第1章 初めての剣と魔法
タタタタタッ
ガチャ
「エェェェイッ」
ドスン
扉を開けるなり、駆け足で走って来た後、カイトのベッドにダイブするエリーゼとアルト。
ボフッ!
「あれー?にーには」
「いーいあ?」
いつも感じる膨らみと感触を感じる事が出来ない二人は布団を退かすと、そこには誰もいなかった。
「たぁっ!!」
ドスン
「この野郎っ!そうなんどもおんなじ手が通用するもんか、フッフッフ」
「ぶー」
「うー」
背後から飛んできたカイトにベッドに押しつぶされるも、何故か生意気に膨れっ面になった2人の脇腹に手を添えて一気にこねくり回す。
「コチョコチョコチョ〜」
「アハハ、にーにくすぐったいよー」
「キャッキャッ」
「ほれほれほれ〜これからちゃんと起こすって約束できるか〜?」
「す、する!だっだから、キャハハ、やめてーー」
「アー!」
「よし分かればいいんだ分かれば」
今日はしっかりと反撃し、二度とあんな起こし方をさせないように誓わせた後、朝食を食べにリビングへと向かう。
「あらあら、朝から元気ね」
「おはよう母さん」
「ママ〜おはよう!」
「アー!」
2人を抱え上げてリビングに入るカイトを見て、洗い物をしながら何やら熱った顔で微笑むカミラ。
「ご飯できてるわよ、冷めないうちに食べなさい」
「母さんなんか今日調子悪いから、食べ終わったらお片づけ任せていいかしら」
カミラにそう言われ、よくよく顔を見てみると化粧品という高価な物無い筈なのにチークを塗った様に頬が紅潮していた為、近づき額に手を添える。
「うん!ママは休んでていいよ〜!」
「大丈夫?熱はあるの?」
「少し横なれば大丈夫だと思うわ、後エリーを、学校に、それとアルを」
「婆ちゃんの家にだろ?分かってるからもう休んでて、帰りしに薬買ってくるからさ」
「ありがとう、ごめんね迷惑かけちゃって」
「迷惑じゃないから、ほらたまには休んでていいから」
そう言ってカミラをベッドまで支えて寝転ばせた後、食事を急いで取りエリーゼとアルトを連れて家から出る。
「今日は、ママがしんどいから、ばぁばの家でいい子にして泊まるんだぞ2人とも?」
「はぁーい」
「アァーイ」
まずはエリーゼを学校まで連れて行き、今日は迎えがいつもより遅くなる事伝えた後、学校を後にし、アルトをスレイムより南に位置する村であるクエートという場所にある母方の婆ちゃんの家に連れて行くカイト。
コンコン
「ばーちゃん!いるー?」
ガチャ
「おやおや、どちら様でいらっしゃいますでしょうか?」
「何ボケたフリしてんだよじーちゃん」
「ホッホ、婆ちゃんは今リビングで寛いでおるよ」
「アー」
「おぉ!アルちゃんじゃないか!よしよし可愛いのぉ」
アルトを見るなりカイトの胸元から引き剥がして顔をアルトの頭に埋める爺ちゃん。
「母さんが今日具合悪いみたいだから、一日中預かってもらえないかな?」
「そうかそうか、あまり無理しない様と言っておいてくれ、それと儂らはいつでも孫は歓迎じゃ、ところでエリーちゃんは見当たらんが、、」
「さっき学校まで、送ってきて、また夕方迎えに来た後、連れてくるよ」
「忙しいのぉカイちゃん、迎えに行くのは儂と婆さんでいくさかい、任せなさい」
「いいってじーちゃん、もう結構な歳なんだし、あんまり動かれて身体壊したりでもしたら母さんに怒られるし、俺が連れてくるよ!それじゃあもうそろそろ登校の時間だから、行くね!婆ちゃんによろしく言っといて〜」
「おぉ、ちょっとお菓子でもたべてい、、もう行ってしもうた」
「アァ〜」
残された可愛い孫を見て、腰のダメージを覚悟するお爺ちゃんであった。
「よしよし、今日は爺ちゃんと遊ぼうかのう」
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ダッダッダッダッ
「ハァハァハァ」
ジリリリリリッ
バタン
「フゥ、間に合ったー」
なんとかチャイムのギリギリに教室に着く事ができたカイト。
「おはよう、カイトくん、それじゃあみんな席についてー!」
教室に入るなり、地面に倒れ込むカイト。
「どうしたの?そんなギリギリに来て」
「ハァハァ、ちょっと、、兄弟を、、、預けに、、、ったら、、ギリギリになったぁ、、」
負荷魔法2日目、そのせいで重力が2倍あるのでは無いかと感じながら、ギリギリになってしまったのだ。
「た、大変だねカイトも」
「それじゃあみんな、着替えて修練場に向かう準備をしなさーい、今日は初めての訓練の日だからみんな気を引き締めるように!」
支給された運動着に着替え終わった後、クラスの全員で修練場に向かう。
修練場は各学科の校舎裏にある扉から行ける運動場を囲む建物群の所にあり。校舎裏の扉を開けて広がる広大な運動場とその建物群を見たカイトは改めてこの学校の広さに驚く。
ジルはそのまま校舎裏から見て右側にある建物物群の手前から2つ目にある建物の前に立った。
「着いたわ、ここがあなた達がこれから使っていく第2修練場で、午前の前半にある座学が終われば、着替えてこの修練場に時間通り来るのよ?」
体育館2つ分の大きさもある修練場の中に入ると、入り口入ってすぐの所に木人や、練習用の木剣などが色々置かれてある。
そして置かれていた木剣の横にあるベンチに座り込んでいた男性がこちらに気が付き、歩いて来た。
*「君たちが新入生か、俺の名前はヴァイス、今日から君たちの剣術指導を担当する者だ」
灰色の短髪に、目尻にある傷口、そしてピチピチの黒いタンクトップからはみ出る筋肉、そしれ見ただけで人を殺せる様な鋭い目つきと風格にカイトは少し気圧された。
「それではヴァイス先生、後の事は頼みました」
*「あぁ、それでは場内を案内する着いてこい」
そう言ってジルは修練場を出ていき、残りをヴァイスに任せた。
ざわざわ
「ヴァイスってあのエリュードの傭兵ヴァイス?」
「確か昔に傭兵やめて教職を取ったって噂で流れていたがまさかこんなとこで、、、」
「悪い補足情報頼むわセニカ」
1つも知らない噂話が飛んできたので補足情報をセニカに耳打ちしてもらう。
「だいたいみんなが言ってる通りね、傭兵ヴァイス、かつて隣国のシグニカ王国とエリュード王国の間で戦争があった時に、戦いの最前線で数々の武勲を上げ、王国から国王側近の精鋭に推薦されたのに、その申し出を断った事で有名な人よ」
「そんな人が何でこんなとこに?」
「分からないわ、でも凄い人に剣術を教えて貰えるのは確かよ!」
セニカの嬉々とした表情と、補足情報で目の前の人物がいかに凄いかが分かったカイト。
「いいね!そういうの!そう!これが出会いってやつよ!そして俺はこれから更に強くなるだろう!」
天に向かってガッツポーズするカイトを横目に鼻で笑うアルベルト。
「フフッ、間抜けな奴め」
「あぁん?何か言ったか?バカ貴族?」
「ち、ちょっとやめなよ2人とも」
「よし、それでは、今まで剣術習ってきた奴はこっちで、習った事ない奴はこっちにこい」
案内が終わり、舗装されていない砂場でヴァイスが生徒達を整列させて、グループ毎に別れさせた。
....
........
(嘘だろ?)
「よし、習った事ない奴は1人だけか」
結果カイトだけが習った事がない側に立っていた。
「なんで、俺だけ、、、」
クスクス
クラスから聞こえる小さな笑い声に、少し恥ずかしくなり俯くカイト。
「あいつ、剣も使えないのにこんなとこに、、プフッ」
そんな声を尻目に、ヴァイスがカイトに近付き肩に手を置いた。
「安心しろ、俺が手取り足取り一から教えてやる」
「っ!!」
(優しい!、こういうのは決まって1人で素振りの練習とかさせられるとかって思ってた!)
(それに俺の知ってる異世界の傭兵のイメージってもっとこう、いかついイメージがあったんだけど、この人から感じる雰囲気にはそういう感じは微塵も感じないな)
「それじゃ、他の奴は俺のアシスタントの前で素振りを見せてもらう!」
「お前は、俺についてこい」
「はい!」
そしてクラスのみんなが練習している広間の端っこで木剣を渡される。
「よしじゃあ、まずは素振りからみせてもらおう」
やっぱり素振りかぁと思いつつ、言われたままに素振りをしてみる。
ブォッン
しかし負荷魔法のせいもあって剣先を思うように止められない
「ん?お前から何かおかしな魔力を感じるな」
「え?」
(もしかして、、、俺の秘められた才能!?)
ヴァイスがカイトの手に目がいった瞬間、腕を出させられる。
「ちょっと手を見せてみろ」
「あ、はい」
両手を広げて、先生に見せると、、
「これでは授業の邪魔になるな、少し痛いが我慢しろ」
「え?何をすrっ!!」
カイトの手から何かを感じたヴァイスは、カイトの手から文字の羅列を引きずりだし、握りつぶした。
「いってぇぇぇえ!!!」
「男が叫ぶな、みっともない」
やれやれといった様子でカイトを見下げるヴァイス。
「だってちょっとって言ったじゃないっすか?」
「どうだ?体が軽くなっただろ?」
「ん?おぉ!本当だ!俺の身体ってこんな軽かったっけな」
ほんの少しだけ、罰として受けた魔法を勝手にこんな事して大丈夫なのかと心配したが、それ以上に体が軽いことにテンションが上がり忘れてしまう。
「よし取り敢えずもう一度素振りしてみろ」
そうして素振りを5回くらいした後、、
「だいたい分かった、次にお前の戦闘能力を見せてもらう、俺から一本取ってみろ」
「え?でも先生剣が、、」
剣を持っていないヴァイスに対し、疑問に思うカイト。
「いいから打ち込んでこい、どんな手を使っても構わない、一発当てればお前の勝ちだ」
「は、はい」
(取り敢えず不意打ちでもいいから、一発当てられればいいんだろ?)
木剣を後ろに構え、手を少し前に突き出し、姿勢を前かがみにし、低くする。アニメや漫画で見た構えをそのままやってみた。
一方ヴァイスは仁王立ちで動かない。なので少しずつ慎重に近づき、振れば当たる距離まで近づいたが何もしてこない、なのでこちらから素早く先に仕掛ける。
ノーモーションで右から剣を薙ぎ払うと、先生は左手を出し、剣を止めようとしたところを、体を右に回転させ、左からの攻撃に切り替える、それも読まれていたのか、しゃがんで躱された。
スッ!
パシッ
すぐさま左足で蹴りを入れるがガードされ、少し距離を取るついでに靴を少し脱ぎ、蹴る勢いで靴を飛ばしたが軽く避けたところに剣で突き刺す。
パシッ!
がしかし片手で白刃どりをされる。
(取るって分かってたぜ!)
白刃どりで剣を取った瞬間、手を離して懐に潜り一発拳を入れようとしたが、もう片方の手で止められる。すぐさま止めた手にもう片方の腕を回し、飛び込んで腕十字を取りに行こうとしたが、、、
「何をしてる?」
「関節技って言って、、、」
力の差がありすぎるため片腕だけで体全体を持ち上げられるカイト。
「こ、降参っす、、」
「まぁ最初はこんなもんか」
可もなく不可もなくといった感じの表情のヴァイス。手合わせして分かったが、先生はめちゃくちゃ強かった、なにせ拳掴まれた時は、岩の中に手がハマったみたいに抜けれる気がしなかったし、空中で関節を取りに行こうとした時なんかは、自分がただ巨木にぶら下がってるのかと思ったくらいだ。やはりこの世界の強者というのは向こうの世界の強者とは次元が違う。
「取り敢えず最初は、素振りで自分の胸辺りでピタリと剣先を止めれるようにするのがお前の課題だ、今日は素振り50本を終えたら、10分休憩し、それを授業の終わりまで続けるんだ。それとお前の今後の課題をまとめた表を、授業の終わりに渡すから後で取りに来るように」
(アドバイスもちゃんと教えてくれて、優しいな)
そしてカイトは素振りを50本やり続けた。広場の真ん中ではみんな俺と同じように素振りをしている。素振りをしていて分かるが、やっぱり習ったことのある奴の素振りはとても綺麗だった。みんなちゃんと自分の思った所に剣先をしっかりと止められている。そして素振りをしていると生徒の前で先生はノートを取っている。
こうしてこの日の授業の終わりを知らせるチャイムが鳴り、各自がヴァイスの元へと集合する。
「よし!今日の授業はここまでだ!各自後で自分のデータを取りに来るように」
「「「はい!」」」
「ハァハァハァ、しんどーーー」
「お疲れ様カイト」
疲れのあまり、地面にそのまま寝転ぶカイト、そこへセニカが透明の容器に汲んできた水をカイトに持ってきた。
「おぉありがとう!マジで助かる」
ゴクゴクゴク
「プハァー!生き返るわー!」
「何本素振りしたの?」
「んー覚えてないな、550あたりでもう数える余裕なくなったわ」
「えー?そんなにやったの?私なんて、1日100本が限界なのに、すごいねカイト」
「まぁ俺はみんなより遅れてる分頑張らねーといけないからな、それよりそっちはどうだった?」
「まぁ1日目だったから、素振りと軽い模擬試合をしたかなー」
「試合かー、誰が一番強かったんだ」
「私と僅差でアルベルトくんが強かったよ」
「へぇーあいつやっぱそんなに強かったのか」
改めてアルベルトの強さに関心をしていると、横からアルベルトが通り過ぎていった。
「当たり前だ、素振りしかやってない奴には私の強さなんか分からないだろうがな」
「ヘッ、言ってろ、その内お前が手も足も出ないくらい強くなってやるよ」
「素振りだけで強くなるのか?それは楽しみだなハッハッハッハ」
何とも言えない程の腹立たしさを感じるも、事実今のカイトではアルベルトに手も足もでない程の実力差がある為何も言い返さないカイト。
「あいつ絶対ろくな死に方しないぞ」
「まぁまぁ、焦らずじっくり強くなろ」
それから教室に帰る前にヴァイスからトレーニングメニューと評価を簡単に纏めた表をもらったカイト。
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名前: カイト
年齢: 13
身長: 161
体重: 54
力: 28/100
技: 11/100
総合点: 39
流派: なし
闘気: なし
課題: 筋肉をつけ、素振りで剣先を任意の場所で止められるように。支給された剣を使って今日と同じ様に素振りを50回、10セット。時間を見つけて、1時間のランニング、柔軟も時間があればするように。筋肉のトレーニングは、明日作ってくる負荷魔法でしてもらう。戦いのセンスはあるが実力が伴っていない、素質はあるので精進するように。
=====================
「能力ひっく!」
「、、だ、大丈夫だよ!最初はこんなもんだよみんな!」
「ま、まぁ素質ありの判断を貰ったから、だ、大丈夫だし?それよりこの闘気って何だ?」
「闘気っていうのは、説明が難しいんだけど、その人の体に纏っている魔力とは違った力で、主に攻撃から身を守ってくれるの」
「なるほど、俺はこの欄がなしってなっているけど、やっぱ才能ないんだな」
「それに関してはまだ誰も持っていないの」
「まだ?何で?」
「闘気っていうのはそう簡単に纏えるものじゃないの、死線をくぐり抜けた人や、自分の体に危機を感じた時に始めて現れるの」
「まぁ私たち1年生で使える人は絶対いないよ」
「あぁー、じゃー絶対無理だな、セニカにもできないことは俺には無理だわ、それよりセニカはどんな感じなんだ?」
=====================
名前: セニカ・ルーストリア
年齢: 13
身長: 152
体重: (指で力強く抑えられて見えない)
力: 38/100
技: 74/100
総合点: 112
流派: オルフォルト流
闘気: なし
課題: 技術はあるが、まだまだ技が荒い点や決め手となる技がない、もう少し筋肉をつけて脂(指が邪魔で見えない)
=====================
「負けた、、それも一桁も違う、、」
(それも年下の女の子に、、、)
(もういいや、がっかりするのは)
「最後なんて書いてあるんだ?それにオルフォルト流って?」
「さ、最後は大したこと書いてないから気にしないで!、、オルフォルト流っていうのは、剣聖オルフォルトが後世に残した独自の流派で、今では大陸のほとんどの剣士がこの流派の使い手なの」
「なるほど、ちょうど明日の授業は流派についてだったな、興味あるし聞いとくか」
「そうね、てかカイトは午後の第2専は何にしたの?」
「魔法にした、セニカは?」
「私も魔法!」
「そうか!なら一応後で友達と合致するから一緒に受けないか?」
「え?カイトって友達いたの??」
「ちょっ、当たり前じゃねーか」
「へぇー、人と付き合うの避けてる雰囲気してるからてっきりいないのかと思ったよ」
前世でついた人と接することを避ける癖がまだ少し染み付いているカイト。事実中等学園や初等学園ではルフト以外の生徒を殆ど覚えていないカイトだった。
「うるせぇよ、つってもそいつとセニカくらいだけどな」
「あたしもカイトの数少ない友達かー、なんかやだー」
「なんでだよ!最近ちょくちょく俺を弄りやがって!」
ボクシングの構えを取り、軽いフットワークで、セニカを翻弄しながら脇腹を軽く小突くカイト。
「アッハハ、ごめんごめん、なんか凹んでんのみて、つい」
セニカとは日に日に距離も縮まり仲良くなってきた。
(友達ってこんな感じで接するんだな、、ルフトは幼馴染だからどうやって仲良くなったのかは自分でもよく分からないけど、これが友達か、、)
そしてカイトとセニカは着替えたあと、剣術科の校舎の左に位置する魔法科の校舎にある教室へと向かう。
「おーいカイトー!」
「おっきたきた」
「ほほぅ、女の子連れて授業とは、なかなかやるではないか〜」
息を荒げながら汚れた服のまま近づいてきたルフト。
「うるせぇよ、てかなんでそんなボロボロなんだ?」
「俺らのとこの先生がこれまた厳しくてよぉ、もうクタクタよ」
「へぇー、そんなことより紹介するわ、この子は俺と同じ剣術専攻のセニカ・ルーストリアで、昨日帰る時にお前が言ってた子だ」
「よろしくね!ルフトだっけ?カイトからは聞いてるよ」
「かっ、可愛い!!好きです!一目惚れです!付き合ってください!」
「ごめんなさい!」
フットワークの速さに反応が遅れるカイト。
「ちょっ、おい、いきなり何してんだお前?」
「1つ教えてやるカイト、こういう可愛い女の子はいつ誰に持って行かれるかわからない、だからお前も早めにやる事はやるんだぞ?」
こっそりカイトに耳打ちで恋愛の基本を教えるルフトにジト目で見返すカイト。
「にしても出会ってすぐに告白しねーだろ、断れたら立ち直れねーよ俺だったら」
「安心しろ、振られたのは今までで、100はゆうに越すぜ?」
「すげーなお前、心に闘気でも纏ってんのか?」
「陶器?」
「もういい、こんな馬鹿ほっといて教室入るぞセニカ」
「フフッ面白い人だね、カイトと性格真逆」
ガラガラガラ
ガヤガヤ
教室に入ると、かなりの数の生徒で埋め尽くされていた。
「うわー、いっぱいいるねー」
「あっちの席ちょうど3つ空いてるな」
「取られない内に早く〜」
「お、おい!押すんじゃねーよルフト」
「2人共〜、早くしないと取られちゃうよ〜」
セニカが先に行って席を取り、何とかまとめて3人で座る事ができ、ホッとする。
「ふぅ、なんとか座れたな」
「先生どんな人なんだろ?可愛いかな?」
「聞いた話では凄腕の魔道士みたい」
「やっぱ凄い学校なんだな〜改めて受かってよかったよ」
「ねぇねぇもし可愛かったら、前の席座っちゃわない?」
「この学園は大陸内でも、かなりの名門に入るみたいだしね」
「一番凄い学校になると、どんな先生が教えてくれんだろうな?」
「てかさー!この学校ほんと可愛い子多いよな!大陸内でもかなりの可愛い子が入学してるんじゃない?」
「それはもう、普通は雇えないような歴史に名が残るような人たちじゃないの?」
「ヴァイス先生でもあんくらい強いのに更に上がいるのかよ」
「あ、みてみて!あの赤髪の女の子!可愛いなぁ〜」
「あ、でもヴァイス先生は名を残せるかは分からないけど、現役当時の傭兵の中では最強だったみたいだよ?」
「マジか!?それは嬉しいな!ますますやる気が上がってくるぜ!そうだ、明日闘気について教えてもらお!」
無視をされてもめげないルフト。
ジリリリリリリッ
「あ、先生が来るよ」
ガラガラガラ
*「今日から貴方達の魔法の授業を受け持つ事になりました、ファミルよ、よろしくね」
そう言って教室に入ってきたのは、艶のあるストレートの白い髪をしたボンキュボンの女性が入ってきた。
「セニカ、情報を頼む」
「、、、、」
「どうした?いつもの解説を」
「、、、だれ?」
「ん?有名凄腕の魔道士なんだろ?」
「ごめん私知らないわ」
「えーーー、凄い人じゃ無いのかよ」
「どストライクだ!体も顔も!当たりだ!」
すると、生徒が次々に立ち上がり、教室から出て行く。
「おいおい、なんでみんな出て行くんだよ、授業中だろ?」
「あー、まぁこの学園ではよくある事だから気にしない方がいいよ」
「こんな事よく起きたらダメだろ!?」
「あ〜赤髪の子が出て行っちゃった〜」
「この学園に来てる生徒の殆どが貴族の人間だから、有名な人以外の授業はみんなこうやって帰っちゃうの、時間の無駄だって言って」
「失礼な奴らだな〜折角の授業料がもったいねーじゃねーか」
結局100人くらい収まるこの教室には、カイトら3人組だけになった。
「やばいだろこれ」
「私も初めて見るわこんなの」
「コホンッ、、全く失礼な人たちね〜、貴方達お名前は?」
帰っていった生徒達を見て、一瞬キョトンとしたファミルだが、浮き彫りになっていたカイト達を見て、名前を伺うファミル。
「セニカです」
「カイトです」
「貴方のことが好きです」
「うっふふ、あらあら可愛い子達ね、まぁいいわ、それじゃあ授業を始めようかしら、3人になったし、色々面倒な手間は省いて行くわ。ではまず貴方達の魔力量と適正を見せてもらおうかしら、私の前に来てちょうだい」
滑らかで耳を愛撫する様な艶気を含んだ声に、導かれる様にカイトたちは先生の前に立った。
「ふむふむ、悪く無いわね、特にカイトくんからは珍しい色の魔力が見えるわ」
「お、俺ですか?」
(お、やったぜ!)
「そうよ、私はこの魔力眼で見た者の魔力量と適性魔法の色を見れるの、そもそも普通は四大元素の4色と無属性の灰色しか普通は見れないけど、カイト君からは白と灰色つまり無と光の色が見えるわ」
「セニカちゃんは、水の色と火の赤が見えるわ、そこの坊やは、、、おかしいわ、、、見えないわね」
「光と無か、、、」
(やったぁぁぁぁぁ!ここに来てSRを引いたぞぉぉぉ!光属性とか最高じゃねーか!でも待てよ?無属性は普通なのか?)
小さい声で呟くも、内心はガチャで大当たりを引いた気分で、お祭り状態のカイト。
「すごいねカイト!」
「え、俺は、、、何も見えない、、、」
そんなカイトの傍で今にも干からびて、そのまま風に流されそうになるルフトに、ファミルは悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「嘘よ、貴方からはちゃんと風の色が見えたわ」
「やめてくださいよぉ〜本気で凹んだじゃないですかぁ〜」
「変なことばっか言ってるから悪りぃんだよ、ところで先生、光属性と無属性って何ができるんですか?」
「一応、光魔法は回復魔法や浄化魔法が主だけど、それ以外にも攻撃には魔族特攻や闇属性の魔法を半減できたりするわ、無属性は、日常生活でとても便利な魔法があるくらいね、収納魔法や移動魔法、それと刻印も使えるようになるわ」
「最高じゃねーか」
「あらあら、普通は攻撃魔法の適正がなかったら落ち込む人が多いのに、無属性で喜ぶのは珍しいわね」
「だってすげぇ便利じゃないですか、移動もできて、重たいものも持たなくていいし、たしかに、光属性は攻撃があまりないのがショックだけど、これはこれで便利で嬉しいです」
「四大元素魔法と無属性魔法は適正が無くても使えるけど、光魔法と闇魔法は適正がないとロジックを理解しても使えないの」
「へぇ、そうなんですね」
(って事は一応攻撃魔法は使えるって事は使えるんだな、やっべ一気に戦い方増えて、面白くなってきたぞー、俺にはなにせ前世の漫画やアニメで培ってきた想像力というある意味チートがあるからな)
(そしてもう一つは科学だ!一応理系の大学を出ているから、多少は詳しい、雷とか見たらびびるんだろうなーみんな〜)
「因みに魔法を使ったことがある人はいるのかしら?」
「「「、、、、」」」
「それじゃあ一から教えましょうか、今から魔法修練場にテレポートするから、私に捕まっててよ」
そう言われてカイト達はファミル先生の体に触れた。ルフトだけは際どいとこを触れているが、先生は何も言わない。すると急に体が浮き始め、次の瞬間...
シュン
シュン
目の前に広がる景色や空間が歪み、次の瞬間には剣術の修練場と似たような建物の入り口の前に立っていた。
「ふぅ、着いたわ」
「すっげぇ!これが瞬間移動かぁ、、あれ?ルフトは?」
「ほんとね、見当たらないわ」
「.。oぉおおおおおっ」
ガンッ
頭上から振り降りてきたルフトが思いっきり顔から地面にぶつかった。
「イテテテ、、、ごめんなさい」
「ほんと懲りねーなお前も」
「さぁて、行きましょうか」
中に入ると、そこは前世でいう射撃訓練場を思い出させるような作りになっていた。
「それじゃあまずは自身の魔力を感じ取る所から始めましょうか」
「「「はい」」」
「それでは目を瞑って、深呼吸して、リラックスしなさい、そして右手に意識を集中させるの」
「、、あっ、なんだか暖かい!これが魔力ですか?」
セニカは目を瞑り意識を右手に集中させると何かを感じ取った。
「おぉ〜俺も感じ取れましたファミル先生!」
セニカに続きルフトもすぐに何かを感じ取った様だが...
「、、、、」
「だめだ、何も感じねー」
「大丈夫よ、手を出してみなさい」
言われるがままに手を出す、ファミルはカイトの手を握り意識を集中する。すると先生の手から暖かいモヤモヤが通ってきたのがわかる。
「おぉ〜!!これが魔力か〜!」
「感じ取れたわね?もう一度やってみなさい」
目を閉じて右手に意識を集中させると
「、、、、あ、なんとなくだがモアってと感じる」
「それが魔力よ、意識をどんどん集中させると、熱や形も分かってくるわ」
「おぉ〜、あったけーな、冬はこれで寒さを凌げるな」
「ウッフフ、後は自分の適正属性の色を魔力につけて目を開けなさい」
(俺のは、白だから、、、んーーー)
パッ
「おぉ〜光ったー!」
「燃えてるけど、熱くはないわね」
「涼しー」
カイトの右手は白色に発光し、セニカは赤く発光、ルフトは緑色に発光した。
「2属性持ちは、もう一度おんなじようにやってみるのよ」
「いいなぁ2属性も適正あって〜」
「集中できねーから話しかけんな、、、おぉ〜灰色のモワモワが見える」
「冷たっ」
意識を集中させるとカイトの右手が陽炎の様に空間を歪ませる灰色のモヤモヤが見え、セニカは水色の光を放っていた。
「なかなか飲み込みが早いわねみんな、それじゃあ次の段階に行きましょうか、みんなそれぞれの位置について5メートル離れたあの的に向かって、自分の適正魔法をさっきみたいに右手に出した後、さらに魔力を集めて圧縮した後、放出のイメージをするのよ」
(こういうのは声を出せばやりやすくなるんだ)
「ハァァァァァァ」
右手に魔力が集めると光だし、そしてさらに圧縮するイメージをする。
キュイーーン
するとカイトの右手に出現した光が更に発光し、今度はそれを一気に放出しようと試みる。
(よし今だ!)
「オリャア!!!」
ファーン
電球の様に明るくなっていた光が、カイトの右手から離れ、ゆらりゆらりと舞い、的に当たった瞬間、的が明るくなった。
ガクッ
「的が明るくなっただけじゃねーか、、、」
ブォン!
「やったできた!」
スパッ
「おぉ〜!切れたぞ!」
セニカの的は燃え上がり、ルフトの的は真っ二つに切り裂かれた。
「一発で出来るなんてみんな凄いわね」
「いえいえ、先生の教え方が的確で分かりやすいからですよ!」
セニカが嬉しそうに答える。
「それに綺麗だし!」
「だいたいコツは掴めてきたな」
「後は毎日のように、魔力を意識していけば自然と魔力量は上がるわ、その内極級魔法も出せる日が来るわフフッ」
「いやいや流石にそれはー、、」
ファミルの口から放たれた極級魔法に興味はあるものの、自分にはすぐにはできそうに無いと考えるセニカの意見を遮りルフトが前に出る。
「先生の教えだったら俺はなんでもできちゃいます!」
「名前からしてやばそうだけど、まぁ出来ないことはないだろーな」
「それでは各自、当分の課題を魔力量の上昇とし、今日はこれで授業を終わりとします、また明日お会いしましょ」
「「「ありがとうございました」」」
そして今日の一通りの授業を終えて、下校の時間となった。
「それじゃあセニカ!ちょっと今日は急いで帰らなきゃだから先帰るわ!また明日!」
「また明日ー!」
*「ねぇねぇあんた達って、どういう関係なのよ〜?」
同じ剣術科の女子生徒がカイトとセニカのやり取りを見てイジり、顔を僅かに赤らめて反応するセニカ。
「も、もう!からかわないでよ!」
「おーい!カイトー!今日は一緒に帰らないのかー?」
剣術科の校舎から急足で校門に歩いていると、背後からルフトに声を掛けられる。
「あ、悪りぃルフト!今日エリーゼ迎えに行かなきゃいけねーから、先帰るわー!」
「おうそうか!んじゃなー!気をつけろよ〜!」
「あいよぅ」
そこからカイトは魔力を練りながらエリーゼの学校まで走っていった。
「ハァハァハァ、やっと着いた、ちょうど下校の時間か」
何故そんなに急いでるかって?
もちろん母さんが心配なのもあるが、前回エリーゼを婆ちゃんの家から迎えに行く事があった時、時間を僅かに数分遅らせただけでエリーゼが物凄く不機嫌になっていたのだ。一応今回そう言った事態を回避する為、遅れることは言ってあるが、授業が思ったよりも早く終わったのと、エリーがもし俺が言った事多分忘れてるから急いだ。エリーゼに限らず、女の子は少しでも待たせてはいけない事を俺は前世とあの時で学んだのだ。
校門の前でエリーゼを待っている間も魔力を四肢へと順番に送るという魔力量を底上げをする魔力トレーニングをするカイト。ファミル曰く魔力の器は筋肉と一緒で、負荷を与えれば与えるほど性能が上がるのだ。
(テレポートの魔法も一応帰ったら練習するか、多分だけど一度行った時にしか行けない仕組みになっているんだろうな、今まで行った場所とか忘れようにしないとな)
「にーに!」
「お、エリ〜!どうだった学校?」
「ふつー!」
「にーに抱っこ」
両手を広げて、かかとを浮かせるその仕草にキュンとしながらも、疲労が溜まっている今ではと思うカイト。
「おいおい、ただでさえ疲れてんのに、、、」
「抱っこー」
「はぁ、ほら行くぞ」
仕方なく筋トレだと思い、エリーゼを高く持ち上げた。
「たかーい!」
(肩車なんて何年振りだろ)
「このままばぁばのお家まで行くぞ〜!」
「アッハハ!わ〜い!!」
〜10分後〜
「よし、着いたぞ」
「じぃじにもやってもらお!」
「じぃじはもう歳だからやってもらうんじゃないぞ」
「じゃあにーにやってー!」
「また明日な」
ワシャワシャ
頭を撫で回しながら、ばあちゃんの家の扉をノックするカイト。
コンコンコン
「ばあちゃーん!いるー?」
ガチャ
「何だい今帰ってきたのかい?」
「ばぁば!」
「あーよしよしいい子だね〜疲れただろ〜お菓子用意してあるからアルちゃんと一緒に食べておいで〜」
「やったー!」
タッタッタッタ
「ばあちゃん、それじゃあ2人を頼むね」
「ご飯食べていかないのかい?」
「さっき食べたからまた今度来た時に食べるわ〜」
「気い付けて帰るんだよ!」
「うん、ありがとうばあちゃん!いい子にしてるんだぞ2人ともー!」
「はーい!」
「アァウ!」
そしてカミラの薬を買いに帰り道の途中で薬局へ寄るカイト。
ガチャ
「すいませーん」
「いっらしゃい、、あらカイトちゃんじゃないの?お遣い?」
「母さんが朝からしんどいみたいだから、薬を買いに来たんです」
「あら大変ね、どういった具合なの?」
カミラの症状を説明した後、薬をもらい店を出る。
「ありがと!おばさん!」
「お大事に〜」
ガチャ
「ただいまー」
「あらカイト、ゴホゴホッ、随分早かったのね」
「何してんだよ母さん、薬屋のおばさんにも言われたけど、風邪っぽいからちゃんと部屋で休んどかないとダメだろ?」
「ご飯は食べてきたの?」
「うん、婆ちゃんの家でちゃんと食べてきた」
グゥ〜
「ウッフフ相変わらず嘘が下手ね」
「あ、後で自分でどうにかするから大丈夫だよ」
「ありがとうねカイト」
「、、、うん」
(こういう空気は前世の母親を思い出すから苦手だ。やっぱりここでの生活は慣れてきたけど、本当の母さんが忘れられない、すずは今頃何してんだろうなぁ)
カミラに薬を飲ませた後、レストランでご飯をテイクアウトし、帰宅して食べた後、軽く今後の課題を決める。
(取り敢えず、魔法と剣術をしっかり習って旅にでも出ようかなあの人みたいに)
そう言って、思い出すのはカイトと5つ離れたもう1人の家族であるカイトの姉。名前はルミラ、かなり凶暴な性格で、しょっちゅうイジメられていたカイトはああいうタイプはかなり苦手である。
風呂から上がり、ベッドへとダイブしながら今日一日習った事を思い出す。
(今日はいっぱい、色んな事習ったなー、これからは色んな魔法を使える様に魔力量を上げないとなぁ、まずは日常生活で役に立つ魔法からだな、、んー、なんの魔法が良いだろ?、、ていうより日常生活で俺が困ってる事と言えば、、、洗濯だ、、そうだな、、洗濯魔法、か、ら、、)
「スゥー、スゥー」
疲労も相まって知らず知らずに眠れない時に羊を数える要領で覚えたい魔法をリスト化していると、そのまま引きずられる様に眠りに付いてしまったカイト。