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魔力があるならゴーレムに注げばいいじゃないか。  作者: エノキスルメ
第二章 開拓者たちは進展と出会いを得る。
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第41話 後輩ゴーレム使い。

 王宮への行きと同じくユリさんにクレーベルへと送ってもらい、彼女と少し言葉を交わしてその帰還を見送ったら、今後のこと――ルフェーブル領内でアカリをどう扱うかについて話し合いだ。


「とはいえ……彼女の能力をこのルフェーブル領でどう活かすかとなると、すぐには妙案も思い浮かばんな……」


 クレーベル行政府の会議室で不安げなアカリを囲んで、ルフェーブル子爵やヨアキムさん、ティナ、僕、マイカといったメンバーが並んでいる。


 アカリのギフトは独特だ。


 どんな物理攻撃も効かない肉体と、宮廷魔導士2人分以上の魔力、そしてまだ未熟とはいえ、火魔法の素質。


「どちらかというと戦場で真価が発揮されるような能力ですからな……」


 ヨアキムさんがボソッと言うと、アカリはまたあわあわしながら「あ、あの、戦争とかそういうのは私ちょっと……」と涙目になる。


「いや、何もアカリ殿を戦争へ送り込もうと言うつもりはない。驚かせたならすまなかった」


 慌ててヨアキムさんがそうフォローして、ようやく落ち着くアカリ。


「そもそも、このルフェーブル領は戦争とは無縁だからな。アルドワン王国との紛争の最前線になっているアンベール辺境伯領とは距離がある上に、今まではこちらが貧乏領だからと援軍を求められることもなかった」


 そうルフェーブル領の事情を語る子爵。さらに続けて言う。


「アカリ殿はこの世界については分からぬことだらけだろう。その状態で何か役割を与えるというのも難しい。しばらくはこのクレーベルで、リオやマイカと過ごしてもらってよいのではないか? 2人ともどうかね?」


 ちなみに、僕たちが正式にルフェーブル領の行政組織に組み込まれてから、公的な場以外では子爵も僕たちを呼び捨てするようになっている。


「……そうですね。そろそろ冬になって動きづらくなりますし、数か月かけてゆっくりこの世界での社会生活に馴染んでもらえばいいかと」


「私も、それが一番いいと思います。アカリには私の家に一緒に住んでもらえば本人も落ち着くと思いますし」


 もちろん僕たちに異論はない。同郷の人間が増えるのは大歓迎だ。アカリは天然だけどいい子だし。


「それでは、ひとまず春までアカリ殿にはリオとマイカの仕事の補佐を務めてもらおう。立場上は初期の2人のように子爵家の食客という扱いで、多少の金銭も渡しておく。2人の手伝いをしながら自身の能力の活用に慣れていってほしい」


「は、はいっ。頑張りますぅ!」


――――――――――――――――――――


 話し合いも終わりかというときに、ルフェーブル子爵が思い出したように言った。


「ああ、そう言えば、また新しくゴーレムを発見したのでリオに送ろうと思っていたのだった。今回の騒動ですっかり伝えるのを忘れていた」


「今度はどこで発見されたものですか?」


「今回は王国南部の貴族が保有していると情報が入ってな。またルフェーブル子爵家で買い取ったのだ。8体目になるが、使えるかね?」


「そうですね……正直、魔力的には少し厳しいかもしれません」


 今の7体のゴーレムに魔力を注ぐことで、リオは毎朝5000以上の魔力を消費している。


 そこへ加えてもう1体となると、さすがに朝の魔力消費量が多すぎるかもしれない。


 残存魔力が3割を切るとさすがに明確に分かる程度の疲労は感じる。それが毎朝だと、自分自身の活動や思考に影響が出てしまうだろう。


「そうか。そうなると、ひとまず予備として持っておいてもらうのがいいだろうか?」


「……アカリに使ってもらうのはどうでしょうか?」


「へえっ? わ、私ですかあ?」


 急に話を振られて変な声を出すアカリに、僕とルフェーブル子爵の視線が向く。


「……ありかもしれないな。リオほどではないにしても、アカリ殿も魔力量は十分に多い。クレーベルにいる分には火魔法だけで毎日それほど多くの魔力を消耗することもないだろうし」


 アカリが持っているのは火魔法の「素質」なので、「才能」持ちの来訪者と違って魔法の技量自体が高いわけじゃない。体系的に魔法を学んでいないので、今のところは「火種フレア」などの初歩的な魔法しか使えない。


 そのため、彼女は自身の魔力を持て余し気味だった。それならゴーレムを1体持ってもらうのもいいかもしれない。


 ゴーレムは戦闘要員としての強さはもちろん、移動から輸送から開拓作業まで、こなせる仕事の幅広さが魅力だ。それを使える人間が2人になれば、利便性が大きく上がる。


「アカリ、どうする? ゴーレム使いやってみる?」


「えっと……上手くできるか分からないけど、皆の役に立てるなら、やってみようかなあ。リオくん、色々教えてくれる?」


「もちろん。冬になったら時間にも余裕ができるし、ゴーレムの操作になれる練習期間としては十分なんじゃないかな?」


「決まりのようだな。私がケレンに帰った後、すぐにでもゴーレムをクレーベルまで送るように手配しよう。後のことはリオに頼むぞ」


「はい。お任せください」


 というわけで、僕に「後輩ゴーレム使い」ができることになった。


――――――――――――――――――――


 結論から言うと、アカリは問題なくゴーレムを使いこなせた。


 ただ、魔力を注ぐ人間の性質に影響されるのか、それとも操作するアカリの性格からか、彼女の動かすゴーレムは僕のゴーレムたちよりも何だかおっとりした雰囲気を纏っているように思える。


 別に動きが鈍くさいというわけでもないけど、どことなく猫背っぽかったり、待機を命じられると体育座りになったり、たまにアカリと動作がシンクロしていたりしてシュールだ。


 彼女が自分のゴーレムに付けた「ゴーちゃん」という直球過ぎるニックネームともそのシュールさに拍車をかけている。


 彼女が僕たちの仲間に加わったことで、僕たち特務省の初仕事となっている「パドメの調査」も捗った。


 何せアカリはパドメ跡地で1年以上も暮らしていたんだ。街のあちこちを見て回っていたので、どこに何があるか詳しかったし、原型を留めている金品の在処も知っていた。


 クレーベルとパドメを何度か往復しながら、パドメのあちこちに残されていた貨幣や、亜竜の炎で溶けてインゴットと化した金を回収する。


 冬の到来までに集めた金品の総額は、数億ロークに達していた。ルフェーブル子爵領の規模を考えると、一時的な副収入としては驚異的な額だ。


 その大きすぎる成果を見たルフェーブル子爵からは、僕もマイカもアカリもボーナスとして結構な額をもらったし、そこから僕も調査に同行してくれた従士たちに結構な額のボーナスを渡した。


 そして、9月も終わりに差しかかり、季節はまた冬になっていく。

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