17 協力者
「何、それ.....ふざけてるの?」
少女は肩で息をしながら、困惑の言葉をかけた。
額の玉の汗や、頬に張り付いている髪から先ほどまでの戦闘の激しさを感じられる。
戦闘中に姿を確認することはできなかったが、随時子供たちを指示する声は響いていた。
このような状況になってさえ、凛と二の足で立ち、こちらを見据えている。
「俺は、最初から意見を一貫してる」
一手ははっきりと答える。
対話、最初から一貫して求めていたことだった。
「交渉がしたい、そっちだってもう限界のはずだろ?」
背後に視線を向ける。
誰一人致命傷にはなっていないはずだが、子供たちの半数は地面に伏せている。
到底戦闘を続けられるような状況ではない。
少女も同様に立ち姿こそ立派だが、その表情には疲労が見て取れる。
これ以上事が長引くのは彼女も不本意のはずだ。
「これ以上、気分の悪いことさせないでくれよ」
少女はすぐには返さず、じっと一手を見据える。
そして小さく吐き捨てるように言った。
「……気分の悪いことをしてる割には、ずいぶん楽しそうな顔してたじゃない」
奪ったガス灯が揺れ、その光が一手の顔をなぞる。
戦闘中、彼女の視界に一瞬だけ映った――不気味なほど歪んだ笑み。
一手は眉をひそめる。
「そんなことは、ないはずだ」
自覚などなかった。少なくとも、自分はそんな顔をしていたつもりはない。
一手の否定に、少女はわずかに目を細めた。
「自覚がないの?……まぁいい。どのみち、あんたは信用できない」
「信用だと?」一手の声が低くなる。
「そっちが仕掛けてこなければ、こんなことにならなかったのに」
二人の間に、再び重い沈黙が落ちる。
揺れるガス灯の明かりが、互いの表情を交互に照らし出す。
子供たちのかすかな息遣いすら、今はやけに耳に反駁した。
轟音が、沈黙を引き裂いた。
熱が、腹に滲む。
何が起きたのか、一瞬わからない。
視線は正面のまま、ゆっくりと手を当てる。
指先に、汗とは違う粘りが絡んだ。
――やらかした。
遅れて、理解する。
腹に空いた穴が、現実を突き付けてくる。
前情報とは違い、武器を持っていない子供たち。
むしろ楽だと判断したが、そうじゃないだろ。
「毬音さんの出す情報が間違ってるわけ、ないだろ......」
前情報は合っているが、今現在は武器を持っていない子供たち。
何故持っていなかったのか、手放す必要があったのか。
コツコツと足音が背後から近づいてくる。
口に鉄の味が広がる中、倒れないように踏みとどまるだけで精一杯だ。
正面に目を向けると敵のはずの少女もまた、狼狽した様子だった。
「ちょっと、いくら何でも撃つのはやりすぎではないですか」
「甘い、甘いんだよな~、秋奈ちゃんは」
背後に立つ人物のヘラりとした声が聞こえる。
一手は腹部を抑えながら、ゆっくりと振り返った。
子供たちとは違う。顔つき、肉体。
「補充のためにちょっと外したらこれだよ~」
協力者の存在を頭から外していた。
武器を調達でき、それを補充してくることができる。
そこには一手と同じ次元の存在がたっていた。
「武器ブローカーか......」




