並行世界序章 昔と同じように
変わる未来
腐敗臭がする。森のじめっとした香りに混じって狼の肉が分解されているのを感じる
そして私はそれをじっと眺めている。あの腐乱していく狼の中には死に神がいるのだ。
ソイツが息をはいて狼をむさぼり食っている
証拠なんだ。この臭いは死に神の影。
私はソイツを目の前にして目を離せない。
そして不意に風が吹いた瞬間。
ソイツと目が合った気がした。その目の奥に誰かがいた
Rute1
誰かが孤独に生きていた。誰にも交わることもなく本当に夜に一人で迷子になった哀れな子供のような。人間がいたそんな世界でまともに羽化することもできずにちに落ちたサナギのような末路を送った人間がいた。その誰かはただひたすらに実験を繰り返し繰り返し、そして真理に到達することができたのだろうか。
無念の臭いがした。ただ無念の臭いがした
ある丘の上で男が一人で薬を作っていた。
何を目的としてるのかも分からずただ一人で薬を作る薬を作る。
部屋の中は薬品の臭いに満たされている。
村の外れの高原の上の小屋の中には一人の患者と一人の医者とが静かにゆっくりとした時間を
過ごしていた。
窓のそばに、女の人が一人寝ていてどこに目を向けてるのかもわからない。まるで置物のようだった。
そしてもう一人、ベットのすぐそばの机で試験管を揺らしていた。カラコロとゆっくりとした
音が緩やかなリズムを刻んでいるのだった。
うとうとした女の子が何気ない話を振る。
こんこんと言葉は溢れて宙をまう。
今日の天気は晴れところにより曇り
季節がくるくると回って絶望の夏が来る
赤く紅く朱く