ドン底:家の前
家に行く前、エミとレイは駅で待ち合わせをしていた。
「こっちだよね?」
どちらが言ったか分からないが、方向はやはり同じようで、2人は黙って歩き出していた。
道案内の必要はない。
自分の付き合っている彼氏の家に行く。ただ、他と違うのはそれが彼女2人でいくという事だった。
道中2人は実際に何を話すのか、何を話せるのかなど考えていたがそれを口に出すには空気が重い。
とりあえず怒りと事情の説明を求めようという事だけは一致していた。
そして、2人とも今日で終わらせようという覚悟だけがあった。
マンションの前に着き同じ号数を指差す。
やはり行き先は同じだったのだ、ここで2人は覚悟を決めてインターフォンを押す。
何も知らない僕はいつも通りエミが来たと思ったので、鍵だけ開けてすぐにベッドに戻りまた寝ようとしていた。エミはいつもならベッドに入ってくるが今回は入ってこない。
違和感を感じていた頃にレイが話し出す。
「なんで私達2人でいると思う?」
声だけしか聞こえなかったのと、絶対一緒にいてはいけない2人が一緒にいる事にパニックになり一旦寝たふりをした。ただ、前日が飲み会だったという事、今考えると前日のやりとりに違和感があった事などを思い出して全てを悟った。
「もうそうゆうのやめよ」
今度は、エミが話し出した。
どうにも逃げられないと思った僕は目の前で立っている2人の前で正座をした。
ここから生きた心地のしない会話が続く事になる。