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第5話_ハスキーボイスの子守唄

アギレラ家でシルフィがいないことが発覚したのと同じ頃。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


カイトはとても不安げな様子で、シルフィの顔を覗き込んだ。

「シルフィ、体調は大丈夫ですか?昨晩はしっかり眠れましたか?」


シルフィにとって、初めての宿屋での宿泊。加えて、お屋敷とは全く異なる市井での生活。

カイトはシルフィが体調を崩すのではないかと、とても心配していた。


が、シルフィはそわそわしていて。


「ひゃい、問題ありませんわ。あ、あの、昨晩はベッドをお譲りくださり、ありがとうございました。そ、それに、寝る前に聞かせていただいたお歌は、とても素敵でしたわ。」


カイトは幼い頃に妹に歌っていた子守唄を、昨晩シルフィに聴かせていた。


(耳元で聞こえるカイトのハスキーな声に聞き惚れてしまって、心臓が落ち着かなかったのですわ!そんなことご本人には言えませんけれど。)


そんなシルフィの気持ちを知らず、カイトは大人の色気たっぷりの爽やかな笑みを浮かべた。「 では、また歌って差し上げますね。」


(また歌ってほしいような、平静を保つためにはやめてほしいような、でもまた聞きたいような。この気持ちは一体なんなのでしょう。わたくし、どうしてしまったのでしょう。。。)


シルフィが悶々と考え事をしていると、

急に黙って込んでしまったシルフィの肩をカイトが揺らし、

「フィ、シルフィ!シルフィー!!!大丈夫ですか?聴こえていますか?」と慌てながら尋ねていた。


「ひゃ、ひゃい!」


カイトはシルフィの額に手を当て、自分の額より体温が高いことを確認すると、ひょいと抱き上げた。

「やはり、少し体調が悪いようですね。乗り合い馬車まで私がシルフィを運びますね。」



「だ、大丈夫ですわ、わたくし、自分で歩けますわ!」


「いえ、無理はいけません。誠心誠意お守りするお約束ので。

さて、朝一番の馬車まであと少しですし、そろそろ出発しましょうか。

街中では、話し方は少し崩させてもらっても?恋人らしく振る舞うためにも。」


カイトの腕のなかで、真っ赤になったシルフィは、絞り出すように「も、もちろんですわ。」と答え、カイトの胸に、隠すように顔を埋めたのだった。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


朝一番の乗合馬車に乗った2人。

8人乗りの中型の馬車に、2人を含めて6人ほどが乗っている。

カイトは一番端っこの席にシルフィを座らせて、自分も隣に座り、手を繋いだ。


「シルフィ、今日はマーガレムの街に行くよ。王都から馬車で半日かかるけれど、ハーブが有名で今の季節はラベンダー高原が素晴らしいからね。」


マーガレムは王都の北東に位置し、やや標高が高く、1年を通して20℃を超えない涼しい気候が人気の街である。


「とっても素敵ですわね!

ハーブといえば、わたくしはお兄様への手土産に”安眠の香り袋”を探したいと存じますわ。

きっと毎日寝る間も惜しんで勉強なさっているはずですもの。」


「それなら、ラベンダー高原の売店で探してみようか。

香り袋の他にも、調味料やハーブ薬も扱っているお店があったと思うよ」


すると向かいに座っていた50代くらいの男性が、急に立ち上がり、カイトの肩に手を伸ばしたのだが・・・


(続く)

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