01 罪悪感は泥の味
空を見上げ、腕を掲げる。
その様子は自分の無念に怒っているかのように見えれば、誰かに助けを求めているようにも見えた。
慟哭、ただ慟哭。
溢れた涙は降る雨と混じり、泥濘の地面に吸われていった。
何度吸われようと溢れる涙は止まらない。
藤原一手は無力さに打ち拉がれていた。
慟哭…。
ただ、慟哭…。
曇天の空からは絶えず雨が降り注いでいた。
…...一体どれほど泣いただろうか。
掲げていた手は疾うに地面に落ちて、泥だらけになっていた。
溢れていた涙は枯れ、今は雨が頬を濡らすばかりだった。
頬を濡らす雨も止む方向の傾いているのが空を見てわかる。
いつまでも転がっているわけにはいかなかった。
雨に濡れ、水やら泥やらを吸った重い軍服を携え、一手はゆっくりと起き上がる。
腰に着けた通信装置のボタンを押しながら、ひび割れた唇を動かした。
「こちら陸軍第4隊藤原一手副隊長、曇天作戦は1027をもって成功。拠点を確保した。」
冷たい通信装置を握り締め、どうにか震える声を押さえつけながら報告を続けた。
「敵の規模は分隊6、約50人。すでに全滅を確認している。援軍は不要」
この先は言いたくないが言わなくてはならない報告だ。
自分が最後まで報告を完遂できるか一手は不安だった。
「こちらの損害は非常に甚大、分隊七隊全てに壊滅的な被害を受けた」
これ以上の報告は自分の声を震えさせずにはいられないものだったが、覚悟を決めていう。
「第1隊隊長、本条のミスにより各隊はほぼ全滅。生き残りは私だけだ。」
しかし予想に反し声は全く震えておらずむしろ先ほどよりもハキハキと聞き取りやすい声となっていた。
「より、生存者、一名」
一手は笑っていた。