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第1章 闘技大会決勝 Ⅰ



朝少し早めに起き、日課のトレーニングを軽くやり、いつものように朝食をとって会場の控え室へと向かう。


ガチャ


「ん?なんでみんないるんだ?」


そこには剣術科の生徒全員がカイトの決勝前に一言エールを送るために駆けつけてくれたのだ。


「よっ、どうだ?緊張してるか?」


メルトがクラスをかき分け前に出てカイトの肩に手を置く。


「まぁ、どっちかというとしてないな」


「全く、お前はこういう時でも呑気なもんだな、決勝に上がれるだけで凄いことなんだぞ?それにアルベルトを倒してだろ?実質今の剣術科の1位はお前なんだから俺たち剣術科の為にもいっちょ凄いとこ見せつけてやれよ?」


アルベルトが不満そうにこちらを見ている。


「それとリゾート旅行のためにも勝ってよね!」


「頑張れよ剣術科のエース!」


「まさかカイトが剣術科を背負うなんて思いもしなかったよね」


「グフ、そうだな、最初は端っこの方でずっと素振りしていただけの奴がまさかね」


「「「頑張れよカイト!」」」


「頑張ってねカイト」


「ヒュー、いつ見てもお似合いだねぇ〜」


「やめろよバカッ!」


みんなからエールをもらい改めて気合いが入るカイト。


「よしもうそろそろ時間だ、お前たちは観客席に戻ってカイトの応援をしてやれ、準備はいいな?」


「うっす!」




======================



『さぁいよいよ本日闘技大会決勝!!栄えある優勝の座を手にするのは剣術科か!?』


「「「ウォオオオ!!!」」」


剣術科の生徒が一斉に吼える。


「緊張して来たか?」


「はい、こんなに盛り上がるとは思ってませんでしたからね」


『はたまた優勝候補と噂されていた、拳術科か!?』


「「「ワァアアアアア!!」」」


拳術科も負けじと応戦するように吼える。


「大丈夫だ、お前ならやれる、なにせ俺の一番弟子だからな」


「師匠、、」


『それでは本日闘技大会決勝を始めたいと思います!!最初に剣術科!!カイト選手の入場だぁ!!』


「行ってこい!」


バシッ!


背中を叩かれ、舞台へと進む。


「「「「ワァアアアアア!!!」」」」


(恥ずかしいな、手とか振った方がいいか?)


ぎこちなく手を振るカイト。家族の声援が何より大きくやはり恥ずかしい気持ちになる。


『続いてぇ!!拳術科、ホウケン選手の入場だぁ!!』


「「「「ウォオオオオオ!!!」」」」


カイトの来た方向から、ホウケンが現れる。


(セニカもラゼッタもあいつにやられた、それに昨日の姉ちゃんの話からも油断できないな、、)


「まさかここまで勝ち上がるとはな」


「お前は俺の手で絶対ぶっ飛ばすって決めたからな」


「残念だがここで倒されるのはお前だ」


「闘技大会決勝戦、、始め!!」


ドゴォンッ!!


闘気の加速でホウケンの前に近づくカイト。


『エレクトロソード』


「その技か、、」


ガシッ


「なっ、、効かないのか?」


『動点穴』


トントンッ!


バシュン


「偽物?」


『五刃』


シュババババ


『真流水』


上空から放たれる五つの刃を、体全体を使って別方向へといなし飛ばす。


穿弓脚(せんきゅうきゃく)


『空円斬』


上空にいるカイトに向かって、蹴り技でカイトの方へと飛んでいくが、空円斬で蹴りを止めるカイト。


『天歩』×『トルネードスティング』


すぐさま技を止めた後、天歩で背後に回り姿勢を整え風の刺突攻撃を行う。


『旋風脚』


空中で背後から飛んでくるカイトに、風脚の上位互換である旋風を巻き起こす足技で軌道を逸らす。


ズガァン!


地面へと突き刺さり、ホウケンも地面へと着地する。


『斬破』


一本の鋭い魔法の斬撃を飛ばす。


『流水』


受け流していくが、すぐさま次の攻撃が襲いかかる。


『ロックキャノン』


『開拳』


ドガァン!!


岩を砕けた瞬間。


ピカー!!


「ぐっ、、」


『テレポート』×『魔闘術』


「これで、、終いだぁああ!!」


『烈拳』


背後へとすぐさまテレポートし渾身の必殺技を放ち、見事命中した。


ドガァン!!


「ハァ、ハァ、結構魔力使っちまったがどうだ?」


パラパラ


「グフッ、、よくも、俺に傷を」


ホウケンの体から何か気配を感じとるカイト。


(なんだ、一瞬目が赤かったぞ?)


((おい、カイト!!))


一回瞬きをし、開いた瞬間には目の前にいた。


『八極奥義・王我』


防衛本能が働き、すぐさま目の前に岩の壁を作った後、土魔法で腕を岩で覆い、魔闘術を解いて闘気を全て腕へと集中させる。


ズゴォン!!


「ガッハァ!!」


岩を貫通したがガードした腕なんともない、しかし腕を通り越して衝撃が身体の中に走り吐血するカイト。


「なん、、だ、今の、、」


「貴様は俺に傷を負わせた、万死に値する」


バシュン


「また偽物か」


「ハァ、ハァ、、、なんだ今のは、、」

(魔力がもうねぇ、魔闘術も後一回が限界だ)


「無駄な足掻きを、、」


すぐさまカイトの目の前まで移動する。


「お前、、もう傷治ったのか?」


「死ね」


傷を見ると、傷口からラゼッタの服に黒い液体が流れているのが見えた。


「黒い血?」


小さい声で呟く。


((黒い血?なんの冗談だよ、そいつは人間だ、魔族じゃねぇ))


「魔族?」


思わずテレパシーではなく、口に出してしまったカイト。するとホウケンは目を見開き、口を開く。


「なぜ、分かった?」


グォオオオオン!!


舞台全体が黒い霧に包まれていき、横から衝撃が飛んでくる。


ズバァン!!


吹き飛ばされるカイト。


*「小僧、どうやって我らの正体に気付いた?」


「ぐっ、、お前は、拳術科の」


カイトを吹き飛ばした本人は拳術科顧問、ゴウケンであった。


「質問をしている。どうやってだ?」


(『ヒール』)


「ゴッホゴホ、、、あぁ?聞いただけだろ?実際そうなのかよ」


「なるほど、口にしただけで我の早とちりか、しかし生きては返せなくなった、悪いが本当に死んでもらうぞ」


「なんだ?その姿、、」


ゴウケンとホウケンの周りから黒い瘴気が現れ、2人に纏い、やがて瘴気が消えるとそこには別の人、、ではなく別の生き物が立っていた。ゴウケンは薄紫の肌で角が2本生やし、尻尾も付いている。ホウケンは薄緑の肌をし、ゴウケンより短い角を2本、そして尻尾はない。


「もうこの身体ともおさらばだなぁ、せっかくこのホウケンって野郎の身体気に入ってたんだがなぁ」


「また新しい依り代を見つけるしかない、ちなみにこいつの身体は俺が頂く、このゴウケンという男の身体も限界が近い」


「あぁん?俺の獲物だし俺だろぉ!?それにお前はあの女に決めたんだろぉ?」


「はぁ、仕方がない、今回はお前に譲るとする」


「ケッケケ、、決まりだな、んじゃあ頂くぜ」


『テレポート』


バフンッ


「おーっと、ここじゃあ闇魔法以外は使えないぜぇ?大人しく俺に喰われんだな」


「ラゼッタに勝ったのも、まさかお前ら2人が」


「あぁん?あの嬢ちゃんの事か?そうだぜぇ!大会の初日からスレイニル家の嬢ちゃんがいるって聞いて狙ってたんだよぉ」


「クソやろぉ、汚い真似しやがって」


「あぁん?こっちは命かけてんだよぉ」


『ソウルイート』


「なっ、、、体が、、」


「安心しな、お前の身体を頂いた後、じっくりとあのセニカってガキを可愛がってやるからよぉ」


「くそ、、ここで終わりかよ、、誰も助けに、」


『烈拳』


ブウォン!!


『悪りぃ、お前とのリンクが一瞬切れて時間が掛かっちまった』


「ハァ、、、ハァ、、」


「何者だ?この結界の外からは誰も入ってこれない筈だが?」


『あぁん?相変わらず大人しく死んでなかったのかよ、クソ魔族が』


「なんだと?」


「お、俺のぉ、食事を邪魔したなぁ!!殺してやるぅ!!」


『テメェらが俺様の相手になると思ってんのか?』


『三面・怒』


アッシュの腰にぶら下がっている仮面の一つをアッシュが顔の前に持っていくとやがてその面が消え、アッシュの表情が怒りの形相と化す。


『俺の相棒をよくもこんな目に遭わせやがったなぁああ!!』


「なっ、、なんだこのプレッシャーは!?」


「殺してやるぅ『ソウルブラスト』」


バシィン!!


『そんなザコい技通用すると思ってんのかぁ!?』


片手で軽く衝撃を吹き飛ばす。


ブンッ


緑の魔族の目の前に高速で移動する。


『天烈拳』


『ガイアウォール』


ズガァン!!


壁を粉々にした後、すぐさま追撃しようとするが姿が見えない。


『魔眼解放』×『シャドーパペット』


緑の魔族の目から紫色の光が発生すると同時に、地面から20体近くのありとあらゆる魔物の影が出現した。


『くだらねぇ』


次々と影を一体ずつなぎ倒していくアッシュ。その隙を見た薄紫の魔族も加勢に入る。


「2人で行くぞ、強すぎる」


「あんな奴俺1人でぇ」


「上だ!!」


『獄落とし』


ズドォンッ!!


突如上から降ってきた闘気で形作られた足が薄緑の魔族の脳天を直撃し、地面に埋もれさせ、すぐさま薄紫の魔族の顔を掴みそのまま力を入れ握る。


「ぐっ、、離せっ、、、」


「離さなねぇよ、そのまま殺してやる」


『アシッドスキン』


闘気を纏っているアッシュには腐食の魔法は当然効かない。


「くそ!『瘴気結界・解』」


舞台を覆う瘴気は消え、会場の全員が舞台の状況を見て、何が起こっているのか各学科の顧問以外には理解が追いついていなかった。


『テレポート』

『マジックイート』


ゴォォォォォ


「なんだとっ、、魔力が、、」


ジャキッ


舞台に全学科の顧問が上がり、アッシュと魔族に向け、武器を構える。


「なぜ魔族が、、それに精霊も?」


『俺はカイトの精霊だ、こっちに剣を向けんな』


「何が起こったんだ?」


槍術科の顧問がいつもと違う様子でアッシュに質問をする。


『簡潔に言えばこいつら魔族が拳術科の生徒と顧問に化けてて、大会に参加してやがった、そして今からこいつを殺す途中だ、邪魔すんなよ?人間』


グッ


「んぐっ、、、」


「少し落ち着いてもらえますでしょうか?この魔族が何を企んでたかを知る必要があります故、一旦こちらで預からしていただけませんでしょうか?」


魔術科の顧問が丁寧に話しかける。


「俺は反対だ、ウォルトの奴を行方不明にさせたかもしれねぇんだぞ、今すぐここで殺すべきだ」


弓術科の顧問が怒りを露わにしている。


「落ちつけパーシヴァル、生徒を思う気持ちは分かるが、生徒もその親御さんも来ている、何よる一般市民も見に来ているんだ、ここで殺すのはまずい」


「だから今すぐここで殺さなきゃ行けないだろ!一般市民に被害が出る前に殺すんだ」


「落ちつけパーシヴァル、俺も生徒をやられてはらわたが久し振りに煮えくり返りそうだが、ここはアンジェの言うことを聞いた方がいいと思う」


「では決まりですね、その魔族の身柄を申し訳ありませんがこちらであずからせて頂けませんか?」


『俺の相棒を殺そうとしたんだ、奪うならお前らも敵と見なすぞ?』


身柄の確保を申し出た顧問に向かい殺気を全開で威嚇する。


「申し訳ありませんが、少々強引に行かせて貰います」


『あぁ?』


大気が揺れ、互いのプレッシャーで舞台にヒビが入る。


「ま、、、て」


「カイト、無事か?」


「アッシュ、渡してやれ、俺は無事だ」


『でもこいつはお前を!』


「いいから、、な?」


立っていられるのもギリギリな状態でアッシュを説得する。


『ったく』


魔族を離すアッシュ、その瞬間テレポートで逃げようとするがーー


バフンッ


「あなたの身体中の魔力を全てゼロにしました、魔族特有の魔力吸引も使えないように負荷魔法で封じました、大人しく付いてきて貰いますよ?」


「人間ごときが我ら魔族にたてつくとどうなるか」


「興味もありませんわ『アブソリュートゼロ』」


ピキンッ


水属性変換魔法の氷属性極級魔法で、一切の動きを封じ込める。対象は自分が凍らされた事すら認識できずに凍らされる。


「審判?この勝負、ホウケン選手の大会ルール違反により失格とみなしてくださいね」


「え?あ、はい、只今の対戦!ホウケン選手の大会ルールの違反が発覚したため、失格とし、闘技大会決勝はカイト選手の優勝とします!!」


カイトの優勝が決まったが、誰も予期せぬ形となり、会場に静寂が走っていた。そして大会の観客席にいた、1人の男性は立ち上がり会場を後にした。この時この男性の横に座っていた人は「成功だ」という言葉が聞こえたが誰もその意味を理解するものはいないのであった。






















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