大切なもの
小学生にタイムスリップしてから、1週間が経過した。どの教科も簡単過ぎていつも窓をみている不思議な子というポジションを手に入れた。
そもそも、完全文系型とは言え、文系科目だけは偏差値70を叩き出して、名門私立大学に進学した俺が今更小学校の授業なんて退屈すぎる。
「大輝君!」
ケイコ先生の声に反応して黒板を見ると、黒板に計算式が載っていた。
「これ解いてみなさい。」
俺は無言で立ち上がると丁寧に計算式を書いた上で答えを記入した。
「これでいいですか?」
「正解です。ねぇ?大輝君。もう少し授業に参加してくれないかしら。」
「すいません。簡単過ぎてつまらないんです。話は聞いてるので、授業を進めてください。」
俺は席に戻ると親におねだりして買ってもらった漢字検定のドリルを解き出した。いきなりできて、天才扱いされたらたまったものではない。
次の授業は図工だった。粘土で思うままに作るというものだった。俺は親が美術部だったんだ。俺は嫌いだけど、小学生レベルなら十分だろう。
俺は道具を駆使して、校舎を完成させた。
他の子たちが化け物じみたペットを模したものを作る中、俺の作品は異質だった。
「ねぇ、大輝君。どうして校舎なの?」
「動物はどんなに大切にしてもいつかは居なくなってしまう。でも校舎は崩れない限りいつまでもここにあります。多くの生徒がここで勉強し、卒業していったんだと思います。僕はペットよりも校舎にこそ価値があると思います。」
「…価値。」