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40、最後の木が枯れた

 昨日、死んだ森で、最後の木が枯れた。

 地上から植物が消えた。

 酸素は、工場で作っている。

 植物性栄養素は、食品工場で作っている。

 人類は変わらず暮らしつづける。

 植物の絶滅が訪れた。


 昨日、死んだ森で、最後の木が枯れた。

 花屋は閉店。

 農家は店じまい。

 鮮やかな彩色の建築物に、青い空。

 格好いいデザインの自動車。

 しかし、景色に緑がない。


 昨日、死んだ森で、最後の木が枯れた。

 植物の歴史は三十四億年だ。

 三十四億年生きた種族が絶滅した。

 人類なんて、たったの十七万年。

 あまりにも寂しい大先輩の絶滅。

 人類が植物より優れているなんてことは、まず考えられない。

 やはり、人類は、工場でなんでも作ればいいと考える病原菌なんですかね。


 昨日、死んだ森で、最後の木が枯れた。

 地球は火星に近づいたのかな。

 砂漠の惑星に近づいたのかな。

 しかし、そうはさせない。

 地球は、工場の惑星だ。

 火星とは大きくちがう。

 大事に、大事に、工場を守る。


 昨日、死んだ森で、最後の木が枯れた。

 最後の木を見に、毎日、散歩に来ていた女の子が、わんわん、泣き出した。

「バッカやろう、バッカやろう、みんな、大嫌いだあ」

 女の子は泣き叫ぶ。

 政治家が、経営者が、労働者が、研究者が、悲しそうに眺めていた。

 植物に勝てる文明、それを実現したはずの男たちだった。

 しかし、植物に勝てる自信がない。


 昨日、死んだ森で、最後の木が枯れた。

 森も、草原も、街路樹も、観葉植物も、なくなった未来。

「罪。植物を絶滅させた罪。人類の大きな罪」

 女の子がいう。

 250万種の絶滅した生物。

 研究所に250万種の植物は保存されている。

 しかし、野生の植物は絶滅した。


 昨日、死んだ森で、最後の木が枯れた。

 植物が知性を持っていたという説。

 どれだけの長老が死んだのか。

 どれだけの賢者が死んだのか。

「植物は地球を守ってた」

 女の子がいう。

 ひょっとしたら、そうかもしれない。

 宇宙人と交渉していたのは植物で、地球を守っていたのは植物なのかもしれない。

 宇宙人との戦争で、地球を守るために戦っていたのは植物だったのかもしれない。

 人類なんか、役に立たなかったのかもしれない。


 昨日、死んだ森で、最後の木が枯れた。

「植物は人類も守ってた」

 女の子はいう。

 政治家と、経営者と、労働者と、研究者の顔に汗が流れる。

 もし本当にそうなら、人類はこれから絶滅するかもしれない。

 誰にできるというのだ。植物の代わりに宇宙人と交渉するなんて。

 不可能だ。人類は、詰んだのだ。

 植物の絶滅で衰えた地球の交渉術が原因で、宇宙から侵略者がやって来るのだ。


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