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6、地上の混沌

 地上に混沌があった。街の作業員が混沌をスコップですくって荷台に載せていた。街の作業員には正確なことはわからなかったが、この混沌は、地上に生物が誕生して、大地の上を歩くようになっても、まだ混沌は混沌でありつづけた。

 街の作業員たちはスコップで荷台に混沌を積んでいる。街の作業員の中にきれいな女の人がいる。力仕事はできないのか、板書を持って何かをチェックしている。

 地上の混沌は、いったいこの世界にとって何を意味するのだろうか。考える。わたしは深く考える。

 地上の混沌を考える。大地を考える。生命の誕生を考える。

 もし、大地が混沌の生成の前に存在したのなら、混沌より大地の方が古いことになり、混沌とは何なのか、大地とは何なのか、解明することが難しくなる。

 作業員たちが積んでいる混沌の重さは大地より軽く、濃度は大地より濃い。しかし、混沌は大地にへばりついていて、大地に浸透したりはしない。

 大地とは何なのか。

 大地はいつ混沌になるのか。

 大地は、ひょっとして、物質の可能性を育むことを目指しているのか。大地に知性はない。大地の物質の求める存在の方向性が物質の可能性を求めていて、それで大地はみずからの体から混沌を生成したのだろうか。

 我らが大地は、地上の混沌の存在する我らが大地は、そのように作用する物質なのだろうか。もしそうなら、あの作業員たちは、混沌から生まれたのではないだろうか。

 この世界に厳密な意味で混沌といえるものが存在するのだろうか。

 物質は、それが何であれ、いつか変化して、まったく予想外な物質になるものなのだろうか。もしそうなら、すべての物質は混沌だ。しかし、作業員たちは、物質の規則性を発見している。大地も、生活雑貨も、作業員たちの知る限りは無秩序に変化したりはしない。

 ひょっとして、大地や生活雑貨が遠未来に無秩序といえるほどに変化するとしたら、極大観測者にとって、それらは混沌であるといえる。

 極大観測者にとって、遠未来に物質が無秩序といえるものになるのは、ひょっとしたら、不規則性の拡大が行われているからかもしれない。

 この大地が想像よりも遥かに古いものであり、大地の表面が物質の規則性を定形化する必要がないほどに長い時間をかけて無秩序化して、それで大地の上に混沌ができたのだろうか。

 この世界に厳密な意味で混沌ではないといえるものが存在するのだろうか。

 作業員たちは、荷台に混沌を積むと、それをトラックのところに移動させて載せ替える作業を始める。どこへ持っていくのだろう、地上の混沌を。


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