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第1章 転生者




「カイト〜!起きなさーい」


「、、んぅ〜、、、おはようー」


「朝食もうできたから、はやく顔洗って早く食べなさい」


リビングの食卓の並べられた朝食を目を擦りながら確認し、洗面台へと向かう。


「、、、あぁーい」


家の外にある井戸の管からポンプを使い、洗面器に冷たい水を溜めた後、顔を洗いご飯を食べる。


「元気だね、、もう治ったの?」


「うん、昨日飲んだ薬がかなり効いたみたい」


(すげーなこの世界の薬って、てか回復魔法覚えたら病気とかは治せるのかな)


薬の効果に感嘆しながら、パンのかけらをを口に放り込む。


「結局父さん帰ってきてないけど、大丈夫なのかな」


「そうね、遅くても朝には帰ってこれるって言ってたけど、、、」


昨朝活性化した魔物を狩りに出掛けた父がまだ帰宅しておらず、よりによってこんな時にと思いながらもその気持ちは抑える。


大人にも事情がある。見た目は子供だが大人を経験済みのカイトには分かる。


「まぁいつものことだし、心配しなくて大丈夫だって」


「そうね、、、あ、エリーとアルの迎えは母さんが行って来るから、心配しないでね」


「本当に大丈夫?俺に迷惑かかってると思って遠慮してない?」


ジーっとカミラが無理してないか表情の機敏を見ていると...


「優しいねカイト〜」


ギュ〜〜〜


突如力強くカイトを抱きしめるカミラ。


「ちょっ!苦しいし、恥ずかしいって」


「いいじゃないたまには〜親子同士普通じゃない」


「そういうのは、妹達にしてあげるだけでいいよ!」


急いで残りのパンと野菜を口に放り入れ、机を立った瞬間...


コンコン


「あら?誰かしら」


「ちょっと見てくるわ」


ガチャ


「おーっす、朝からラブラブだね〜」

バタン


(やれやれ、朝から気分の悪い物を見たぜ、、)


「誰だったの?」


「ん?なんか間違い見たい」


コンコンコン

「悪かったってーカイトーー、開けてくれー」


ドアを閉められ、今度はリビングの窓に回り込んで窓を叩くルフト。


「ルフトじゃないのよ!開けてあげなさいもうっ」


先程の優しい表情から一変、腰に手を当て、不機嫌に眉間にシワを寄せるカミラを見て、嫌々扉を開けるカイト。


ガチャ


「ごめんごめん、ついついからかってみただけよもうっ!」


後半おかま口調になりながら、カイトの背中を叩くルフト。


「ルフトーいらっしゃい!」


「あ、カミラおばさん、これうちの母親から差し入れです」


そう言ってルフトは茶色の用紙で包まれた物をカミラに渡す。


「あらやだありがとうね〜ルフト、シュリカにもお礼を言っておいてね」


シュリカはルフトの母親であり、カミラの幼馴染でもある。カイトとルフトが幼馴染なのはこの2人の要因が強いのだ。


「んじゃ行ってくる母さん」


「行ってらっしゃい、気をつけるのよ〜」


「行ってきまーす、行くぞルフト」


「んじゃねおばさん!」


そして2人で学校へ向かう途中で何かを思い出すカイト...


「あ、やべ素振りとテレポートの練習すんの忘れてた」


「課題か?」


「そうそう、素振りは今からでも遅くないな」


学校が始まる前日に自作で作った木の棍棒を通学用の鞄ではなく、これまた自作の布で作った棍棒用の鞄の中から取り出し振り始めるカイト。


ブンッ ブンッ ブンッ


「ランニングもしなくちゃいけないから、走って行くぞ!」


「えぇ〜俺はいいよ」


「行くぞほら!強くなって卒業した後、一緒に2人で旅に出るんだろ?」


「いつの話だよ〜、もう〜めんどくさいなぁ」


スタッ スタッ スタッ スタッ


ブンッ ブンッ ブンッ


.....


...........




「フゥ、やっと着いた」


「ハァハァ、もう2度とお前と一緒に登校しない、誓う」


交代交代で走りながら50回振ったら、棍棒を渡してを何往復か繰り返していると学校に着いた2人。


「まぁそう言わずに明日もうち来いよ、来なかったら俺が行ってやる」


「最悪だ」


厄介な幼馴染を持ってしまったと後悔するルフト。


「お〜い2人とも〜おはよう」


「おー、セニカおはよう」


「セニカちゃーん!カイトがいじめてくるから慰めて〜」


先程まで疲れて地面に四つん這いになってた筈なのにセニカを見るなりダッシュで近付くルフト。


「朝から元気ね2人とも」


「どうだ魔法の練習?うまくやってるか?」


「私はうまくいけてるよ!初級魔法の『フレア』と『アクアバースト』を撃てるようになったけど、1日どちらも2回が限界かな」


「もうそんなとこまで行ったのか、、、早すぎるだろ」


セニカの魔法の上達速度に驚くカイト。


「一応うちのお母さんが魔法出来るから教えてもらっただけだよ」


「一応俺も『ウィンドスラッシュ』が使えるようになったぞ」


「え?待て待てお前もなのか?ちょっと待ってくれよー、俺だけ置いてけぼりじゃん」


「授業中に教えてあげるね」


「かわいそうなカイトに仕方なく教えてあげよーか?まぁ教わりたかったらこの俺をルフト様とあがm」

バゴォ


調子に乗るルフトの腹にとりあえず拳をめり込ませておく。


「ありがとうセニカ!」


そう言って倒れ込むルフトを置いて、教室に入るセニカとカイト。


ガヤガヤ


「ん?騒がしいな、どうしたんだ?」


教室に入るなり、クラスメイト全員が慌てた様子で騒ついていた。


「ねぇどうしたの?」


セニカが目の前で話している女の子に状況を聞くと。


「最近、町の外で魔物が現れたんだけど、その魔物がちょっとおかしくて、国が昨日の朝討伐隊を組んで、町の冒険者と討伐に出たんだけど、結局討伐できなくて、今日の朝みんなボロボロになって帰ってきたの、中には死人も出たみたいなの」


(死人!?)


「悪い、セニカちょっと今日具合悪いから早退するって先生に言っといてくれ!」


クラスメイトの話を聞いた途端、心臓が跳ね上がると同時に居ても立っても居られなくなったカイトはすぐさま教室から出ていった。


「え?ちょっと待ってカイトもう授業はじまっ、、、行っちゃった」


(全員がボロボロでしかも死人、、、)


(父さん、、、)


登校の素振りランニングで疲れている事など忘れる程無我夢中で走り続け、やがてスレイムに着くと、街の大門の前に人だかりができていた。人だかりをかき分け、真ん中に入る、、、


「ぐっ」


生ゴミや腐ったチーズなどとは比べ物にならないくらい、嗅いだことのない強烈な死臭が鼻を刺激する。


そう死体が倒れていた。中には死体を抱いて泣いている人もいる。死体を見て前世の両親とばあちゃんの葬式がフラッシュバックする。


(どこだ!!父さん!!!)


死体を1つ1つどかし、漁るが見つからない。


「そんな、、」


「また、、、俺の前から家族が、、、」


頭の中で色々考える。もしかしたら魔物に喰われたんじゃないかと、もしかしたら死体を回収できていないのかと、もしかしたら間違えて他の街に死体が移されたんじゃないかと、もしかしたら、、、


パシッ!


(、、落ち着け、もしかしたら無事で家に帰ったかもしれない)


そう考えるなりすぐさま家に向かって走るカイト。



バタン!


ドアを勢い良く開けるカイト。


「父さん!!!」


「お、おぅカイトか、、学校じゃなかったのかよ、、はずかsっ!!」


そこには片腕が無くなった、全身包帯で巻かれていたカイトの父ルドガーがリビングでカミラに介抱されてリビングの床に倒れ込んでいた。それを見たカイトはホッと胸を撫で下ろした。


「良かった、、」


無事を知りルドガーの目の前で膝から崩れ落ちるカイト。


「、、心配かけちまって悪りぃな、、、ありがとうなカイト」


「、、スレイムの広場の死体を漁ったけどいなくてマジで焦ったんだからな、、」


「死体なんか漁ったのか、、怖かっただろう」


そう言ってルドガーは片腕でカイトを抱きしめる。


ガバッ


力強く抱き返すカイト。


「カイト、お父さんもう限界だから離してあげなさい」


「うん、、」


鼻水で鼻が詰まりながら返事をし、ルドガーから退く。


「イテテテ」


ガチャ

「パパァァァァァ!!!!」

「アァァァァァ!!!」


勢いよく開けられたドアの方を振り返ると号泣しながらドアを開けるエリーゼとそれに続いて号泣していたアルトがルドガーに駆け寄り勢いよくダイブした。


「エリーにアル!?なんでここに?」


「グフッ!!」


「朝町がやけに騒がしくて聞いてみたら、こういう事が起きてたもんで、嫌な予感がしてのぉ」


「じぃちゃん!」


「エェェェェェェン!!!」

「アァァァァァン!!!」


ルドガーの胸元で安心したのか更に泣き出すエリーゼとアルト。


(よっぽど心配したんだろうな)


エリーゼのお気に入りの人形が玄関に転がっている。一方父の目は真っ白になっていた。


「エリーもアルも心配なのは分かるけど、トドメをさす前に離れないとパパが死んじゃうぞ」


「嫌だぁぁぁぁ!!!死んじゃいやぁぁぁぁ!」

「アァァァ!!!」


さらに号泣して、離れなくなったが、そこは母さんがうまく説得し、父さんをカイトが運び部屋で休ませた。


「それじゃあ無事だと分かった事だしワシはこれで帰ろうかのぉ」


「待ってお父さん、せめて今日だけでも泊まっていってよ、ルドの事もあるから子供達の面倒も少し見て欲しいの」


「そうだよじいちゃん、ゆっくりしていってよ、エリーゼとアルトも遊び相手が欲しいみたいだから」


「じぃじ遊んで〜!」

「アァウ!」


エリーゼとアルトがじいちゃんの足元を掴み、残る様見上げる。


「孫に言われると断れないのぉ、でも婆さんが家で1人なのも心配じゃし、、」


「それじゃあ連れてくるよ俺が」


「カイトちゃんや、任せていいかのぉ」


「当たり前だよじいちゃん、ばあちゃんの心配よりも孫を独り占めできる今を堪能してて」


「っほっほっほ、それじゃあお言葉にあまえるかのぉ」


「わーい!じぃじ行こー!」

「アァイ」


「ほんと切り替え早いな、んじゃ風呂入って着替えたら行くわ」


先程までルドガーの胸元で涙や鼻水やら、口から鼻から出せる物全部出してビシャビシャにしていたのに、もう違う事に関心がいったアルトとエリーゼ。


それから汗と血を流し風呂を出て、着替えた後カイトはクエートのお婆ちゃんの家に向かった。


徒歩で20分かけてクエートに着き、そこから8分程歩いて婆ちゃんの家に着いたカイト。


コンコン

「ばーちゃーん」


「.....」


「あれ?いないのか?」


コンコン

「.....」


窓から覗くも、誰の気配もない。


「村の広場にでも散歩しに行ったのか」


「小さい村だしすぐに見つかるだろ」


そう言って村を歩いていると、、、


*「緊急発令!!!魔物の討伐の失敗により、この村を閉鎖する!!!住民は直ちに北へと向かい避難する様に!!!」


スレイムの町の兵士が村に慌てて獣車で駆けつけるなり手に持っていた鐘を鳴らし大声で警告したのを聞き、走って状況を聞きに行った。


「あのすいません!魔物ってこの近くで出現したんですか?」


「そうだ!!君もこの村の住人か!?だったらすぐに北のスレイムという町に避難しなさい、もう直討伐隊がここに現れる!」


「は、はい!」


そして兵士はすぐさま他の所へ行って同じように警告しにいった。


(クソ!よりによってどこに行ったんだばあちゃん!!)


必死に村の中を探して聞いて回るが、誰も姿を見ていない。


(もう一度家に行ってみるか)


ガンガンガン

「ばあちゃん!!!いるのか!?」


ガンガンガン

「.....」



(クソこうなったら、、)


剣を取り出し、魔力を剣に集中して思いっきり切る。


ガンッ


「くそ、だめだ、集中しないと」


スゥー


ハァー


スゥー


ハァー


「よし」


もう一度魔力を剣に集中させる。


「今度こそ、オラァ!!!」


ドゴォーン!!


勢いよく扉が吹き飛び、家の中に入って奥を確認すると、ベッドに足がはみ出ているのが見え、すぐさまベッドへと向かう。


「ばぁちゃん!」


鼻の下に指を当てる。


スゥー


スゥー


「ったく何呑気に寝てんだよ」


「、、んぁ?、、なんだいカイトちゃんじゃないかい」


「ばあちゃん今村の警告でスレイムに逃げるように緊急発令出されてるから、ほら一緒に家に避難するよ」


「そんな大変な事が起きとるのか、悪いことをしたねそれは」


「倒れてるかと思って心配したよ」


ただ寝ていただけの婆ちゃんの体を起こし。近くにあった毛布を冷えないように婆ちゃんに掛けるカイト。


「行くよばあちゃん!」


「今いくよー」


ドスンッ!!!


破壊された入り口に立っているカイトに向かってよろよろと歩いていた婆ちゃんを見ていると、突如力強い地鳴りが聞こえ、同時に地面が縦に揺れた。


「っ!!」

(なんだ?)


ドスンッ!!!


カイトはすぐにそれが何かの足音だと気が付く。


(もしかしてもうここまで来たのか!?)


すぐさま窓のカーテンを開けて外を確認するとそこには、体長7メートルくらいの漫画やアニメでもよく見る、ここでは何という名前は分からないが、決まって漫画やアニメではこう名付けられていた『ベヒーモス』と。


四足歩行で体は漆黒の毛皮を纏い、太く捻れた2本のツノはカイトの身長とほぼ同じ太さと長さで、爪も鋭く尖っていて、鞭の様に撓っている尻尾も見えた。そして喉を静かに鳴らしながら、歪さを感じさせる黒紫色に光る目と目が合いそうになった所で伏せて身を即座に隠すカイト。


(初めて魔物を見たけど、、いつも父さんはあんなのを相手に?)


ちょこんと窓から再び魔物を覗き、こっちを見ていない事を確認すると、すぐさま婆ちゃんの方に忍び足で向かい、口を押さえ小声で魔物が出た事を知らせる。少し驚いた様子を見せたが、すぐに落ち着いた。


「今は絶対に外に出ない方がいいから一緒に隠れよう」


静かに頭を縦に振り、婆ちゃんは寝室のベッドの下へと身を隠し、カイトは窓から魔物の様子を引き続き観察する。


ドスン ドスン ドスン


「グルゥゥゥ」


魔物は現在婆ちゃんの向かいの家の前を歩いている。そして突然


「グルゥゥゥアアアア!!!」

グシャー!!


鼓膜に響く程大きい咆哮を噴出し、いきなり向かいの家に突進を繰り出し破壊した。すると破壊された家の中から1人の住人が悲鳴をあげて出てきた。


*「ぎゃああああ」


「ガァァァァァ!!!」

グシャッ


(やばいやばいやばいやばい、初めて人が死んだ所を見た)


(どうしてバレた!?嗅覚か!?)


(それともたまたまか?いや、見つけた時、魔物が来た方向には家はたくさんあったし、何せ壊れていない)


(わかっててやったのか?だとしたら俺達も絶対バレる、やばいどうしたらいいんだ)


「カイトちゃんや、何かあったらあたしだけ置いて逃げるんじゃ」


ベッドの下からカイトの様子を見ていた婆ちゃんが怯えながら逃げる手立てを考えていたカイトに小さい声で話しかける。


「そんな事は絶対にしないから」


「それだったらばあちゃんが囮になってその間にカイトちゃんだけでも、、、」


「ばあちゃん?俺は絶対にばあちゃんを見捨てないよ、家族は誰一人絶対に見捨てないからもうその話はやめて」


(絶対家族は誰も見捨てない、そう誓ったんだ、諦めねーぞ)


「ばあちゃん聞いて、あの魔物は今はまだだけど、このままだと俺たちの場所も見つけられる。だから隠れても無駄だから、遮蔽物に隠れながら逃げよう」


「ありがとうや、カイトちゃん」


そう言って婆ちゃんの手を取ると、少しだけ震えてた。


「絶対俺が守ってあげるから安心してね」


無理に笑顔を作り、婆ちゃんを少しでも安心させようと取り繕うカイト。


ガシャーン!!!


*「たすけでぇぼふぅっ」


グチャ グチャ バリッ グチャ ボリッ


(クソ野郎!人喰ってんじゃねーか、、、でも今がチャンスだ)


骨を貪り食う音が聞こえ、別の事を考える様にして気持ちを紛らわせ、人間を捕食して動いていない今がチャンスだと思うカイト。


「ばあちゃん今だ、靴を脱いで、手を離しちゃダメだよ?」


コク


静かに頷く婆ちゃん。


魔物が背を向けて食べてるのを見て、音を立てないように家を出る。それから家の裏に回り、取り敢えず家からは出ることに成功する。


「あとはゆっくり音を立てないように、ゆっくり離れるよ」


ソーッと一歩ずつ慎重に進んでいく。魔物はまだ喰い続けている。


ジャリッ


自分たちと違う方向から足音がした、右を見ると婆ちゃんの隣人のおじさんだった。


(婆ちゃんは分かるが、なんでこんなに避難してない人がいるんだよ!)


隣人に靴を脱ぐように目配せし、それを理解した隣人が靴を脱ぎ出す。脱ぎ終わった後、今度は一緒に歩き出す。


(そういえばテレポートの魔法のコツを教えてもらったな)


突如頭に前日にコツだけ聞いた魔法を思い出すカイト。


(でも、まだ練習してないし、失敗したらどこに行くか分からない、やめておこう)


ドスンッ


食事を終えた魔物が再び歩き始める。


ドスンッ


ガクガクガク


(かなり震えている、、落ち着いてもらわないと何をしでかすかわかんない)


震えている隣人を見て、小声で話しかけるカイト。


「魔物はこちらに気付いてないのでこのまま落ち着いて音を立てなければ絶対に逃げられます」


「あ、あぁ」


隣人をひとまず落ち着かせ、再び足を進める。


ドスンッ


ドスンッ


ドスンッ


ガシャン!!!


*「キャアアアア!!!アナタァァァァ!!」


「っ!!!」


隣人のおじさんが声ぬ反応した、しかもその表情はかなり青ざめていた。


「ダニカ、、」


「今助けに行ったら俺たちまで巻き添えを食らう、気持ちは分かるが見捨t」


「ダニカァァァァァァ!!!」


「クソっ!!!婆ちゃん俺に掴んだまま動かないでね!」


何も言わずにカイトの腕にしがみつく婆ちゃん。


「ガァァァァァ!!!!」


すると叫び出した隣人の方に魔物が走ってきた。


(このままだと全滅だ、試すしかない)


(自分の家をイメージして飛ぶ、自分の家をイメージ)


魔力を集中させる。すると隣人に向かって走って来た魔物が突如方向を変え、こちらに向かって来た。


「カイトちゃん、もうあたしを見捨てて一人でも」


「掴んでてね、ばあちゃん」


「テレポート!!!」


バシュン



「クソッ!!」


結果は失敗した。


微量な魔力が体から抜けていく感覚だけが残り、悔しがる暇もなく魔物は此方に向かってきている。


(でもあの魔物、俺が魔力を溜めた瞬間にこっちに来たよな)


(一か八かだ)


「ばあちゃん、今からおもいっきり、スレイムにある家に走って!絶対戻ってきたらダメだからな!!」


「で、でもカイトちゃん」


「大丈夫!絶対なんとかするから!もし帰れなかったら、俺の家族全員に俺はみんなの家族でいれて、本当に幸せだったって伝えてね!さぁ!早く走って!」


そしてカイトは婆ちゃんと逆の方に全速力で魔力を右手に放ちながら逃げた。


すると魔物は呼応する様にカイトに向かって走ってきた。


(今ので確実になった、あの魔物は魔力を感知していたのか)


ドスンドスンドスン


(クソ、にしても早すぎる、色々考えてた事今試すしかないな!)


魔力を足に集中させ、蹴る力を強くするイメージをする。


(ブーストのイメージだ、、、ブースト、、ブースト、、、足からブースト)


すると、地面を蹴るたびに、前に進む距離が増えた。


(一応成功した!でもやっぱり俺の速さが1とすると、向こうが2か3だな)


実際カイトのスピードも魔法による効果でかなり速くなっている。時速30キロは出ている。前世の乗り物でいうとロードバイクぐらいの速さだ。


このままでは追いつかれると思ったカイトは森の中に入っていった。木の間などをわざとジグザグに走り距離を離そうと試みるが、相手は木を唯の突進で粉砕して行きながら走ってくるため大した距離稼ぎにはなっていない。


(昔、やっていた鬼ごっこのフェイントをこの大きさの相手にやったら小回りも効かないからやってみるか)


そして走るのをやめて魔物の方を向く。


(やべぇ近くで見るとかなりデカイ!)


そして40mまで接近してきた。


(足がすくんじまってやがる、クソッ!!)


残り20m


(動けっ!頼むから動いてくれ!)


目の前まで魔物が接近した。


「動けぇぇええええ!!」


グシャーン!!!!


鋭利に鋭く尖っている角がカイトの体を貫きかけた瞬間、右に大きく跳んで回避し、カイトの背後にあった巨木が角で突かれ粉砕した。


「危なかったーマジで」


「グルルルルル」


ゆっくりと近づいてくる魔物。


(どうくる?もう魔力も底を尽きつつある)


「グアァァァ!!!」


魔物が突進してくる、それを見たカイトは魔力を右手に集中させる。


(ライトをイメージ、、ライト、ライトライト」


「喰らえぇぇぇぇチカチカフラーーッシュ!!!」


ピカピカピカピカ


突進してきた魔物の目にライトをチカチカさせると、、、


「グルゥア!!」


「危なーい!!!」


ドスンッ


バキィ


視力を奪われた魔物はそのまま勢いよく倒れた。


「いてて、間一髪だったぜ、ん?」


メキメキメキ


回避した物の、こけて勢いよく魔物とぶつかった4メートル近くある木が、カイトに向かって音を立てながら倒れてくる。


「うわーーっ!!」

ドスンッ


再び立ち上がり横に大きく回避するが...


「痛ってぇぇぇぇ!!!」


なんと倒れてきた木の回避にほんの僅か間に合わず、カイトの右足が下敷きになってしまった。


(やばい!なんとかしなきゃ)


(魔力を腕全体に、、、イメージは怪力、、、)


しかしビクともしない。


「グルルルル」


そしてタイミング悪く倒れた魔物が起き上がった。少し目をチカチカさせてよろけているが、怪力をイメージして使った魔力によってカイトをしっかりと捕捉している。


(クソッ、クソッ、クソッ!)


全くビクともしない木、必死に持ち上げるのを諦めて、最大出力で光を魔物に浴びせるが、動けなくなったカイトを見て、魔力を辿りながらゆっくりと近寄る。


「グルルルル」


(やばい、死ぬ)


目の前まで近づく魔物、そして前足をあげ、爪立て。目を閉じるカイト


ブワンッ


(、、、、っ!!)


ゾクッ


突如全身を襲う謎の圧力、感覚、プレッシャーに、恐怖を感じ体を震わせるカイト。


...


振り上げた前足を下ろす気配がない為ほんの僅かに目を開けてみると。


目の前の魔物が左の方向を見てカイトと同様体を震わせていた。


そしてカイトも同様に魔物が見ている方を見てみると。


全身から冷や汗が勝手に流れ始め、全身が警笛を鳴らした。


(っなん、だっ!?)



母さんと遊んでいる。

父さんが母さんにいじめられている。

ずっと家でゲームをしている。

ヤンキーにリンチされて殺されている。

妹が泣いている。


母さんが産んでくれている

父さんが喜んで泣いている

じいちゃんとばあちゃんに懐いている

姉ちゃんにいじめられて泣いている

ルフトと初めて遊んでいる

妹ができて喜んでいる

弟が生まれて妹と一緒に喜んでいる

セニカに出会って少し心臓が弾む


走馬灯を見た。


魔物に殺されかけたわけではない。ただそこに立っている者を見ただけで、勝手に脳が死ぬと思い込み走馬灯を見た。


今まで何に対しても恐怖心を抱いたことはないのに、この者に対しては恐怖どころのレベルではない感覚を感じるカイト。


しかし、この者から目を離すとどうなるか分からない、だから離せない、離した瞬間、瞬きした瞬間、自分はもう死んでいるかもしれない。


(なんだ?人なのか?見ているだけで負の感情に押し込まれそうな、、)


黒い布を1枚全身に羽織っており、顔はなぜかいくら目を凝らしても見えない。


*「、、光が見えたから来たが、魔物と子供か」


言葉を喋った事によってカイトの中で、目の前のソレは人間だと言うことがわかり、それだけで恐怖心はほんの僅かに減少し、口を開いた。


「あ、あの、助けてもらえないでしょうか、、」


見ただけで走馬灯を見せられる程の恐怖心を感じさせられたにも関わらず、死にたく無い一心から来る自身の防衛本能から出た言葉に、自分でも一瞬だけ凄いと感心する。


「グルルルル」


*「お前、、、転生者か?何処から来た?」


一瞥されたほんの一瞬で自身の正体を見透かされたカイトは、バレてまずいと言うより何故バレたかと言う方に疑問を感じる。


「転生者って、、、もしかしてあなたもですか?」


*「質問に答えろ、どこから来た?」


「に、日本という所ですけど、あ!あの!地球です!」


*「、、またはずれか」


”また“と言うことに自身の他にも同じ境遇の人間と会っている可能性がここで生まれるも、そんな事より今は自分の身を案じる事が先だと思い


「あのすいません、、助けてもらえないでしょうか、、せめてこの木だけでも退けて貰えると、、なんならこの魔物もやってくれても構わないですけど、、、」


後半もごもごしながら喋る。


*「そいつはとっくに死んでいる」


前世では聞き慣れた台詞にまたも恐怖心が僅かに払われるも、目の前でピンピンしながら低く喉を鳴らしている魔物を見て、何の冗談かと一瞬怒りを感じそうになるも、恐怖心が圧倒的に怒りの感情をねじ伏せた。


「グルルルル」


「あのー、、でもずっとー、吠えてますけど、、、」


「グルゥア!!!」


すると魔物は突然その者に飛びかかった。


「危ないっ!!」


飛びかかった魔物は空中で一瞬留まり、次の瞬間そのまま地面に倒れた。


ドサッ


(え?何今の?)


ズキッ


気がつくとのしかかっていた木も粉々になっていき、足に痛みが走る。


「いててて、ありがとうございます、、」


そして何も言わずに何処かへ立ち去ろうとするその者に


「あの!すいま、、やべ、、急に意識が、、、」

ドサッ


せめて名前だけでも聞こうとしたカイトだったが、魔力の過剰消費で意識を失い、森の中で倒れた。



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