22.脱送迎?
週末の遊園地のバイトも無難に終えた週明け。朝登校すると…
「もうお迎え要らなくない?」
「えー必要だよ。それに伽奈と仲良くなりたいし」
週末のバイトを無難にこなし週明け登校準備がお終わる頃に神田さんが迎えに来た。朝の若様の待ち伏せが無くなり付き添う必要は無いと断るが、何故か神田さんに懐かれ登校を共にする事になった。
学校までの道すがら先日の遊園地のバイトの様子を聞かれ話していると
「前みたいに鬼頭の若は迫って来ないのね。それなら護衛はもっとゆるくていいのかも」
神田さんはそう言い親と相談してみると言いまた別の話をし始める。神田さんは隼人に比べ稀衣家の守り手としての意識は薄く、良くも悪くも今どきの10代だ。いや隼人が過敏すぎるのかもしれない。そう思っていたら校門が見えて来て、門の前に隼人が居るのが見え無意識に溜息を吐いてしまう。すると隣を歩く神田さんが笑いながら
「そう嫌がらないで。隼人は不器用なのよ。やっとお嬢と接触出来る様になったから張り切っているだけ。本心は心から伽奈を護りたいんだよ」
「そんな事を言われてもあの態度だよ。理解できる訳ないじゃん」
そう言いむくれる。すると目の前に来た隼人が連絡事項だけ話し、先に教室に行ってしまった。頭の中で『はぁ?』と思っていると何故か笑っている神田さんが、私の手を引き教室に向かう。
教室につくと何故か接点のない同じクラスの涼葉に声をかけられ怯む。涼葉とは挨拶や他の子を交えて話はするが一対一で話した事はない。警戒していると
「私ねやっと婚約が決まったの」
『何いきなり。それに仲良くも無いのに幸せ報告?』「へー良かったね」
無難にそう言うとクラスの皆から祝福を受け嬉しそうな顔をしている涼葉。これは”おめでとう催促”だと気づき心底興味が無いと思いつつ、お祝いを言ってスルーしようとしたら
「お相手が虎の獣人で伽奈と仲良くしておくように言ったの。何?伽奈も獣人と縁組が進んでいるの?」
「!」
驚き口を開けて固まると、すかさず神田さんが間に入り話題を変えてくれた。話題が変わりホッとしていると凄い速さで隼人がスマホに文字を打っているのが目に付く。恐らくおばあちゃんに連絡を入れているのだろう。またガードがきつくなる気がして気が重くなっていると、予鈴が鳴り1日が始まった。
「伽奈はモテ期到来なんじゃない?」
「えー嬉しくない」
美羽がそう言い笑っている。実はお弁当を持って中庭に移動中だ。いつも通り美羽と神田さんとお昼を食べようと机を移動させようとしたら、涼葉がお弁当を持ってこっちにやって来る。すると神田さんが私と美羽の手を取って教室を出て今に至る。
涼葉の見え見えの接触に苦笑いしていると、事情を知らない美羽が戸惑っているのが分かる。元々涼葉は陽キャグループの中心で、私や美羽の様な妖や獣人とのマッチングの無い子を下に見ていて小馬鹿にする事がよくあった。その割にマッチング上位との相性率がいいのに、性格が悪いから中々婚約者が出来ずここ最近は陽キャのグループの子も扱いに困っていると聞いた事がある。
美羽も散々嫌みを言われてきているから涼葉に対していい感情は持っていいないし私も同じだ。そんな子が一緒に食事とか勘弁してほしい。
「あれ何だったのかなぁ?」
「婚約決まって私らにあてつけなんじゃない?」
美羽はそう言い不機嫌な顔でお茶を飲み、明日に「来たらどうする?」と言い悩んでいる。いつも明かるい神田さんは箸を片手にずっと誰かと連絡をしている。また自分のせいで皆に迷惑をかけたと気落ちしていると
「あら珍しいわね」
そう声をかけられ振り向くと熊川先生が立っていた。すると美羽は熊川先生に涼葉の話をし、明日からのお昼を悩んでいると話した。話を聞いた先生が保健室に来なさいと言い、その提案に美羽は喜び私と神田さんに保健室で食べようと誘ってきた。
『私はいいけど神田さんがダメって言いそう。熊川先生グレーだし』
そう思い返答に困っていたら神田さんが
「私はいいよ、伽奈も気を遣うの嫌でしょう?なら先生の所の方が安全だよ」
「えっ?あっそうなの?みんながいいなら…」
また隼人が不機嫌になると思うと気が重いが、明日から保健室で食べることになり問題は解決した。後に神田さんが教えてくれたが、涼葉は言葉がきつく美羽を始め陰キャへの当たりが強く、熊川先生がかなり強く窘めた事があり、涼葉は熊川先生を苦手としているそうだ。とりあえずお昼休みの平穏は守られほっとする。
『帰りは例の通路から帰れ』
「?」
授業が終わり帰りの準備をしていたら隼人からメッセージが入る。朝は付きまといが無くなったので、普通に下校していいと言われていた。久しぶりの一人行動に喜んでいた矢先の隠密行動に特大の溜息を吐く。すると神田さんが来て
「家からの指示で涼葉に探りを入れるから、今日は一緒に帰れないわ。隼人から聞いていると思うけど、例の通路から帰り綾子様が迎えに来てくれるそうだから安心して」
「また隠密だよ…」
そう溢すとハグする神田さん。すると美羽も抱き付いてきて、傍から見たら仲良しだんご虫になった。
こうして2人のハグに癒され帰宅する事になり、例の通路がある焼却炉に来ると何故か熊川先生が居て…
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