月が笑えばきみは歌う
月の光に誘われて
ボクらは街にくりだした
人っ子ひとりいない夜の小町通りは
まるでボクらふたりだけのためにあるように
じっと息をひそめてる
きみはパラノイア気味のダンサーみたいに
満月の光を浴びてスキップする
真っ赤な唇を小指でなぞり
長い髪は返り血を浴びたよう
そっと触れると
邪険にボクの手を払いのける
怖れ慄くヴァンパイアみたいに
きっ、とボクをにらみつける
ほら小さな牙まで見えるよ
そんなとき
きみはきっとJulietteの夢のなかで
密かな愉しみにふけっているんだ
きみの陰鬱に美しい身体が
悦びにふるえているもの
きみはいつかきっと
笑った月の下で
ボクの首をしめるに違いない
そんなたわいもない空想を弄んでいると
きみはふとぼくを振り返り
にっこりわらった
【注】
この詩をもとに曲を作ったことがあります。
https://www.nicovideo.jp/watch/sm16043087
全然ウケませんでした。あははは。
歌詞ではないので、この詩を架空の言語にして歌ってるという設定にして、ごまかしていますw
安部公房の『笑う月』を読んで書いた気がします。あと、曲を作る際には、アーシュラ・K・ル・グインの『オールウェイズ・カミングホーム』にも影響を受けた気がします。
短編小説にできそうとも思ったのですが、絶対に安部公房とかぶりそうだし、逆立ちしても肩を並べられないのは分かっているので、やめときました。




