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9.先祖返り

自分のルーツを知った伽奈。でもダブル若様が求婚した理由が分からなくて…

「あの出来事の後に生まれた寅族と鬼族の跡継ぎとなる男達は、聖と雅の血をひく子に執着するようになたの」


雅を攫った寅族の大我と聖を嵌めようとした鬼族の環は、雅と聖に好意を向けていたがその想いが実らず、固執し続けているのだとおばあちゃんは話した。しかし授かった神の子を死に追いやった両者を許す事の出来ない雅の念が、子孫である私達にあるようで、本能的に彼等を拒否をしてしまう。


「彼らは巫女との縁をもつ事を切望しているの。何故なら巫女の血を引く子が故郷を浄化してくれる思っているから」


そう言いおばあちゃんは特大の溜息を吐いた。この溜息の大きさからおばあちゃんが、若い頃あのイケじじに言い寄られて、苦労して来たのが窺い知れ苦笑いをした。するとお父さんが


「それだけ固執するのなら何故ここに来たり、頻繁に接触してこないのだろう?」

「それな!」


クラスの子に聞いた話では寅族の若様も鬼頭の若様も、適齢期なのに婚約者が決まっていないと言っていた。もし雅の血をひく子に固執するのなら速攻でアプローチしてきそうなのに。お父さんと私は首を傾げているとお母さんが


「雅の御守りを着けているから、あの人たちは伽奈を認識できないのよ」


そう言いお母さんが左手首に着けているブレスレットを握った。どうやら私のピアスとお母さんのブレスレットは雅の神力が宿っているらしく、巫女の香りを隠すそうだ。因みにおばあちゃんはペンダントをいつも付けている。もしかしてこれが御守なの?


「そうだよ。それは亡くなった雅の遺骨から作られたもので、雅の神力が宿っているの。だから彼らは伽奈を認識できなかったのよ」


おばあちゃんの説明を聞きたが、いまいち分かっていない私にお母さんが


「雅の血筋の者は巫女特有のフェロモン(香り)がし、嗅覚の鋭い獣人や妖はすぐ分かるみたいよ。だから伽奈がピアスを付けていない時に香りで分かったの」


そう言われると外していた時や、ピアスが緩んでいた時、若様たちの様子がおかしかった。そんな事を考えていたらおばあちゃんが何度目かの溜息を吐いて


「私と伽奈は歴代の巫女の中でも力が強いのよ。だから香りも他のものに比べて強くてね…」


表情を曇らせたおばあちゃんはそう言い、自分が娘の頃の話を始めた。さっき会ったイケじじ達から猛烈なアプローチを受けた話だった。私と同じように御守を身に付けるも、簡単に見つかってしまったと話す。するとのんきにお母さんが


「2人には悪いけど私は力が弱くてよかったわ。お陰でお父さんと出会えて幸せだもん」

「何でお母さんだけ弱いのよ」


代々引き継がれている雅の力ならお母さんも同じく、獣人と妖の次期当主に狙われるんじゃないの?

頭に疑問符を付けていたら、おばあちゃんが巫女の力の強さは隔世遺伝すると言い、そして獣人と妖の次期当主の力も隔世遺伝する為、お母さんの様に狙われる事無く平凡に過ごす巫女もいたそうだ。


自分の業に遠い目をしていたら、神妙な面持ちをしたおばあちゃんが、座り直し私を真っ直ぐ見据えて…


「伽奈は私以上に力があるから、年1度行われる【邪封じの儀】を引継いでもらう事になるわ」

「【邪封じの儀】って?」


またまた初めて聞く言葉だ。【邪封じの儀】は獣人界と妖界の堺にある結界を張り直す儀式で、毎年11月11日に行われる。雅の呪い?で穢れた獣人界と妖界は邪念が溢れ、人界にその影響が及ばないように結界が張ってあるそうだ。

そう言えば毎年その時期におばあちゃんは、仲のいい女学生の頃の友達と旅行に行く。その旅行は嘘で実は獣人界と妖界に赴き、結界を張り直す儀式をしていたのだ。


「そんなの無理だ!」

「今はね…ちゃんと教えるし拒否権は無いから」

「はぁ?」


どうやら決定事項で私に拒否権は無い。だって国家行事で国からの依頼を受け、報酬も相当もらっているそうだ。っという事は…


「ウチは貧乏じゃないの?」

「人同士の家が裕福だと目立つからね。表向きは貧乏にしているんだよ」

「「…」」


お父さんも知らなかった様で絶句している。お店のお金の管理はお母さんがしていて、お父さんは家にお金の余裕があるなんて知らなかったようだ。するとお父さんが手を叩き


「じゃぁ毎月大量注文が入る役所の会議のお弁当は…」

「それも報酬の内だよ」


うちのお店は市役所と税務署そして警察本部が近く、毎月行われる会議用のお弁当の注文が入る。数が多い上に単価の高い弁当が注文される為、儲けの1/3をこの仕出し弁当で稼いでいるとお父さんから聞いたことがある。固まるお父さんに微笑んだお母さんが


「お父さんが目にする伝票の2倍入金されているのよ」

「…」


何も知らずに必死に働いていたお父さんは真っ白になり固まる。そこは教えてあげないと可哀想だ。するとお母さんは徐に箪笥から通帳を出しお父さんに渡した。通帳を受け取り中を見たお父さんは更に固まる。

横から覗き込むと…残額は9桁近い額だ! 見た私も固まると悪びれる事無くお母さんが


「お父さんは毎月のお小遣いを趣味に全てつぎ込むじゃない。こんな大金渡したらあっという間になくなるわ。リタイアしたら自営の私達の年金はちょっとしかないのよ。老後に楽するために貯金してあったの。これでリタイアしたらお父さんは趣味三昧できるわよ」


そうお父さんの趣味はサバゲ―(サバイバルゲーム)でモデルガンやら会場に行くためにワゴン車やらにお金をかけている。そうお金のかかる趣味なのだ。煙草も吸わずお酒も飲まないお父さんはサバゲー一筋で他にお金をかけない。だからお母さんもお父さんの趣味に何も言わない… いやハッスルして怪我をしてくる事があり、心配が絶えないとこぼしてはいるけど、お金遣いには口を出さない。


常々稼ぎが少ないと気にしていたお父さんは安堵の表情。言えない事とだったとはいえ、少しお父さんが可哀想になった。


『貧乏じゃないならあんなに必死に貯金せずに、もっと遊べばよかった…』


青春の半分を棒に振ったと感じ、テンションがダダ下がりする。するとお母さんがもう1冊通帳を渡してくれた。その通帳の名義は私で…中を見ると… 


『 こっちも9桁近い !』


何と私の名義の口座も大金が入っている。びっくりして顔を上げるとおばあちゃんが


「これは将来の為だから無駄遣いはダメよ」

「うん!でもスマホを最新モデルにしていい⁈」


一番初めの欲しいと思ったのがスマホだった。クラスの皆は最新か一つ前にモデルでハイスペック。私は3世代前の小っちゃい画面のスマホ。直ぐ充電切れるしカメラの機能は草なのよ。ボロボロのスマホを翳し


「嬉しい!」


と叫ぶとおばあちゃんが背中を撫でてくれた。お父さんと私は通帳を握りしめホクホク顔。おばあちゃんとお母さんは茶器を片付け夕飯の準備を始め、やっと日常が帰ってきた。


「今日は鍋にしましょうかね」

「私トマト鍋がいい」


こうして楽しい夕食を食べ早めにベッドに入る。いい気分で寝ようとしたら…


「あ・・・」


スマホがブルブル震えている。そして画面にはオーナー(鬼頭)の名前が… 一気に現実に戻されスマホ片手に固まる私。


「放置したら切ってくれるかなぁ…」


そう呟きMAXで震えるスマホを見つめていた。

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