表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/36

27、外の指輪

注:これは「外の剣」の続編である。


  1、石を吐く竜の群れを退治する話


 外の剣を持つヒロエの旅はつづく。

 地上には、さまざまな脅威がある。空から岩石の雨が降るのも、そのひとつだ。地球には、岩石が時々、降り注ぎ、岩石の雨期が始まり、岩石の洪水が地上を襲う。地上の岩石が空に舞い上がり、岩石の雲となって空をただよい、岩石雨となって降って来る。岩石の洪水は、土砂が盛りあがって押し寄せて来て、家をつぶし、町をつぶし、平野をつぶす。岩石の洪水で地形が変わる。島の形が変わったり、大陸の形が変わったりする。人類は、その洪水を生きのびなければならない。

 岩石の雨を降らす力の原因を止めるために、ヒロエはベトナムのタングステン鉱山に竜退治に出かけた。

 鉱山には、石を吐く竜の群れがいた。ヒロエは石を吐く竜を外の剣で倒していった。

 石が飛んで来て痛い。痛みに耐え、ヒロエは竜を斬りつける。

「ここには八種類の息吹を吐く竜がいる。気を付けろ」

 逃げていく男がそうつぶやいた。

 ヒロエは、石を吐く竜を五十頭退治して、鉱山を登って行った。やがて、赤銅を吐く竜が襲ってきて、それを退治すると、次は、白銀を吐く竜が襲ってきて、それを退治すると、次は、黄金を吐く竜が襲ってきた。ヒロエはそのすべてを退治する。

 逃げていく竜がいる。ヒロエはそれを逃がす。竜に足の速さで勝つのは無理というものだ。竜はさらに翼を羽ばたいて飛ぶ。

 瑠璃を吐く竜がいて、タングステンを吐く竜がいて、エメラルドを吐く竜がいて、ダイヤモンドを吐く竜がいた。ヒロエは思った。この鉱物竜たちを倒さない方がよいのではないかと。鉱物竜からの収穫をうまく考え出せば、その方が得なのではないか。鉱物竜はただの害悪ではない。損得勘定を数えて、収穫の対象と考えるべきだ。

 鉱物竜は、ヒロエに見逃されて、存続した。そのため、石の雨が降り、赤銅の雨が降り、白銀の雨が降り、黄金の雨が降った。瑠璃の雨が降り、タングステンの雨が降り、エメラルドの雨が降り、ダイヤモンドの雨が降った。

 石の洪水が起きて、赤銅の洪水が起きて、白銀の洪水が起きて、黄金の洪水が起こった。瑠璃の洪水が起き、タングステンの洪水が起き、エメラルドの洪水が起き、ダイヤモンドの洪水が起きた。貴金属や宝石の土砂が盛りあがって町をつぶし、大陸の地形を変えた。

 人々は、『ここはヒロエに見逃された世界だ』といった。


  2、外の工房に何が起きたのか


 ヒロエの外の剣と同じように、遠い北東の島国で、空から、外の槍が落ちてきた。外の盾が落ちてきて、外の帽子が落ちてきて、外の服が落ちてきて、外の袋が落ちてきた。

 外の指輪が落ちてきて、外の首飾りが落ちてきた。

 いったい、これらの道具はどこから落ちてくるのか。空より上の天から落ちてくる。この道具がやってくる場所には大気はないであろう。

 これらの道具を作る工房がどこにあって、誰がどうやって呼吸をして、これらの道具を作っているのか。それはヒロエにはわからない。地上の武具とは思えないこれらの道具は、鉱物竜を退治できるほどである。

 鉱物竜を見逃したために資源にあふれた地上は、採掘業が主産業になり、ヒロエは採掘会社の社長になっていた。

 ヒロエは、社内の女と親しくなり、きれいな女に石を吐く竜の群れの話をした。社内の女はヒロエを慕い、ヒロエは社長業を楽しんだ。鉱物竜は地上に大きな影響を与える。鉱物竜を退治するには外の武具がいる。それをもたらす外の工房に異常があった可能性が高い。

「もし、ぼくに何かあった時、交渉の資格があることを示すために、きみはこれを持っておきたまえ」

 とヒロエは、社内から厳選した女に外の指輪を渡した。

「プロポーズですか、社長」

 社内の女がいう。

「好きに受け取りたまえ」

 ヒロエが答える。

「こういうことははっきりしてもらわないと困ります」

「そうか。それもそうだな。なら、これからはっきりさせるよ」

 そして、ヒロエは気持ちを整理して、社内の女と婚約の手順を整えた。

 ヒロエのはっきりさせる作業は難航して、なかなか婚約は決まらなかった。

「社長、早くしてください」

「もうちょっとだ。もうちょっとはっきりさせる必要がある」

 社内の女は、ヒロエの心の整理を手伝った。

 社内の女は、ヒロエの恋愛事情の相談を受けるようになり、それをことごとく整理した。

 二人の仲は深まり、ヒロエは、社内の女を妻に迎える決意を固めた。

「社長、はっきりしましたか」

「とうとうはっきりしてきたぞ。あの時の指輪は、まちがいなく、ぼくのプロポーズだった。ぼくの愛の証として、外の指輪を持っていてくれ」

「社長、次は私の心をはっきりさせなくてはなりません」

「それもそうだな」

 ヒロエは、こうして、社内の女の心を確かめた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ