第四話 魔大陸イシュガル
俺は久し振りに竜形態になった。
また少し成長しているようで全長35メートル近くになっていた。
早速リアと桜鬼を乗せて魔大陸に向かう。
その途中で竜の都に寄った。
これまた久し振りにギデオンと会い、リアと桜鬼を紹介し雑談をしていると急にギデオンが竜王の座を俺に譲ると言ってきた。
自分より強い師匠がいるのに自分が竜王であるのは不遜だと言うのだ。
だが、竜王になるにはギデオンと竜王の座を賭けた決闘をしなければならない。
俺は拒否したのだが、ギデオンは一歩も引かずリアと桜鬼に関しては何故か興奮している。
結局、竜王の座を賭けて決闘することになった。
前にも行った闘技場に行き、決闘をするのだが、どこから情報が漏れているのか既に観客席は全て埋まっていた。
観客は竜王の座を賭けた戦いが観れると大興奮しており、中には俺を覚えている声もあった。
レフェリーは桜鬼が行う事になった。
桜鬼の合図で決闘が始まる。
ギデオンは初っ端から強化魔法を使い、鋭い爪で攻撃しようと詰めてくる。
俺も対抗し、強化魔法を使う。
しかし、前と違う所があり、俺の強化魔法は雷なのだが黄色から黒雷に変わっている。
「流石はお師匠様。短時間でそんなに強くなられたとは」
「そう言いながらお前も黒炎になってるじゃないか」
それから激しい攻防が続き俺は勝利した。
これで俺は晴れて竜王になったのだが、これから魔王にもなる予定なのだ。
魔大陸に自分の国を作るのにここの管理なんてやってられない。
そう言う訳で俺が居ない間はギデオンを代理として管理させる事にした。
それから新しい竜王の誕生という事でちょっとしたお祭り騒ぎになったが、早々と抜け出して魔大陸に向けて出発した。
海の上を飛んでいるとある境目から空気がガラッと変わった。
魔力が濃くなったのだ。
海の中にも魔物がちらほら見えるようになり、遂に大陸な見えた。
魔力濃度が高すぎるせいか、空気が歪んで見える。
俺達魔物にとっては薬のようだが、人間からしたら毒だな。
魔大陸の地に降り立ったが、念の為このままの姿で行く。
あちこちから強力な魔物の気配がする。
だが、一つだけ気になる気配があった。
「桜鬼の気配に似ているがお前と同じ鬼人か?」
「恐らく俺がいた集落でしょう」
どんな集落なのか気になるので行ってみる事にした。
すると、何かと戦っているのか爆発音がする。
フェンリル率いる牙狼族と鬼人族が戦っていた。
鬼人族が押されているようだ。
「父さん…!」
「あれがお前の父さんなのか?」
「はい…」
「なら、行ってこい。他の奴らは俺たちに任せろ」
「ありがとうございます!」
桜鬼はお父さんの元へ走っていく。
俺達は他の鬼人達の救助と雑魚処理を開始する。
「グウォォォォォ!!!」
俺の咆哮で身動きが取れなくなっているうちにリアが魔法で掃討していく。
「獄炎陣」
「リアの魔法は相変わらずめちゃくちゃだなぁ…」
「むぅ、ギウス様だって大概ですよ!」
「お、おぉう、そうか…」
そうこうしている内に雑魚処理は終了した。
残るはフェンリルだけなのだが、問題ないだろう。
* * *
「父さん!」
「なっ!?何故お前がここに!?」
「今は説明している暇はない!相手に集中して!」
「あ、あぁ」
桜鬼はギウスから貰った新たな力を試せる機会を得て、ウキウキしていた。
桜鬼は拳に氷を付与した魔力を込めてフェンリルを殴っていく。
フェンリルも反撃し、黒炎を身に纏う。
ただ氷を纏わせただけの拳では黒炎を纏うフェンリルには決定打を打てずにいた。
お父さんである鬼人も負けじと攻撃をしているが全て黒炎に無力化されていた。
そろそろギウスが助けに行こうとしていた時、
『…確認しました。個体名桜鬼に世界から世界からの祝福が贈られます」
(固有能力〈絶対零度〉を獲得しました)
「うぉっ!俺にも聞こえるのか」
どうやら名前を授けた時に回廊で繋がっていたらしい。
一時は助けに行こうかと思っていたがどうやらその必要は無いらしい。
「絶対零度」
桜鬼は自分の拳に絶対零度の効果を上乗せしてフェンリルを殴り飛ばした。
フェンリルは一瞬で凍りつき桜鬼の蹴りで粉々に砕け散った。
「桜鬼!よかったな、これでお前もこの世界の上位存在の仲間入りだな」
「ありがとうございます!」
「"零"、俺達の元に戻ってくる気はあるか?」
「父さん…いや、俺は時期頭首を決める決闘で敗れた身、戻るわけにはいかない。それに俺は新たに主を得て"桜鬼"という名前を貰った」
「そうか…それは残念だ」
「なら、お前達鬼人を俺の配下にして、桜鬼の下に就かせよう」
「なっ!?配下だと…?」
「あぁ、お前達が加わればこちらとしては嬉しいんだが」
「いや、しかし…いきなり配下に加われと言われても…」
「そうか、なら実力を見せつけた上で、ではどうか?」
「現頭首である私に勝てたなら配下に加わらさせてもらいます」
「わかった」
決闘はすぐ行われた。
俺としてはさっさと終わらせたいので黒雷を落とす。
鬼人はそれを避けたが少し遅れたせいで地面を伝ってきた電流に痺れていた。
人化して距離を縮め、腹パンを食らわせ気絶させた。
実に呆気なく他の鬼人達は呆然と立っていた。
しばらくして頭首が目を覚まし、配下に加わった。
配下に加わった証として、頭首には"紫炎"の名を授けた。
他の鬼人達にも名前を付けて回った。
こうして無事に鬼人達を仲間にすることができ、魔大陸統一に一歩近づいたのだった。