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11.抜け穴

週明け登校したら虎谷の若様に待ち伏せされピンチ!

週明けの朝一学校の校門が見える四つ角で固まる私。車の横に立つ黒服達から車の持ち主が虎谷の若様なのが分かる。あんな屈強な男たち相手に正面突破は無理だと判断し、いつもの抜け穴に移動する事にした。良かった…いつもより早く家を出たので時間に余裕がある。でも


「はぁ?なんでここも居るの⁈」


数ヶ所ある歴代のバイト族の先輩が作った秘密の抜け穴の前に黒服が立っている。直ぐに別の場所に行くも同じだ。きっとお金に目が無いバイト族が若様に買収されたようだ。万事休す!もう帰っちゃう?


「伽奈?」

「?」


呼ばれて振り返ると同じクラスの隼人が立っていた。パリピの隼人はノリはいいが、いい加減だから正直苦手。彼とは接点をあまり持ってこなかったから腰が引ける。ほぼ毎日時間ギリギリに登校する隼人がこんな早い時間にいる事に驚いていると、抜け穴の前に居る黒服を見て


「誰だ買収されたのは。まぁそんな事だろうと思ったよ…」


隼人はそう言いスマホを取り出し何処かに連絡をし溜息を吐いた。そして何故か姿勢を正し深々と頭を下げて


「卒業まで正体を隠す予定でしたが、お嬢が見つかってしまったので仕方ない」

「何怖いよ隼人。急にキャラ変しないで」


するといつものやんちゃそうな顔をした隼人は


「後で正体明かすとして…取りあえず登校しないとまずいからっと」


そう言い隼人は私の手を取り歩き出し…


「ここ私知らなかったよ」

「そうだろうな。だって昨晩俺が作ったから」

「はぁ?」


連れて来られたのは正門と真反対のクラブ棟と講堂の間の茂み。そこは道路に沿ってフェンスがしてあるが、草が生い茂りフェンスを覆い所々フェンスが見えない。


「えっと…ここを…」


隼人が茂みに手を突っ込み草を分けると、人が一人通れる穴が空いていた。そして先に隼人がくぐり


「早く来いよ」

「あっはい」


こうして隼人が作った新しい抜け穴から校内に入り無事に教室に行く事が出来た。隼人は教室に入るといつも通り、パリピな男子達と雑談し通常運行。私も席に着き机に沈み込む。するとミーハーな女子が教室に入って来るなり校門が見える窓に集まり、虎谷の黒塗の車を見ながら若様の噂話をしている。

聞きたくもない私は鞄からイヤホンを取り出し外野の音を遮断した。


こうして始業時間になり授業が始まる。結局若様は2時限の途中まで校門の前にいたようだが、帰って行ったと窓際に座る女子が話していた。やっと緊張が解けて日常が戻って来る…筈だったが…


『多分帰りも()は待ち伏せるはず。しかし今日はバイトだろ? また抜け出すの手伝う。放課後に焼却炉まで来てよ』

「・・・」


お昼休みにスマホをチェックすると、教えても無いのに隼人からDMが届く。それに何で今日バイトだって知ってるの? いつもは火曜のシフトなのに… 隼人は何者なのだろう?恐らく獣人や妖では無く人なのは間違いない。でも何なの?


疑問だらけで考え込んでいると、教室の入口が騒がしい事に気付く。視線を向けると教室入口に他のクラスの女子が立っていて、スマホを私に向けている。そしてシャッター音がした。


『もしかして撮られた?』


箸が止まり固まっていると


「無断撮影は良くない。本人の許可得たのか?」


隼人がその女子の手を掴み注意している。そして隼人は写真を消去するように迫り、隼人の圧に負けたその女子は写真を削除したようだ。確認した隼人が視線を向けて来た。


この後知った事だが虎谷の若様の側近の婚約者がこの高校に居るらしく、登校しているか確認をさせたようだ。その女子は婚約者に頼まれて学校来ている事を報告するために写真を撮ったみたい。


やっぱり今までの日常は戻ってこないのだと、改めて実感しどんどんテンションが下がっていると、一緒に食べていた美羽が新発売のチョコ菓子を出し勧めてくれた。


「伽奈何があったのか知らないけど、テンション低すぎだよ。甘いモノ食べて元気だしない」

「ありがとう。美味しそうだね」


こうして友達に気遣いで少し気分も持ち直し午後からの授業を受ける。あの女子がまた休憩時間に偵察に来たが、何故か隼人が睨みを利かせ撃退してくれた。


『マジ隼人何者なの?』


そんなこんなで放課後になり、隼人が指定した焼却炉に向かうか悩む。隼人が何者か分からないけど敵ではなさそう。それに学校を無事脱出するには助けが必要。だから隼人を信じてみる事にした。


「来たか。早くここを出るぞ」

「分かった。えっと…よろしく?」


そう言うと笑いながら隼人は焼却炉横の倉庫を開けた。そして中に入り床の砂埃を足で払うと鉄板が出てきた。そこを開けると地下へつながる階段が出てきた。推理小説の様な展開に思わず大きな声で


「隼人マジあんた何者なの!」


語彙を強めてそう言うと、隼人は胸に手を当てて頭を下げ、真面目な顔をして


「俺は伽奈様を護る影。貴女は知らなかっただろうが、幼い事から貴女の傍に居たよ」

「はぁ?」


また予想外の事に固まっていると、いつものチャラ男に戻った隼人は、私の手に懐中電灯を置き地下に向かう様に促した。


「出口には他の者が待機しているから安心して。そこからバイト先は近いから大丈夫だ」

「意味わからん!」


取りあえずバイトの時間が迫り、薄暗い地下へ続く階段を下り学校を後にした。

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