第1章 一本以上
結局修練場まで2人は喋ることなくそのままみんなが練習している広場に着いた。
「帰ってきたか」
「すいません、只今戻りました」
「傷の方は大丈夫か?すまない、ついついやり過ぎてしまった」
「えぇ、多分闘気のおかげでなんとか、、」
「ん?どうしたんだ?何故そんなに暗い顔をしている?てっきりお前の事だから喜んでいると思っていたぞ?」
「どうしてですか?結局先生からは一本取れなかったですし、、、」
「フッ、どうやら気付いてないみたいだな」
「何をです?」
「俺はこの学園で五星にだけ一本取られた事があった、しかしそれは油断しての事だ」
「はぁ」
「もし油断してなかったら確実に取られることはなかった、しかしお前は俺から無理矢理本気を引きずり出した、何故だかわかるな?」
「、、、んー」
「はぁ、、それはお前に一本取られる所か重傷を負わされる所だった、お前のその闘気も相まってほんの少し俺が怖気ずいたのだ」
「ん?って事は」
「あぁ、あのままだったら確実にお前に一本取られていた、それよりも俺から本気を引きずり出したんだ、お前は“一本以上”のものを俺から取ったんだ」
(ドクンッ)
「そうか、、、俺先生から取れたのかそれ以上の物を、、、」
「ど、どうしたの?カイト?」
「よっしゃぁぁぁ!!!」
「キャッ」
喜びのあまりセニカに思いっきり抱きつくカイト。
「アッハハ、マジで嬉しいぜ!なぁセニカ!俺先生から一本以上取れたよ!!」
「わ、わ、わかったから、そ、そのはな、離してほ、欲しいような、欲しくないような、、、」
「あ!ご、ごめん、、、つい喜んじゃって、、」
「何を仲良くイチャついてる?授業はまだ終わってないぞ」
「イチャついてないっすよ!」
「イチャついてません!」
「そ、そうか、そういえば聞きたかったのだがカイト」
「なにをですか?」
「お前のあの魔法はなんなのだ?青い閃光のやつだ、初めて見た魔法だった、あれのせいで身動きが取れなくなって、それに避けたはずが何故か命中していた」
「あぁ、あれは、、」
(なんて説明したらいいんだろ)
「えーっと、雷魔法と言いまして、正確には電気というものなんですけど、分かりやすく言うと、複合魔法みたいなものです」
ファミル先生によると四大元素を元に作った魔法は複合魔法と言われ、水素爆発や氷魔法なども複合魔法に入る。
「なるほど、それがあの魔法の正体か」
「それと先生が避けたと思ったけど命中した原因は水です」
「水?」
「そうです、雷という性質は水や様々な物を通します、因みに人間も通します、なので水だまりの上にいた先生は避けたとしても水が電気を通すので命中します」
「なるほど、直接当たらなくとも、他の物質を通して命中するのか、、奥深いな魔法というのは」
「先生は魔法を習わなかったのですか?」
「俺はお前の年の頃からあったのは剣と戦場だけだった、生まれた時に親に捨てられ、拾われた先で金の足しになる様毎日働かされた。やがてお前と同じ歳の頃になると、俺は家出をして傭兵になった。それからは毎日戦場で生きていた」
「かなり苦労してらっしゃったんですね」
「まぁでも、戦場にいた頃はこれが普通だと思っていた、戦場で戦い、そのまま戦場で力尽きていくのが俺の人生だと思っていた」
「って事は何かあったんですか?」
「出逢いだ」
「出逢い?」
「あぁ、あれは戦場でいつもの様に先陣を切って暴れていた、、、」
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場所はシグニカとエリュードの国境の平原、ザルト平原。辺り一面緑が続くいつもの平原は人の血が数千数万と流れ、果てしなく赤が続く平原と化ていた。
*「ヴァイス!!もうだめだ!右のやつら全員死んじまった!!」
「まだだ!!まだやれる!死んでいった奴の仇を俺らが取ってやるんだ!!」
激しい戦火の中、2人の青年がいた、1人は当時現役最強の傭兵ヴァイス、もう1人がヴァイス共に傭兵の世界の入り込んだ同期のヘイン
「クソッ!また変なスイッチ入ってやがる!こうなったら行くしかねぇ!」
「ヘイン!あんま無理すんな!危なくなったら俺を置いて引け!」
「バカヤロウ!オメェを置いて引けれるかっつーの!」
「大将首はもうすぐそこだ!一気に攻め込むぞ!」
「おう!」
右翼は全滅、残る左翼は敵の左翼と右翼に挟まれ絶体絶命。
「邪魔だオラァ!!!」
バゴォーン!
一振りで百単位の歩兵が吹き飛ぶ。
「相変わらず馬鹿げてんな、、」
「あぁ?何か言ったか?」
「いや、その調子で頼むわ相棒」
「へっ、任せとけ!」
そしてそのまま敵の守備を軽く突破し、敵の大将を守る精鋭部隊の前まで駆け抜ける。
「テメェら!!敵の大将はもうすぐそこだ!!気ぃ引きしめろよ!!」
「「「オォウ!!!」」」
そして勢いよく飛び出し敵の大将の精鋭部隊に斬りかかる。
ガキィン!!
「なっ!俺の剣が弾き飛ばされただと!?」
*「どけ、私が出る」
「「「団長!?」」」
そう言ってヴァイスの剣撃が弾き飛ばされ、目の前に出てきたのは兜と全身を金色の鎧を纏った敵の大将だ。
「なかなか豪華な鎧着てんな、お顔を隠して何のつもりだ?」
*「貴様には関係ない、死ねっ!」
そう言って団長はもう一本剣を抜き出す。
「二刀流か、珍しいな」
シュインッ!
ドゴォン
「あっぶねー」
*「ほう、今のを躱すか」
いきなり飛んできた斬撃を後ろへ飛んで避ける。
「ヘイン!誰もこっちに近ずけさせんな!久しぶりに楽しめそうだなこりゃ」
「早めに終わらせろよ!!絶対遊ぶんじゃねーぞ!!結構しんどいんだからなー!!」
「その顔のお面剥がしてやるよ」
*「かかってこい」
ヴァイスが団長に向かい走ると同時に先ほどの斬撃が飛んでくるが、剣で受け流す。
「お返しだっ」
ビュンッ
走り出し死体の近くにある槍を投げるが軽くかわされる。団長までの距離は後10メートル。
(このまま飛び込んで斬りかかるのもいいけど、またあの厄介な斬撃が飛んでくんな、、、)
*『フレアストーム』
シュルルルル
ブウォーー
「ちっ、魔法も使えんのか」
フレアストームを避けるが付いてくる。
「めんどくせーな、オラァ!」
ブフォンッ!
*「剣風だけで消しただと?噂通り馬鹿げた強さだな」
「お?俺のこと知ってんのか?」
*「少し本気で相手をしてやろう」
「何なら全力で来てくれても構わないんだぞ?」
*「貴様ごとき、半分の力で十分だ」
「へっ、後悔すんなよ」
すると団長の剣がそれぞれ違う色に変わった。
「魔法剣か」
団長が飛びかかってくる。
ガキィン
剣で受け止めるが。
ブォッ
ヴァイスの剣を伝って体に火が通う。
「あっち」
そして追撃がくる。
ブフォン
「なっ!弾く前に剣が吹き飛ばされる」
剣を吹き飛ばされそうになり、右足を大きくあげ、態勢を大きく崩すヴァイス。
*「終わりだ!」
「お前がな」
刹那ヴァイスの体がブレると同時に態勢を崩していたヴァイスは上がっていた右足で後ろの空気を蹴り、その勢いで刺突してくる団長の懐に潜り込み兜を斬りあげる。
ガシャンッ
兜が落ち、団長の顔が露わになった。
「お、お前、、、女なのか」
髪留めが頭から落ち、長くて綺麗な紺青色で毛先が巻かれた髪が女団長の胸元まで落ちる。
*「おのれぇ、よくもっ!!」
自身の姿を露わにされて逆上した女団長が斬りかかってくるも、その場で仁王立ちし構えないヴァイスが一言発する。
「あーあ、悪いけど女斬れねーから終わりだ終わり」
*「侮辱するな、女でも戦場にくれば立派な戦士だ、剣を取れ!」
「えー?めんどくさいなお前、女斬らないのは別に戦いたくない訳ではなくて、殺したくねーの、戦って欲しいならいいけど、ここは戦場だ、どちらかが死ぬまで戦わねーと決着つかねぇ」
*「それでも剣を交えた以上最後までやれ!貴様はそれでも戦士か!?」
「ただの傭兵だよ、お前らみたいに変なプライド掲げてやってねーし、俺ら傭兵にテメェらのそんなくだらねぇもん押し付けんな、金があれば戦場に出る、それだけだ」
*「ならばお前が私を打ち負かせば、降伏し、この戦いの勝ちを譲る。それでどうだ?」
「バカだろお前?お前のわがままでお前の国が負けるなんてマジで笑えねえぞ?」
*「それほど自分に自信があるからだ」
「ほーう、言ってくれるねぇ」
*「スゥー、ハァー、スゥー」
目を閉じゆっくりと呼吸を整える女団長。そしてゆっくりと目を開ける。
(闘気がさっきより更に増しやがった、、、本気でいかねぇとまずいな)
*「いくぞ」
「こい」
ブンッ!
瞬きをした瞬間消え、突如目の前に現れる女団長。
ガキンッ
キンキンッ
(早くなってやがるっ!)
剣が先ほどの倍早くなっている女団長。ヴァイスも身体強化を最大まで上げてやっと追いつける程度だ。
2本の剣が同時に振り下ろす女団長。それを剣で両方受けた瞬間、、、
『剛掌』
ドゴォ
「ゴフッ」
女団長はすぐさま剣を離して、両手で掌底を腹に打ち込んだ。そのまま地面に倒れるヴァイス。
*「もうその手には乗らん、立て」
「へっ、気づかれてたか」
*「闘気を一点に集中させたか」
「次はこっちから行くぜ」
ヴァイスは上から剣を振り下ろす。それを2本の剣をクロスにさせ受け止めようとした瞬間、ヴァイスの体が再びブレ、左右と上から同時に剣がくる。
女団長はすぐさま体を後ろに反らせ、左右からの剣を避け、上からの剣を2本の剣で受け止める。
ガキィンッ!
「これ見切るのかよ」
*「これで終わりか?」
「いや」
再びブレたあと、今度は5方向から剣撃が飛んでくる。女団長は右手の剣を逆手持ちにし、風魔法で左に高速で回転し、全ての剣撃を弾き飛ばす。
「そこだっ!!」
高速で回転している女団長に渾身の刺突を入れる。
ガキィンッ!!
*「甘いな、これで終わりだ」
「なっ!?」
*『四剣・冥城天華』
2本の剣とは別に、魔法で土の剣と水の剣を作り出し、宙で操り4本同時に襲いかかってくる。最初はなんとか凌いでいたが、ここに来るまでかなり体力を消費していたヴァイスは遂に成すすべなくして、剣は全て首元で寸止めされていた。
*「勝負ありだな」
「なんだ今の?」
*「操剣術だ」
「強いな」
*「当たり前だ、因みに手加減はしている方だ」
「だろーな」
*「お前、名前はなんという」
「ヴァイスだ、お前は?」
*「シェイン・ファウストだ」
「そうか、まだまだだな俺も」
「久しぶりにいい戦いが出来た」
「へっ、悪くない最後だったぜ」
「勘違いするな、命を取るつもりはない」
「なんでだ?」
「これはただの勝負だ、殺し合いではない」
「へへっ、変わってんな」
「お互い様だ」
「次は、、勝、つ、、ぜ」
ドサッ
「最後の最後まで手加減されてしまったな、殺す気で来ていたらどうなっていたか分からないものを」
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「それが最初の出会いだった」
「先生も負けた事あったんですね、そんなに強いのに」
「お前は俺を過大評価しすぎだ、俺でも負ける事はあるし、お前みたいなひよっこに本気を出すまで追い詰められる事もある」
「へへっ」
「そこから俺とシェインは色々な戦場で出会い剣を交えた、やがて剣を交えて行くごとにいつしかお互いを認め合い。ライバルみたいな存在になっていき、いつしか意識し合うようになった。シグニカとエリュードの最後の戦争の時に、俺たちはある約束をしていた」
「なんの約束ですか?」
「最後の戦いで勝ったほうの国に負けた方は入ると」
「どうなったんですか?」
「彼女が手加減して、勝たせて貰ったよ、それで彼女は亡命してエリュードに来た」
「でも危なくないですか?敵国に亡命するって」
「その時はそんなこと考えてなかったな、俺たち2人はかなり強かったから誰も手出ししてこないだろうって言ってたな」
「考えがめちゃくちゃですね、、、」
「まぁ、若気の至りってやつだ」
「それじゃあシェインさんとは今どうしてるんですか?」
「結婚した、子供が来年入学する」
「おぉ、、、いいですねぇ、なんて名前なんですか?」
「シエルだ、入学したら仲良くしてやってくれ」
「シエルちゃんかー、俺の師匠の子に剣を教える、、、いいですねなんか」
「あぁ」
「あ、それとさっき話しに出てきた、シェインさんの操剣術ってのが気になったんですけど、、」
「あれは教えることが出来ない、なにせ俺にも説明出来ない能力だ」
「えー教えてくださいよー」
「そう言われても俺さえ分からないんだ、そうだ、今度合わせてやるからうちにくるか?」
「え?いいんですか?」
「構わない」
「じゃあ今日で!」
「いいのか今日で?」
「はい!早く強くなりたいんで!」
「わかった、それじゃあ放課後校門の前に来い」
「分かりました!」
そしてカイトは練習に戻る。
ジリリリリッ
「それじゃあ今日はここまでだ、新しく用意した課題を各々後で取りに来るように」
「「「はい!」」」
「セニカー!待ってくれー!一緒に行こーぜ!」
「う、うんー(平常心平常心平常心)」
「どうだった?今日の練習?」
「い、いつも通りだよー?」
「そうか、今日さ、ヴァイス先生の家に行くんだけど来る?」
「え?ヴァイス先生の家に?なんで?」
「聞いて驚くなよ?ヴァイス先生には嫁さんと子供がいて、なんとその嫁さんはシグニカ王国の元師団長シェイン・ファウストだ!」
「シェ、シェイン・ファウスト!?確か国を捨ててどこかへ亡命したっていう、あのシェイン・ファウスト!?」
「シッ!声が大きいぞ、後でルフトも呼ぶからセニカもどうかなって思って」
「行く!絶対行く!一番尊敬してる人だもん!」
「そうだったのか!?」
「女の人で剣士を目指す人でシェイン・ファウストの名前を知らない人はいないくらいよ」
「そ、そうか、それじゃあ放課後に校門の前に集合だ」
「わかった!」
そして魔法の修練場に行くとルフトがいた。
「どうしたんだ?ルフト?」
「悪りぃ、今日帰るわちょっと」
「おいおい、そんなボロボロで帰んのか?先に診療所寄っていけよ」
「大丈夫だよ、ちょっと風邪気味っぽいし、、1人で、、、帰れ、、る」
ドサ
「おい!ルフト!?しっかりしろ!」
「カイト落ち着いて、取り敢えず診療所までテレポートしよ」
「あぁ、セニカは先生が来たら言っておいてくれ」
「うん、気をつけてね」
診療所を意識して。
『テレポート』
シュン
「ラムカ先生ー!!」
「またあんたかい、どうしたんだそんな声を出して」
「あ!ラムカ先生!実は友達が急に倒れて」
「見せてみな」
ブォーン
「うーん、、結構ひどいねこれは」
「どういった容体でしょうか?」
「精神的なストレスや栄養失調、それに外傷も何個かあるね、何があったんだい?」
「詳しいことは聞けてないです、ただ風邪気味とだけ」
「そうかい」
「起きたとしてもしばらく安静にしておかないといけないよ、修練は3日はダメだ」
「そんなに?、、、そういえばこいつ槍術科の生徒なんですけど、よくボロボロになって午後の授業一緒に受けるんですけど、先生がよくどうのこうのと言っていたのですが」
「槍術科の生徒はまだ見たこと診た事ないから、先生が誰だか分からないね、教員室に行ってみたらどうだい?」
「分かりました」
(ストレスに外傷、、間違いなく先生もしくは生徒に何かをされている、もしイジメみたいな事が起きていたら、全員ぶっ殺してやる!)
ガラガラガラ
「すいませーん!!1年の槍術科の先生はいますでしょうか!?」
「授業はどうした?カイト?」
「あ、ヴァイス先生!ちょっと今は槍術科の先生に用があって来ました」
「確か先ほど帰られたが、、」
「そうですか、どのような格好をしているんでしょうか?」
「背は俺より高くて細身で、気の弱い感じの人だ」
「分かりにくっ、まぁ取り敢えず探してみますわ」
『テレポート』
シュン
(取り敢えず校門で待つか、、)
すると身長の高い細身でいかにも気の弱そうな壮年の男が歩いてきた。
(絶対あいつだ)
すぐさま駆け寄って話しかける。
「あの!すいません!」
「ひぃっ、ビックリしたー、だ、誰だね君は、、」
「1年剣術科カイトです、手短に話します、そちらの生徒のルフトが先ほど倒れて診療所に俺が連れて行った所、外傷がありました。あいつからは度々先生の授業は少し度が過ぎていると聞かされていますが、どうでしょうか?」
「ど、どうでしょうかと言われましても、た、確かに、今日彼にはし、試合をやらせましたが、わ、私の授業が、、度が過ぎているのは、た、多分嘘だとお、おもいますよ?か、身体に負荷のかかるれ、練習はやらせた覚えはあ、ありませんですし、、」
(嘘をついてるようには思えないな、それにこんな気の弱そうな人が生徒を虐めそうにもないしな)
「取り敢えず分かりました、数々の失礼お詫びします。すいませんでした」
そう言って頭を下げ、お詫びを入れる。
「わ、私の方でも何か分かったらお、教えますね」
「はい、ありがとうございます」
(んーじゃー後は何だろう槍術科の生徒が怪しいなー)
取り敢えず槍術科の教室に行ってみるか。
ガラガラガラ
「やっぱり誰もいないなー、みんな授業に行ってるな」
そう言って教室から出ようとした途端、、
ドサッ
「キャッ」
「オワッ」
「いてて、すいません大丈夫ですか」
「いてて、ちょっと何よー、なんで知らない人が教室にいる訳ー?まさか私のファンだったりして!?」
「いきなり勘違いしてんな、まぁいいや、あの槍術科の生徒さんですか?」
「そうよ、あんたはーそのバッジは剣術科の人ねー、んで何か用なの?」
そう言って菜の花色のウェーブのかかった髪の毛をした女子生徒は服の汚れを払いながら、立ち上がった。
「槍術科にルフトって奴がいると思うんだけど、さっき倒れて診療所に運んだら、色々外傷とか見つかって何が原因か調べに来たんだけど」
「あぁ〜ルフトのお友達さん?だったら見当違いだね、ルフトはこのクラスのムードメーカーよ、誰も彼の事を嫌いな人はいないわ、たまに誰ふり構わず口説いてるの痛々しいけど」
「そうなのか?虐められてる事とかないのか?」
「100パーないわね」
「そうか、、本当にそうなんだな?」
「うん、私が保証する」
「そうか、わかった、これからもあいつとは仲良くしてやってくれ」
「あっ、でも言われてみれば最近あまり調子良くないわね」
「詳しく聞かせてもらえるか?」
「あたしも詳しくは分からないんだけど、多分ルフトの事だからありえると思うから言うね。最近2年の元五星の人の彼女を誰かが手を出して、その人が酷い仕打ちに合っているらしいの」
「うーん、あいつっぽいな」
「確か手を出された方の女の人は名家のお嬢様でカーマイン家だそうよ」
「カーマイン家?どういった特徴だ?」
「うーんとね、、代々その家系は髪が赤色らしいの」
「はぁ」
「ん?どうしたの?」
「多分あいつだ」
「なんで?」
「あいつ最初の魔法の授業で赤色の髪をした女にずっと可愛いを連呼してたんだよ」
「あぁ、多分ルフトだね」
「はぁ」
「はぁ」
「「やっぱ馬鹿だわ」」
「それよりも話を戻すが、いくらなんでもやり過ぎだ、ルフトも悪いが手を出した元五星とやらが一番悪い!」
「そうね、あたしもルフトを虐めてるなんて許さないわ、虐めていいのは私だけなんだから」
「いいや俺だけだぞあいつを虐めていい奴は、ところで名前なんていうんだ?」
「あたしだけがいじめる権利があるんだから、ラゼッタよ」
「あいつとは幼馴染だから長い付き合いの俺に虐める権利はある、カイトだよろしく」
「じゃああたしとカイトだけ虐めていい事で手をうとうじゃないの」
「それだったらいいぜ、よろしくなラゼッタ」
こうして訳がわからずラゼッタと共に2年生の教室まで行く。
「ところでカイト、あんた今から元五星に喧嘩を売りに行くのよね」
「そうだ」
「勝てるの?」
「あ」
「何を考えてるのやら、仮に今はただの2年生だけど元五星なのよ」
「全然考えてなかった、よし!今日は撤退だ!明日仲間を引き連れてぶっ叩きに行く!」
「あんた友達思いはいいとこあるけど、情けないわね」
「て事で、俺は授業に戻る、明日学校始まったら2年の校舎の前で集合だ」
「分かったわ」
「よし、それじゃあまた明日な」
「はいよー」
「すいませーん遅刻しましたー」
「あら遅かったわねカイトくん?」
「ちょっと色々あってー」
「どうだったのルフトの様子?」
「そんなに大したことはないみたいだ」
「そっかよかったー」
「それじゃあ授業を始めましょう」
「今日は魔法を操る方法を教えるわ、今までは魔法を纏わせる方法を教えたけども、今回は放つだけではなくその場に留めたり、方向転換させたり宙に浮かせて好きな時に放つ方法を教えるわ」
「纏わせるだけで一ヶ月かかったもんな、次はどれくらいかかるんだろ」
「そうね、まぁ先生が良いからほかの生徒のペースよりかは早いよね」
「あら、セニカちゃん嬉しいこと言ってくれるわね、ご褒美にその可愛いお顔にキスをしてあげましょうか?」
「はわわわ」
「だ、だめっすよ先生」
「あら、なぜカイトくんが止めるのですか?いつもだったら嬉しそうに見ていたではありませんか」
「え?あ、あのー、なんでもないです、体が勝手にー、はい、なんでもないです」
「ンフフ、可愛らしいわね貴方達、若いうちに恋愛はたくさんするものよ、恥ずかしがってちゃダメ」
「別に恥ずかしがってない、、すよ」
「もう!先生からかわないでください!」
「あらあら、折角可愛らしいカイトくんを見れたのに、ここまでにしといてあげるわ、それでは始めるわよ」
そう言ってカイトとセニカの関係をすぐに見破ったファミルはカイトをからかった後授業に入る。
「まずは、そうね、取り敢えず自分の得意な魔法の形状を小さな玉に変換して手のひらに出してみなさい」
カイトは光の玉、セニカは火の玉をだす。
「後はそれをずっとその場にとどめられるようにするのよ」
「これ、、地味に魔力の消耗が激しい」
「小さい玉でその魔力の消費よ、いかに魔力量の底上げが大事か分かったでしょう」
「、、はい」
「今日は授業は終わるまでこれの練習よ、後そのままだ見てもらいたいのだけど、完全に操れるようになればこんな事も出来るようになるわ」
そう言ってファミル先生は四大元素の各属性の玉を40個作り上げて色々な形を宙で操り作り出した。
「すげぇ、一つの属性だけでもかなりの集中力が必要なのに、4つの属性を各10個作って操るなんて、やっぱ先生とんでもねぇわ」
「それに見てカイトあの余裕、汗ひとつかいてないわ、底が知れないわね」
「まぁ貴方達と私の魔力量の差は10倍くらいよ、効率よく魔法を使ったり、魔法を使用していけばいくほど熟練度が上がり魔法の魔力消費も抑えられるわよ」
「そう考えると、どちらかに特化した方がいいのかなってたまに思うわ」
「そうよね、魔法も剣も両立させる事がどれだけ大変か分かるわ」
「あらあらそうでもないわよ、何故ならあなた達の先生はこの私だもの、意地でも強くしてあげるわ、それに魔法と剣が使えるって事は+じゃなくて×なのよ、確かにあなた達が魔法だけで、魔法学科の生徒と戦うことになれば負けるでしょうけど、貴方達には剣もあるのよ、2つをちゃんと使いこなせれば殆ど貴方達に勝るものはないわ、時代は進化していき、昔は1つしか極められないものも今では2つ3つ極められる時代なのよ、だから頑張るのよ、貴方達の世代はいずれ私達三賢王をも凌駕できるわ」
(三賢王の1人に言われるとすげぇ嬉しいな、ヴァイス先生やファミル先生も本当にいい人達が先生で心から強く思うわ)
「、、ありがとうござ、い、、ます、、もうダメ」
ブワッ
バシュン
「あぁ〜疲れるわぁ」
「私も、、限、、かい」
バシュン
「ハァハァしんどー」
「あらあら最初にしては随分ともったわね、では10分休憩した後もう一度やりますわよ」
「「えぇ〜もうちょっと休憩させて〜」」
こうして授業が終わるまでずっと魔法をとどめる練習をさせらた。そして放課後ルフトがまだ寝ているのでテレポートを使ってルフトの家に行き、ルフトのお母さんのシュリカに学校で寝ていることを伝え、テレポートで校門にまた戻る。
シュン
「ハァハァ、マジでしんどー」
「カイトーいくよー!」
「元気だなセニカ」
「当たり前じゃない、憧れの人にようやく会えるのだから」
「では行くぞ、テレポートを使う」
「先生テレポート使えるんですか?」
「いや、お前に使ってもらう」
「いやいやいや、次使ったら魔力切れで死んでしまいます」
「フッ、冗談だ、いくぞ」
「このタイミングではじめての冗談を言うもんじゃないですよ」
「何してるのカイト?早くいくよー」
「待って、ハァハァ」
そして3人は操剣術を聞きにヴァイスの家へと向かう。