像を絶する組織の論理だった。
2032年7月30日、金曜日。22時過ぎ。
「俺が何をしてるかって? 決まってるだろう。俺は真実が知りたいだけだ。誰が、何のために、俺の家族を殺したのか」
崇史は、不器用にガムテープを巻く彼女を見て、苛立ちを隠さずにその手からテープを奪い取ると、自ら男の手足を拘束しながら言った。
「こんなことをしたかったわけではない。お前たちが、自分の仕事をちゃんとやっていれば、俺は今ここでガムテープを巻かなくてもよかったはずだ」
崇史の手伝いもあって、男たち全員の拘束が終わった。
「お前たちこそ、一体何をやってるんだ」
崇史は抑えていた怒りがまた込みあがってくるのを感じた。
「誰が犯人なんだ!なぜ、隠ぺいしようとしたんだ!なぜ俺の家族が殺されなきゃならなかったんだ!」
崇史が山下に近付くと、彼女は一歩後ろに下がった。だが、その瞳から先ほどまでの恐怖は消え、どこか居直ったような、あるいは全てを諦めたような光が宿っていた。
「そう、あなたはそれが知りたいのね」
「当然だ!そんなの聞かなくてもわかるだろ!」
彼女のまるであきれたような態度に怒りが沸き上がってきた。
「教えろ!誰が、何のために!」
山下は崇史の言葉にかぶせるように言った。
「待って。私も、詳しいことは知らない。ただ、およその話は分かるわ」
「だから、私が知っていることはすべて話す。その代わり…」
そういって彼女はスーツのポケットからスマートフォンを取り出した。
「でも今は先に片づけないといけないことがある。ここは『処理』しないと」
「電話、いい?」
彼女はスマートフォンを指さしながら崇史**の許可を求めた。
「…何をする気かは知らないが、わかってるな。何をやっても無駄だ」
**崇史の言葉を肯定と受け取ったのか、**彼女はどこかに電話をかけ始めた。
しばらくして相手が電話にでた。彼女の声のトーンが、冷たい事務的なものに変わる。
「私です**。S1で問題が発生しました。おそらく他の組織とのいざこざだと思いますが、こちら側の人間は全員死亡しています」
崇史はそれを聞いて、思わず息をのんだ。**
(何!?こいつは、なにを言ってる…?)
彼女をキッとにらむが、山下は表情一つ変えずに言葉を続ける。
「はい、・・・。はい。わかりました。『処理』**はこちらで手配しておきます。ここは封鎖でお願いします。あと、上への報告はお任せしていいですか?・・・はい。よろしくお願いします」
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