ヘーデルが王宮へ
靴を持って、ヘーデルを追いかけながら思ったことは、本当にお相手が王子様ならどうすれば良いのか?という事だった。政略結婚は決められた事で覆ることもないし、我が家は、大貴族ではなく落ちぶれた貴族だ。持参金も用意出来る訳じゃい。そんな貴族が政略結婚を止めるなんて、絶対に無理だと言う事だ。でも、魔王の言葉が本当なら…。王子とヘーデルの恋が成就しないと、魔法は、解けないからヘーデルと王子様の心は、ヒートアップして、駆け落ちするくらいになるだろう…。そうなれば国同士の問題になってしまう。私は、今更ながら、魔法を使ったことに後悔していた。
「お母さま。ヘーデル。使者様。もう、片方の靴をお持ちしました。」
「あっ、ありがとうシンデレラ。」
私が靴を持って行った時には、ヘーデルは、とりあえず、王宮に行って王子様と謁見する話までついていた。
「では、明日、ヘーデル様をお迎えに上がります。」
「ええ。使者様。」
「ヘーデルもそれで、良いわね。」
「はい。お母さま。」
ヘーデルは、顔を赤らめながらコクリと頷いていたが私の心も継母の心も、モヤモヤした気持ちで一杯だった。そして、使者を見送ってから改めてヘーデルとの話し合いが始まった。
「ヘーデル。明日、王子様と会うのはいいけれど…。決して、結婚できるわけでもないわ。側妃としての受け入れになってしまう。本当に良いの?」
ヘーデルは、それでも王子様と居られる方が良いと顔を赤らめながら言っている。私の心は、ああ~、なんてことしちゃったんだろうと罪悪感で一杯だ。寵愛を取り合うような環境なんて、純粋なヘーデルが苦労してしまう。でも、輿入れして、一緒にならないと、この魔法は永遠と続く。それに、輿入れしてから、その環境に慣れなければ不幸になるのは、目に見えているのに。どちらにしても、ヘーデルが不幸になってしまう。そんな思いを巡らせながら、ふっと思いついたことがあった。
「ねえ、お母さま。王子様の政略結婚のお相手は、レリアン公国の公女でしたよね?」
「ええ。そうだと聞いてるわ。」
「私の母は、レリアン公国の出身…。そうよね。ダニエル。」
「はい。私もレリアン公国の出身です。亡き奥様について、この国に参りましたから。」
「じゃあ、嫁いでくる公女様の事を知っているの。」
「ええ。亡き奥様は、レリアン公国の侯爵の息女でございます。その方とは、ご親戚になりますよ。ただ、こちらへ嫁いでくるさいに大反対にあって、嫁いでますからご縁をつないでおられません。ですので、持参金もご実家から用意されませんでした。シンデレラ様に残された亡き奥様の持参金は、亡き奥様の母であるウェンディ様が個人的にご用意されたものです。」
その言葉で、頭に浮かんでいた、侯爵家に助けを求めると言う考えもかき消さてしまう私だった。
「ですが…。シンデレラ様の事は、気にしておられるかも知れませんね。ウェンディ様が亡くなられた後、ウェンデイ様の自信の遺産は、何故か、未だ宙に浮いていると風の噂で聞いております。」
「ダニエル。レリアン公国のお母さまの実家と連絡は取れる?」
「はい。シンデレラお嬢様の署名が有れば、何とかなるかも知れません。」
ダニエルの言葉で勇気をもらえた私は、ヘーデルの恋を成就させることを心に誓った。否、させないとダメ~と言い聞かせた。
「お母さま!!ヘーデル、ダニエル!!私、レリアン公国に行ってくるわ。」
その言葉に、3人とも私がレリアン公国に相談に行ったところで、何も変わることは無いと呆れ顔をしていたが、私の自信満々な『政略結婚を止めてヘーデルが王子様と結婚できるようにする!!』いうと高らかな宣言を呆気にとられながら、私の旅を同意してくれるのだった。