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プロローグ

 人生が辛かった。齢十五の中学生にして生きる道に絶望していたことを、若すぎると評価する人もいるだろう。


 だけど、仕方ないじゃないか。地味な自分はスクールカーストで最底辺。頭部を覆うごわつく黒髪、重たい眼鏡、幽霊並みに白い肌。典型的な陰キャでしかない。


 休み時間は本を読むか机に突っ伏して寝てるフリをするしかないし、授業中は挙手もしない。成績は可もなく不可もなく。体育は憂鬱でしかなく、二人組を作るだなんて夢のまた夢。


 それが俺、高宮(たかみや) (さき)だった。


 女っぽい名前って思ったろ? もういいよ、それについては散々からかわれたから。それがトリガーになってブチ切れたらクラスメイトの女子に泣かれたし。


 ただ胸ぐら掴んでやめろよって睨んだだけなのに目の前の女子はじわじわ目頭に涙を浮かべて次第に透明な筋を作っていった。


「っ、なんだよ」


「ごめん、ごめんなさい、怖いよ…!」


 それから周りの男子にゴミ捨て場に投げ込むように引き剥がされ、俺を怖がった女子に群がって行った。


 大丈夫だよ、怖かったね、あいつ何考えてるんだろうね。


 地べたに這いつくばったまま見たあの光景。

 その女子を慰める人間達が俺には眩しくて仕方なかった。


 俺だけ、闇に取り残された気分。出来れば二度と味わいたくない。

 勿論手を出した俺が悪い。それは間違いない。だけど、何度もからかったのはそっちじゃないのかと思うのに、俺はその光景に圧倒されて何も言えなかった。


 そして、透明人間の出来上がり。話しかけられても腫れ物を扱うようにされる陰キャの出来上がり。


 クラスのオタクがたまに話しかけてくるけど、俺はハマっているものも何も持っていなかったから次第にフェードアウトしていった。


 あーあ、俺の人生、きっとずっとこんなのなんだろう。正直凄く辛い。俺だって青春ってやつを味わってみたいし、可愛い女の子とも普通に喋ってみたい。


 このまま空気として誰にも触れて貰えないまま死んでいくんだろうか。


 それは、嫌だな。



「…あーあ」


「どうしたの? ()()()


「んーん、なんでもないわよ」


 ああ、嫌なことを思い出してしまった。


 俺はブレザーの赤いネクタイを締め直し、隣に立つ女子に視線を向けた。



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