表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/23

1.マッチング

“慎ましく・地味に・ひっそり”に過ごしたい枯れJKの伽奈。高二の春に劇的変化が起こり生活が一変し…

「残念ながら合致マッチングはありません」

「…」

「きっ気落ちしないで下さい!人とは結婚できますから」

「「あっははは!」」

稀衣うすいさん?」


母と笑い出すと担任と保健所役人は唖然としている。大丈夫!想定内だから。

今何をしているかと言うと全国民が15歳で受ける”DNAマッチング”の結果報告だ。

マッチングは中学2年になるとDNA検査を受け1年後の新学期が始まるとこの時期に4者(本人、保護者、学校、役所)面談が行われ、ここでマッチングリストが渡され進路指導となる。


”DNAマッチング”は獣人と妖の為に作られた制度で人間界の日差しに弱い獣人と妖が克服する為に人間と交わる必要があり、相性マッチングが50%以上の獣人・妖の情報が上位5人リストアップされ渡され縁組を勧めるものだ。

しかしこのマッチングはあくまでDNA上相性のいいもので、実際は好みや性格も加味し番う相手を決める。この世界は圧倒的に人間の方が大きく、獣人・妖と結婚しなかった人間は人同士で縁を持つ。

獣人・妖と縁がなくても人同士結婚できるのに、何故担任や役人が”気落ちしないで”と言うかと言うと…


所謂人同士の結婚は”落ちこぼれ”と言われる。何故かと言うと…

この世界は人・獣人・妖が存在している。遥か昔はそれぞれ別世界に生活していた。諸説有り原因は未だ解明されていないが、天変地異により獣人界と妖界が汚染され住めなくなり、住処を無くした獣人と妖は人間界に共存する事になった。

獣人は身体能力が高く、妖は妖術や情報収集に才があり、人間界に移り住むとあっという間に財と権力を持ち社会的強者となった。

その獣人と妖と縁を持つという事は、昔で言う”玉の輿”なのだ。


ではなぜ人は獣人や妖と縁を持つ様になったのかだ。それは人間界の環境に獣人・妖が適さず“黒点病ダークスキン”を発症してしまうからだ。人間界の日差しは獣人と妖には強く、“黒点病ダークスキン”を発症し皮膚組織が破壊され、重症化すると呼吸困難で亡くなることも…


獣人と妖が人間界に移住してきた時、多くの獣人や妖はこの“黒点病ダークスキン”を患い亡くなった。しかし全く同じ環境なのに罹らなかった者がいた。

その者を調べると人との混血だった事が分かる。そう人は人間界の日差しに免疫がある。混血の者は人の親からの免疫や遺伝子がある事が分かった。獣人と妖は一族存続のために人と交わる事になった。


この世界の成人・結婚年齢は男女ともに18歳で高校在学中であっても結婚できる。しかし高校までが義務教育であることから、高校在学中は婚約し卒業と共に結婚する者が多い。故に高校在学中にDNAマッチング上位の者の中で相手を選ぶ事になる。獣人や妖は出来るだけDNAの相性のいい人間を欲し、人間はステイタスの高い相手を望む。自ずと獣人や妖と縁が無かった人間は人同士で結婚する事になる。先ほども説明したが獣人や妖の方が生涯収入は多く殆どの人間は獣人・妖との結婚を望むのだ。

そんな中において何代も前から人としか縁を持たない“落ちこぼれ”と言われる人たちがいる。それがウチの家系だ。


祖母も母も笑いながら


「伽奈ちゃん大丈夫よ!おばあちゃんも母さんもマッチングリスト該当者ゼロだったけど、優しい人間の伴侶と知り合い結婚しているから伽奈ちゃんも素敵な人と出会えるわ」

「はぁ…」


慰めにもならない。うちは代々下町の洋食屋を営み食べていくのがやっとだ。つまり貧乏なわけ。成り上がりなんて到底無理な話しで私は幼い頃から結婚に希望なんて持っていない。こんなに長く獣人や妖との縁が無い家系なのだから希望なんて持たない方がいい。小学生の時に覚悟を決めた私は生涯独身を決め地道に貯金をしている。老後は貯めたお金で誰にも(勿論国にも)世話になることも無く、介護施設に入所してひっそりと生涯を終え“落ちこぼれ”を終わらせるのだ。生涯男性を知らないのは流石に寂しいので遊びでもいいから彼氏をつくり経験はしたいかなぁ…。なんて夢の無い枯れ果てた考えの10代なのである。


面談を終えて教室に戻るとマッチングリストの話で教室が騒がしい。クラスでも一番の美人の女子がライオン獣人がマッチング1位で相性は75%もあり自慢している。興奮状態のクラスメイトを横目に静かに自席に戻ると仲のいい智花が来てマッチングリストを見せてくれた。智花は1~4位が妖で5位が獣人だった。見せてくれたから私も見せない訳にいかず見せると…


「マジか…」

「うん…」


気まずい空気になり智花が


「伽奈が言っていた通りになるなんて…正直私がショックだよ」

「いいの。覚悟はしていたしシングルライフを楽しむわ」


そう言いながらクラスメイトの様子を見ていたら、喜ぶ子は獣人・妖がリストに上がり、私と同じく獣人・妖との縁が無かった子は静かだ。反応を見ているとよく分かる。恐らく明日からクラスカーストが変わり交友関係も変わるんだろうな…。そんな事を考えていたら智花が私の手を握り


「私はずっと伽奈の友達だから!」

「うん?ありがとう」


こうして人生を左右するマッチングリスト公開は終わった。



これが中学3年の時の話。今の私は高校2年生の17歳。人間の公立高校に通い放課後はバイトに勤しむWJK(働く女子高生)だ。

高校に入ると結婚に向けお見合いが始まりちらほら婚約した同級生も増えて来た。高位な獣人や妖と婚約した人は獣人や妖の高校に編入する人もいる。獣人や妖は愛情深く伴侶を決めると決して浮気はしない。それに婚約状態ではいつ横恋慕されるか分からないから、手元に置くために費用を負担し婚約者ひとを同じ学校に編入させる事なんてよくある事だ。一緒に人の高校に進学した智花がそうだ。高1の時にお見合いし妖のかまいたち族の分家の男性と婚約した。相手の希望で高2の進級と同時に妖の高校へ編入していった。

智花は高校編入を嫌がったが相手と両親の希望が強く泣く泣く転校した。智香とは学校が変わっても今まで通り仲良くて遊びに行くしメールを交わしている。

ある日マッチングゼロの枯れた高校生活を送っている私にクラスメイトの結奈が来て


「伽奈さ~バイトしまくってるじゃん。高収入のバイトあるんだけどやってみない?」

「怪しいのは勘弁!」

「大丈夫怪しくないし、職場は一流財閥だから福利厚生バッチリだよ!」

「どこからの情報?」

「私の婚約者ダーリンだよ。親族の会社で探してる人物が伽奈にぴったんこなのよ」

「どうしようかなぁ…」

「土日祝で来て欲しいって。何と時給が2000円だよ」

「マジか⁈」


そう高校生の平均時給は1000円なのに倍?怪しさ満載で躊躇するが…

『お金は欲しい…』

こうして智花に付き添いをしてもらう事を条件に面接に行き労働条件を聞く事にした。帰りのランチをおごる条件で智花はOKしてくれる。

こうして週末学校休みの土曜にとある駅前で結奈と結奈の婚約者と待ち合わせた。


「伽奈!あっ!智花久ぶり~元気そうね」


そう智花と結奈は高1の時同じクラスだったのだ。二人は久しぶりに会い楽しいそうに話をしている。それより結奈の婚約者ダーリンが凄い男前イケメンだ。話しかけられ男慣れして無い私は挙動ってしまう。

駅前で30分ほど話して面接場所に移動する…ん?


「遊園地?」

「そうだよ!さぁ従業員入口からレッツゴー!」


そう言い結奈は私の手を引っ張る。心なしか握る手の力加減がおかしい気がするけど…

通されたのは事務所の会議室の様だ。着席し30分ほど放置され4人で他愛ない会話をしていたら責任者が来た。

来たのは中年の男性だ。恐らく妖で…鬼族かなぁ?鬼の特徴の赤っぽい瞳をしている。そう結奈の婚約者ダーリンも鬼族で彼も朱色の瞳をしている。

そうここは鬼族が経営する遊園地なのだ。ここでバイト?普通に求人サイトで募集すればいいんじゃなぃ?

ぼんやり見て居たら皆が立ちあがったので慌てて立ち上がると…


「貴女か!よし!採用!」

「「へ?」」


意味が分からず固まる私と智花。私たちを後目に結奈と婚約者ダーリン「じゃ!頑張って」と言葉を残し帰って行った。

責任者の男性に促され智花と座ると名刺をいただいた。


「ではまずはこちらの条件と希望を伝え貴女の希望とすり合わせていきましょう」

「あ…はい」


この後仕事内容と条件を聞き私が紹介された訳と即採用なのを納得する。

バイトはこの遊園地に新しく出来るゆるキャラの着ぐるみの中の人だ。この着ぐるみは背が低く155㎝以下の人しか入れない。この世界は女性の平均身長は165㎝あり150㎝代は小学生以下の子供しかいない。何故こんな小さなキャラを作ったの?作る時に中の人の事とか考えなかったのだろうか⁈


「満場一致で決まり作成しましたが中に入る者の事まで考えておらず、いざ出来上がると中に入ってくれる人が居ない事に気付き捜していたんです」

「…で私ですか」

「はい。ばっちりです」


そう私は平均身長より低く154㎝しかない。洋服何てレディースのSサイズでも大きく子供服の方が合う。しかし小さい割に胸がある為子供服はバストが小さく無理で、服はシンデレラフィットしたことが無い。


「で条件は…」


遊園地側の希望は土日祝。開園から夜のパレードまで。1時間半毎に園内を30分ほど周り1時間休憩し、夜のパレードは1時間弱園内を歩く。出社から退社迄休憩時間も含めて時給を出してくれる。顔はにこやかにしているが必死で頭の中で計算すると…

朝9時半に出社し夜9時半の12時間拘束(実務時間は多分6時間ほど?)12時間×2000円は…1日24,000円!!

何て高額な!夜のバイトでは無いかと思うくらい高い!交通費に昼食が付くなんて神バイトだ!

基本休まないで欲しいが体調不良等の休みはOKだそうだ。

これなら平日入っているバイトを減らせる。


「よろしくお願いします」

「良かったよ引き受けてくれ。てオーナーが変わる事になり、オーナー直々に計画した企画なので失敗できないんだよ」

「頑張ります」


詳細は次の週末に書面で頂けることになり、この日はこれで帰る事になった。前祝いに付き添ってくれた智花にランチを奢りルンルンでこの日は帰った。

しかしこのバイトが私の人生設計を揺るがすなんて、この時は思ってもいなかった。

お読みいただき、ありがとうございます。

続きが気になりましたら、ブックマーク登録&評価をよろしくお願いします。


『いいねで応援』もポチしてもらえると嬉しいです。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ