12.歴代
虎谷の若様に包囲され、隼人が逃してくれたけど…
埃っぽく薄暗い通路を歩くと、向かう先に明かりが見えて来た。そして人影が… 隼人が出口に人が居ると言っていたが味方なの? 警戒しながら進むと女性が立っているのが見えて来て少し安心する。その女性は40代位のおば様だった。
「あの…」
「お待ちしておりました。こちらへ」
女性はそう言い扉を開け階段を上がっていく。そしてまた扉を開けると、そこは倉庫の中っぽくて…
「隼人…君から詳しい事を聞いてなくて、状況がよく分かって無いんです。説明してもらえませんか」
そう言うと女性は詳しくはおばあちゃんから聞く様に言い説明はしてくれない。それよりここ何処なの? 戸惑っていると女性は倉庫の扉を開けると手招きした。付いて行くと一軒家があり、その家の門扉を出ると大通りに出た。振り返り表札を見ると新田さん…あれ?確か隼人も新田だよ…
「もしかして隼人くんの…」
「はい。隼人の母です」
「!」
驚くことに女性は隼人のお母さんだった。固まっていると隼人のお母さんは微笑んで、バイトに遅れるといい背中を押した。そう言われてスマホを見るとバイトの時間まで後10分。
「やばい!すみません。また後日お礼に…」
「いいから早く行きなさい」
お辞儀をしてバ先まで走る。
何とか間に合いバイトに勤しむ。月曜でオーダーは少なくのんびり働き21時に終了すると、おばあちゃんが車で迎えに来てくれた。温厚なおばあちゃんだけど、運転は男前で結構運転は荒く偶に怖い。
「迎えにきてくれてありがとう」
「また虎谷の若に待ち伏せされたんだろう?」
何も言ってないのに、何故かおばあちゃんは今日起きた事を知っている。また意味不明で固まると、おばあちゃんは真っ直ぐ前を見据え運転しながら
「伽奈のクラスメイトの隼人君は昔からうちに仕える一族の末裔で、伽奈が結婚するまで影でサポートする役目を担っているんだよ」
「そんなの初耳だよ」
「そうだね。影は表立たないもんだからね」
そう言い笑うおばあちゃん。この後隼人の家との関わり教えてくれた。隼人のご先祖は聖の弟の血筋で、代々雅の血を引く娘を獣人と妖から隠し護ってきた。そして私が初潮が始まり妊娠可能になった時から、隼人はそばに居たそうだ。
『そう言えば私は初潮が遅く中学卒業のタイミングで始まり、隼人と初めて会ったのが高校からだったわ』
おばあちゃんの話を聞き終わる頃に家に着いた。そして夕食を食べながら、おばあちゃんとお母さんと話をする。どうやらさっき会った隼人のお母さんはうちのお母さんの親友で、今でも仲良くて一緒に出かける仲らしい。
「これから虎谷の若の接触は増えるわね。手を打たないとね」
おばあちゃんはそう言い考え込んだ。そもそも獣人と妖が求婚してくる理由は分かったけど、何故避け続け逃げないといけないの? 私が虎谷の若様やオーナーの事好きになったらダメなの?
素直にその疑問をおばあちゃんに向けたら、特大の溜息をついたおばあちゃんは、お母さんに席を外す様に言い、少し躊躇ったお母さんは食器を片付けリビングを出て行った。
おばあちゃん表情は固く緊張する。もしかして私地雷踏んじゃったの?
「私も娘の頃に同じ事を考え、祖母…伽奈からしたら曽祖母に聞いたのよ。そうしたら…」
曽祖母は獣人も妖も故郷を取戻す為に、雅の血筋の娘を欲しそこに愛は無いと言う。それにうちの血筋に獣人や妖の血が混ざると、邪封じの儀が行えなくなり人界も汚染される為、絶対交わってはならないと言われたそうだ。
だからどんなに巫女が獣人と妖に好意を持っても、愛を受けてはならないと曽祖母から言われ、接触を禁止された。
そう言いおばあちゃんは悲しそうな顔をした。
『もしかしておばあちゃんはあのイケジジ達の事…』
そう思ったけど何故か聞いてはいけない気がし口を噤んだ。少しの沈黙の後、おばあちゃんはいつもの穏やかな表情をし、早くお風呂に入り休む様に言い、自分の部屋に戻って行った。
就寝準備が終わりベッドに寝転がり、おばあちゃんと話した事を思い出していた…
「獣人と妖は巫女と交わり儲けた子が、故郷を浄化してくれると思い、人は巫女が獣人や妖と交わると、巫女の力を無くし結界を張れ無くなると思っているんだ」
でもそれではいつまで経っても3者とも救われないんじゃ無いの? それってみんな不幸のままなんじゃないの⁈
私は獣人や妖に嫌悪や偏見はない。獣人や妖でもいい人もいるし、人でも悪い人もいる。
皆んな平穏に幸せに暮らす権利はある。3者とも幸せになる方法は無いのだろうか…
そんな事を考えてながら眠りについた。
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