第三話 王都グラム
俺は人化してみることにした。
リアが輝くような目で見てくる。
俺の姿は黒髪、黒目で瞳孔が金色だった。
何となくタキシードが似合いそうな見た目をしている。
リアは興奮した様子で鼻息を荒くしている。
折角の美人が台無しだ。
だが、これは人間の姿をしているせいなのか、欲求が強くなっている気がする。
リアは美人でスタイルもいいのであり一つの欲望が俺の全身を駆け巡る。
俺は何かしでかす前に竜の姿にもどる。
俺の中にあった欲望は消えていった。
「(ふぅ…まさかリアに発情するとは…)」
「魔王様、もうちょっと人の姿でも良かったのですよ?」
ら
「お前、さりげなく俺を誘惑してただろ。それにギウスと呼べと言ってるだろ」
「てへっ、すみませ〜ん」
「はぁ…置いていくか」
「いやぁぁぁっ、待って下さい〜ギウス様〜」
どうしてこうなったんだろう。
つくづくそう思う。
俺達は瞬間転移で王都グラムに到達した。
普通は瞬間転移は行ったことのある場所にしか行かないのだが、前世は世界中旅をしたので、座標を照らし合わせた。
王都グラムはとてもいい街のようだ。
規模もデカくて街の雰囲気もいい。
俺達は前世に登録していた冒険者ギルドに行く事にした。
すぐにギルドに着き、登録を済ませる。
ランク制ってのは前世から変わりは無く、下からG.F.E.D.C.B.A.S.SS.SSSだった。
魔物のランクはこの上に災害級、厄災級、災禍級天災級が追加されていた。
因みに竜族は子竜でも災害級で成竜は厄災級、古竜は天災級だ。
俺達はGランクからのスタートだ。
ランクをある程度上げると色々受けられる依頼が増えるので素早くランクを上げる。
まずは、定番の薬草採取だ。
これは俺のスキル〈探知〉によって数分で終了した。
リアは探知魔法を使っていた。
この世界ではスキルを持つ者は上位の存在だけだ。
人間でスキルを獲得しているのは勇者一行ぐらいだろう。
俺は前世の経験と竜になった事でスキルを得た。
その後も討伐依頼などもこなし、すぐにDランクまで上がった。
Dランクでやっと一人前らしい。
俺とリアは今日はここら辺にしようと宿に戻った。
宿の部屋はリアが一つでいいと言って聞かなかったので一つしか借りてない。
俺としてはリアを襲ってしまわないか心配なのだが。
しかしそんな俺の心境を知らないリアは容赦なく誘惑してくる。
そこで俺は思い切って聞いてみる。
「なぁ、リア。本気…なのか…?」
「ふふ、えぇ本気…ですよ?」
そこからは皆さんのご想像にお任せしたい。
股を全開に誘われたら誰だって食いつくだろ?
翌日、起きると隣ではまだリアが幸せそうな顔で眠っていた。
頬にキスをし、着替えてギルドに向かった。
依頼を受けるためだ。
今日はDランクモンスターのオーガの討伐依頼を受けようと思っている。
早速森に瞬間転移し、オーガを探すが、見つけたのはオーガではなく上位種の鬼人だった。
それも魔大陸の魔物並みの強さだ。
だが、どうにも様子が変だ。
「おい、そこの鬼人。大丈夫なのか?」
「お前は誰だ…?」
「そんなに殺気を飛ばすな、お前を殺せるだけの力は俺にはないよ」
「ほざけ、俺には分かるぞ。お前がその気になれば俺なんて一瞬で殺されちまうってな」
「…なるほど。で、どうして鬼人がここにいる?」
「戦いに敗れた。それだけだ」
「ふ〜ん、悔しいか?」
「もちろんだ!悔しいに決まってる!」
「ならば俺の弟子になれ」
「…は?いや、指南してくれるのは嬉しいがどうして?」
「なに、簡単な事だ。俺は魔王だから優秀な配下がいて当然だろ?」
「ま、魔王?」
「あぁ、いずれ魔大陸に行って俺が統一してやるよ」
「では、よろしくお願いします魔王様」
「ギウスだ、ギウスと呼んでくれ。それでお前の名前は?」
「俺は鬼人一族の長の息子でした。ですが戦に敗れ、これまで名乗っていた名前を剥奪されて今は名無しです」
「そうか、なら今日からお前は桜鬼だ」
「はっ。ありがたく頂戴いたします」
桜鬼も加わり三人となった俺達はランクを順調に上げていき、遂にはAランク試験まで来ていた。
Aランク試験はAランク以上の冒険者が試験官を務め、審査する。
試験の内容はBクラスの魔物を単独撃破する事だった。
特に苦もなく無事に試験に合格してAランク冒険者になった。
俺達はたったの三ヶ月でAランクまで行った。
これはギルド内で最速記録らしい。
因みにSランク以上になるにはそれなりの偉業を成さないとなれない。
まぁ俺達はそんなにランクにこだわっていないのでどうでもいいが。
そして、グラムに来たものの特にする事なく俺が気になっていた魔大陸に行く事になった。
桜鬼に魔大陸を統一すると言ってしまったので、割と本気でやろうと思う。
魔物の国なんてのも面白いかもな。
リアや桜鬼も結構ノリノリで賛成してくれている。
魔物の絶対ルール、弱肉強食。
もし、統一出来たなら国を作ることなど造作もないことだろう。
なんなら人間の国より楽かもしれない。
こう思うと人間ってめんどくさいよな。
魔大陸に行くにあたって移動手段だが、これは俺がリアと桜鬼を乗せて行くことにする。
それが一番早いからだ。
リアは俺の体に乗ることに興奮して、桜鬼は何処となくソワソワしている。
出発前にこんなので大丈夫か?と心配させられた。
まぁとりあえず気楽に行こうと思う。