15.お見い写真
俊介からのメッセージに頭を抱える伽奈。そして追い打ちをかける様に…
結局俊介のメッセージに返事をする事は出来なかった。変に送って更に誤解を生んでしまったらマジにヤバいし。それに近い将来巫女の修行をし結界を守る役目があるらしい… 嫌だけど。そんな話し俊介に出来る訳もないし、俊介とは友達以上なんて考えられない。
『俊介も現状から逃げたくて、偶々思い出した私の軽口に乗っかろうとしているだけ。本当に私が好きな訳ない』
それについ先日まで一生独身を貫くつもりでいたのに、急な方向転換に不器用な私は気持ちがついていかない。また気が重くなってきたら部屋におばあちゃんが来た。どうやら晩御飯が出来たようだ。
ダイニングに行くと2人分の食事が用意されている。お父さんとお母さんはこの時間お店の片付をしていて、夕食は基本おばあちゃんと2人が多い。今日も顔を合わせて食べていたら
「前にも話したけど伽奈には巫女の仕事を継いでもらうから、婿さんをとってもらう事になるよ」
「はぁ?婿って結婚しないといけないの⁈」
また婿の話が出て気が重くなる。昨日まで独身を貫くつもりだったのに、婿養子を迎える事になっている。呆然としていたらおばあちゃんはお見合い写真?を数冊出し目の前に置いた。
「今は一般人だけど昔は神主の家系の男性たちよ。彼等は伽奈ほど神力は強くないけど、子供たちの事を考えたらこの中から選ぶのが好ましい。でもねおばあちゃんは無理時はしないから」
そう言い写真を開いてテーブルに並べる。写真の男性を見ると私と歳の近い男性たちばかり。一番若そうな子は見るからに小学生だ。それ犯罪じゃん!そう思いながらお見合い写真を眺めていたら…
「えっ!隼人も対象なの?」
「そうよ。あとこの2人は有力候補だよ」
そう言いおばあちゃんは2人の写真を私の前に置いた。一人は年上で大学生ぽく眼鏡をかけた真面目な感じの人。もう一人はアイドル系で顔面偏差値の高い同じ年位の男子だった。おばあちゃんの話では隼人も含めた3人の家とは昔から縁が深く、代々家を守ってきた家の息子らしい。昔から巫女の力を維持するためにこの三家とは縁組を勧めてきた様だ。ちなみにお父さんは全く関係ない一般人。お母さんとお父さんは高校の同級生で高校卒業後に付き合う様になり恋愛結婚している。
突然の話で押し黙るとおばあちゃんが
「何も知らなかったから結婚はしないつもりだっんだろ?」
「えっ?なんで…」
どうやらおばあちゃんは私が昔からコツコツ貯金しているのを見ていて、結婚する意志が無いのに気付いた様だ。戸惑う私を見て
「お母さんの様に好きな人と一緒になっても…」
「えっいいの?」
口籠るおばあちゃんを見ていたら、根拠はないと言いながら
「昔から稀衣家の娘が神社の家系以外の男性と恋愛で結ばれ、生まれた子は神力が強い子が生れる傾向があるの。おばあちゃんは母親が決めた人…つまりおじいちゃんと一緒になったが、お母さんは力が弱くてね…」
どうやらおじいちゃんは聖に近い一族の末裔で、西日本でも大きな神社の息子だった。結婚するまで実家の神社で神主をしていたらしく、生まれてくる子は期待されていたようだ。
しかし生まれたお母さんは力が弱かった。溜息を吐いたおばあちゃんが
「親の血筋より両親の相性と本当に好き合っている事の方が大切なのかもしれないね」
ここで登場したおじいちゃん。正直言って母方のおじいちゃんの記憶は余りない。おじいちゃんはお母さんが中学校までは家で一緒に暮らしていたそうだ。何故別居になったかと言うと、おじいちゃんの実家の神社を継いでいた弟が急病で亡くなってしまい、継ぐ人がおらず仕方なくおじいちゃんは神社を継ぐために戻ったそうだ。
おばあちゃんとお母さんはここで雅の遺骨を守る役割があり一緒に行けなかった。おじいちゃんの神社は移動に飛行機と車で丸1日かかるので頻繁に会いに行けず、年に1回遊びに行っていたのを覚えている。そしておじいちゃんは私が小学校2年生の時に病気で亡くなった。私は幼かったし頻繁に会っていないのでおじいちゃんの記憶はあまりない。
そう考えるとお母さんに比べ、おばあちゃんは望む結婚をしていないのかもしれない。おばあちゃんからもおじいちゃんとの話を聞いた事ないし。
『おばあちゃんは好きな人とかいなかったのかなぁ…』
そんなことが頭を過った時、先日会ったあのイケじじ達を思い出した。もしかして…
「おばあちゃんはおじいちゃんとお見合いだけど、好きな人はいなかったの?」
するとおばあちゃんは少し寂しそうな顔して
「この年になると昔の事は思い出せないわ」
と言い、お見合い写真の人達の事を話し出した。まるでこれ以上聞くなと言っているみたいで、罰が悪く大人しくお見合い相手の話を聞いていた。
結局私の反応を見る為に写真を見せた感じで、積極的に勧める気は未だないようだ。明らかに途中から話を聞いていない私に気付いたおばあちゃんは
「まぁ伽奈はまだ17歳だからゆっくり決めるといいよ」
「そうする」
話しが終わった頃にお父さんとお母さんがお店を閉めて戻ってきた。中年になっても両親は仲が良く、二人並んで遅めの食事をし四六時中一緒なのに会話が途切れない。
『お母さんはいいよなぁ…好きに生きれて』
巫女の力が弱く好きな人と結婚し望む人生を歩めている。でも私は…好きでこの家に生まれた訳じゃない。17歳でもう人生を悲観したくなってきた。
"ぴろ~ん"
スマホにメッセージ入る。見ると【鬼オーナ】からだった。すっかり忘れていたバイトの事。おばあちゃんが部屋ん戻った今がチャンス。
「お母さん。話しがあるの」
まだ食事中だがお母さんはが話を聞いてくれる事になり、二人の向かいの席に座り
「遊園地の着ぐるみのバイト、契約満了まで働く事になりました」
「でもあそこは…」
お母さんは心配するが、バイト中は接触しない約束を取り付けた事と、暫くの間で長くは続けないと説得する。暫く考えたお母さんは
「おばあちゃんが聞いたら反対するわ。でもお母さんは稀衣の家も大切だけど、伽奈がしたい様にすればいいと思う。結婚相手だってそうよ。見合いなんてせずお母さんみたいに好きな人とすればいいの。いつまでも家に囚われる事ないわ」
そう言うと遠慮がちにお父さんが
「お父さんは婿養子だし何の力も無いけど、どんな時も伽奈の味方さ。人生一度しかないんだ。好きに生きなさい。案外何とかなるもんさ」
2人に励まされ少し心が軽くなる。そしてお母さんから遊園地のバイトはバレるまで、おばあちゃんには言わな方がいいと言われ内緒にすることにした。どっちみち長く務める気はなしね。
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