転機:嵐の前
僕は社会人になりバイト先からは近いところで一人暮らしをしていた。
理由は、大学の友達もたくさん居たし何よりレイとエミに会いやすいというのが大きかった。
僕は社会人1年目、レイとエミは大学3年生で就活が始まろうとしている。
エミは教育実習や学業の方が忙しくなり、会える時間は少なくなっていた。
レイは就活は少ししていたが、基本的に僕と会うという事に時間を使っていて学校もちゃんと行っておらず留年の危機に陥っていた。
それでも一途にずっと僕に時間を使っていたので、僕の中で少しずつレイの事が大きくなっていた。
ただ、そんな事に気づくのはもう少し先で、相変わらず三角関係を続けていてエミとレイのそれぞれと家で過ごす時間が増えていた。
平日はレイがメイン、休日はエミがメインで過ごしていたが、やはり入れ替わるタイミングが当日になる事などもあり、その日はかなりスリルを味わう事になる。
お互いの違う香水、料理の調味料、布団の匂い、洗濯の感じなどでレイとエミは少し気付いていた。
「自分以外に通っている人がいる」
そんなことをずっと考えて過ごしているが、言うに言えない。
言ったら終わってしまうのではないかという恐怖から触れられる事なく長く過ごしていた。
意外にこのままずっと過ごせるんじゃないかと錯覚したが、それはやはり錯覚だったと気付かされる。