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10・おっさんは新たな脅威に直面する

 夕方を迎え、夜番の者を残して村へと帰る。


 おっさんはとくに何もなく平穏な今のうちに速射と連射を完成させようと、村はずれにある練習場へとやって来ていた。


 他にも弓や魔術の練習に来た冒険者が居り、思い思いに練習をしている。


 そんな冒険者を眺め、魔術師を見れば、風弾を飛ばしている。

 カマイタチの様に風の刃で目標を斬り付ける魔法だ。こいつは連射が出来る。

 もちろん、風は射程が短く10メートルほどで消滅しているが、剣や槍の支援には十分な距離である。


 おっさんはそれを見て考える。(手数なら小弓でイケるかも知れん。が、威力も必要なんだよな。サブマシンガンと軽機関銃みたいに弾薬共有して威力増大みたいな魔法はないしなぁ)


 と、少々魔法を羨ましがるが、それはおっさんがプレイしたシューティングゲームの仕様であって、現実の機関銃もLAD軽機関銃の様な拳銃弾仕様は実用化されてはいないのだが。


(いや、出来ない事も無いか?小型コンパウドボウなら)


 と、おっさんはオモチャ並の小さなコンパウンドボウを創り出す。

 全長40センチ程度の大きさなので引き代も知れており連射には向いている。


 引き絞り矢を創り出すが、これも弓に合わせて短いモノ。

 試しに連射をしてみるが、矢の生成が追いつかない。そのうえ狙いを定めて誘導するので目標から目を離せない。これではまったく意味をなさない事に落胆するおっさんだった。


 その翌日もとくに何もなく終わり、同じ様に訓練に勤しむが、結果は同じだった。


 ラノベ作品でよくある複数の矢を同時に放つという、おっさんからすれば荒唐無稽な技も試してはみたが、当然ながらうまくはいかない。


 翌日の巡回ではポーターが足跡を見付け、警戒を呼び掛けてきた。


「イノシシだ、まだ近くに居るだろうから気をつけろ」


 おっさんは先ほどから近くで何かしている熱源を見付けていたが、こちらに気付いていないので放置していた。

 冬場なので勝手に狩って良いのか迷っていたのが本音である。(イノシシか。なら、この熱源で間違いなさそうだな)


「それなら先ほどから見つけているんだが、狩って良いのか?」


 おっさんが呑気に尋ねると、ポーターは驚いた顔をしている。


「見付けていたのか?あ、ああ、イノシシやシカを狩るのは問題ないぞ、自分の食い扶持を持って帰って怒るやつなんかいないよ」


 との返答に、おっさんは弓を出して熱源を射る。


 場所は分かるのでふたりを案内しながら向かうと、かなり大型のイノシシが倒れている。


「見えもしない獲物を一矢で倒すのかよ」


 と驚くポーターだが、エミリーはキラキラした目をおっさんに向ける。


「さすがですね。魔力を辿る魔法はかなり高度だって聞いたんですが、ダイキさんは修得していたんですね」



 と、また新たな概念を提示され、魔力探知が存在する事を知ったおっさんだった。


 ようやく解体にも慣れ、おっさん自らナイフを振るう。もちろん、ポーターから時折注意されながらだが。


 その傍らで聞いた魔力探知はまさにラノベのそれであり、エミリーが不完全な身体強化しか使えない事にも影響していた。


 魔力がどのように空中を伝播しているかは解明されていないので、よほどの修練を積まなければ修得出来ないモノであるらしい。


 おっさんはふとある事に気づいた。(召喚者が簡単に魔法やスキルを行使出来るのは、科学知識という素養があるからか?)と。


 おっさんは古来の技術が一子相伝や門外不出だった事を思い出す。(ある処にはある知識なんだろうが、魔術師の価値を維持する為に『門外不出』なんだろう)と。


 おっさんはエミリーに熱探知か魔力探知を修得させようと思っていたが、かなり難しい事に気が付いた。


 最低限の処理を終えた獲物はポーターが収納し、巡回を再開する。


「おっさんのスキル凄いな。たまにシカが群で隠れてる事あるから、居たら狩ってよ!」


 なんて言われて気分の良いおっさんだった。


 しかし、シカを発見する事は出来ずに巡回は終了し、今日も今日とて新たな技が出来ないかと練習に励むおっさんだった。


 おっさんは考えた。(ずっと見ているんじゃなくて、矢に覚えさせれば良くないか?たしか、ミサイルにもあったかも)と。赤外線誘導ミサイルは初めからその様なシステムだが、軍オタではないおっさんには酷な話である。


 そう考えながら、コンパウンドボウを出現させ、矢を生成する。そして、矢に目標を覚えさせるイメージで矢を放ち、次を生成し、別の目標へと放った。


 見事に命中した二本の矢。(よし、イケそうだな)と、確認して更に間隔を短く、今度は三本に増やすと、二本目が失敗だった。(ふむ、集中とイメージかな)と、再挑戦し、今度は成功するが、そこで気づいてしまった。(これ、ミニコンパウンドボウにする意味ないよな?)と。


 今度はいつも使っている弓を出現させ、同じ事を行うと、当然ながら成功する訳で、ワザワザ弓を変えるのは遠回りだったと後悔したおっさんである。


「お、今日のメシはお前さんが狩った獲物だってな!」


 ギルドの酒場に入ると早速絡まれるおっさん。

 酒は強くないが、ギルドには酒メイン。もっと言えば魔草から作れるビールもどきである。

 歴代の召喚者達が世に出した便利な魔道具も存在するが、そんな高価なモノは貴族や大商人くらいしか使えない。場末のギルド酒場にある筈もなかった。(ビールはあんま好きじゃないけど、保存可能な飲料は酒だもんなぁ)と、半ば諦めたおっさんは、冒険者に絡まれながら、今日の夕食にありついた。メニューは自分で狩ったイノシシの煮込みだ。

 明日にはローストポーク的な料理も出来ると聞かされ、ニコニコと夕食を終える。


 最近では毎日の様におっさんが訓練に向かうため、エミリーは女性陣と過ごす事が多くなっており、おっさんはどこか安心していた。


 とくに何も起きない村での巡回。あの氷風狼を討伐したからもう安全になったんじゃないかとおっさんは気を緩めていた。昨日は自律追尾矢も習得したという満足感も大きかった。


「なんかおかしい」


 朝からポーターがそんな言葉を繰り返しながらあたりを見回しているが、経験の浅いおっさんにはサッパリだったし、望遠や熱感知には何も引っかかる事はなく、ふとエミリーを見ても、慣れない土地とあってポーターの言葉を測りかねている様子だった。


 おっさんがいくら見回しても何も見えず、勘違いか何かだろうくらいに思い始めた頃、空にナニカを見つけた。


「鳥か?」


 おっさんの言葉に反応したポーターがそれを確認する。


「あいつ等かよ。魚だ!」


 おっさんには意味不明な言葉に聞こえた。

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