表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/127

第1章 学園生活初日



〜アグシュカ暦1533年4月〜



チュンチュン



「....うぅ」


「エェェェイッ!」


ドスッ


聴き慣れた可愛らしい雄叫びと共に、部屋に入るなり蜂蜜色の髪色を顎まで伸ばしたショートヘアーの女の子が、まだ生え揃っていない同じ髪色の上半身裸の男の子の手を繋いでベッドにダイブする。


「....うわっっ!!」



*「にーに!ゴハンだよー!!」

*「アァイ!アァァア!」



「...うるさいなぁ.....もうちょっとn◇※△...zZZ」


ダイブされた衝撃で一瞬起きるも、睡眠欲が勝り、再び眠りに入ろうとする。


*「もうー!寝ちゃダメーー!」

*「アァー!アアァアアーー!」


「...zzz」


*「アルちゃん、にーに起きないからいつものお願い」

*「ア!......アァーーー」


ブチュ


上半身裸の男の子が少し濡れた唇を自身の唇に重ねる。


(ん?)


ブチュゥゥゥ


すると勢いよく重ねた唇が自身の唇を掃除機のように吸い上げ、呼吸が困難になる。


(っ!!!まさかっ!!)


「っだぁ!!!コラァッ!!」


「あ、起きた」


「起きたじゃないだろ!なんでいつもちゃんと起こしてくれないんだよエリー!」


「ンチューーーーー」

グワッ


目を瞑りながら上半身裸のキス魔が唇をタコのように尖らせ、迫ってくる。


「アルもいつまでキスしようとしてきてんだ!!っく、、コラ!、っやめろアル!」


「だって、にーにの事普通に起こしても起きないんだもん」


「んぐっ、、、だからって弟にキスさせて起こすか?普通、、ってかお願い止めてくれ、、、弟に力負け、、す、る」


両手で押さえようとするも、何故か押し返される。


「アル!やめ!」


「アァイ!」


「ハァハァ、、ったく、なんでお前の言うことだけ聞くんだよアルは」


「チョーキョー?」


蜂蜜色の女の子の口から出た言葉に反応する。


「誰がそんな言葉教えたんだ?おぉう?そいつを今からぶちのめしてくるぜぇ」


「ルフトにぃ」


(あのヤロぉ、俺の妹に何教えてくれてんだよ、今日絶対会ったらぶっ○してやる)


「いいか?エリー、あいつはな、頭にすっごい大きな病気を抱えているんだ」


「ビョーキ?」

「アァーイ?」


姉が喋る言葉をただただ言えなくても真似するアルト。


「そう!病気だ!しかもその病気は近くにいるだけで移ってしまう厄介な病気だ」


「近づいたらどうなるのー?」

「アゥオ?」


「バカになって死んでしまうんだ」


「えぇぇ!?死んでしまうのー?」

「アゥオ?」


「そうだ!だから今日からあいつには極力近づかないようにするんだぞ、バカが移るからな」


「ハァーイ!」

「アァーイ!」


「よしっ!じゃぁお前たちはご飯が冷めないうちに食べにいくんだ!Go!」


話を巧みにそらし、ご飯を食べに行くよう催促する。


「アル」

「アイ!チューー」


「っ!!わかったわかった!起きるから!」


「やめ!」

「アゥ」


こうして俺は、蜂蜜色の短髪の妹のエリーゼと上半身裸のキス魔の弟のアルトに起こされ朝食をとる事にしたのだ。


あの夜、ヤンキー共に殺された俺は、この家の長男として転生したのだ。

 

前世の記憶を持ったまま気が付いたら赤ん坊に転生したのでそれはもうかなりパニックを起こして三日三晩泣き続けてこの世界の母さんを困らせたもんだ。



それに新しい家族を持つのはすごい抵抗がある。自分を産んでくれたのはそうだが、俺からすると赤の他人の様にも思える。てか実際はそうだ。


いきなり死んで、目が覚めたと思ったら生まれ変わっていて、その人が今日から君の家族と言われてもすぐには納得出来ない。やっぱり最初は他人の様に思う。しかしその問題も時間が解決してくれた。もちろん前世の家族を忘れたわけではない。今ではここの家族も本当の家族だと思っている。



因みにこの世界での俺の家族構成は、父母姉俺妹弟の順番だ。妹のエリーゼはわがままで人懐っこいが、イタズラ好きで油断ができない、しかし基本的にとても可愛い妹だ。最初は相手をしていると前世の妹を思い出すから産まれてからは少し距離を取っていたが、人懐っこい性格のせいか距離を縮めるまでそう時間はかからなかった。ちなみに年は俺と7つ離れている。俺の年齢が今年で13なので6歳だ。



そして弟のアルト、アルトは今年で1歳になったばかりでまだ髪も生え揃っていないが、エリーゼと同じ蜂蜜色なのは薄く見える、そしていつもエリーゼに引っ付いている。俺の言う事は聞いてくれないのに、エリーゼの言う事は聞くところが可愛くないのだ。しかしたまに朝起きると気づかないうちにベッドの中に入って一緒に寝ている事があるので、そういうところがかなり可愛いくて仕方がない。ちなみに何故か力がとても強い。最近巷で噂になっている異能ってやつか?侮れないぜ、成長して喧嘩に勝てなくなったときのために何か手を打っておく必要があるな。ゲヘヘ、後キス癖は直してもらいたい。



そして父と母。父の名はルドガー、黒色の短髪でがっつりした身体で、職業は魔物狩りっていうのかな?あまり詳しくは母さんから父さんに話さない様にきつく言われているらしくあまり詳しくは知らない。とにかく魔物を狩って、その素材を売ったりして家の生計を立てている。


母の名はカミラ、蜂蜜色のストレートな髪で、怒らせると無茶苦茶怖い。父さんは元々冒険者だったがある日、仕事先で田舎娘の母さんに一目惚れをして、そこからすぐに冒険者をやめ、母さんと郊外で暮らし始めて俺や妹達を産んだのだ。俺が父のルドガーと同じ黒色の髪で、エリーゼとアルトがカミラと同じ髪色だ。


ちなみに家族には俺が転生者である事は伏せてある。


理由は2つあって、1つ目は言ってもメリットがないからだ。言ったところで信じてもらえるかどうかも今の年齢では定かではないし、言うことで、俺自身がこの家庭で更に肩身が狭くなると感じてしまうかもしれないからだ。


2つ目はこの世界では転生者は災いを起こすものと考えられている。昔歴史の授業で習ったのだが、かつてこの世界にはもう一つの世界があったらしく。その世界は魔族と亜人そして人間がいて、3つの種族の関係はとても良かったらしい。しかしその世界にある日突然、人間の中に転生者と名乗る人物が現れた。


転生者は自分の世界に帰りたいと人間の長に助けを求め、長は他の2種族に協力を求め、3種族は協力して転生者を助けたと言う。そして7年の時を経て、遂にその方法を記した遥か古に同じく世界に迷い込んで来たと思われる転生者が書き記した石碑を見つける事ができたのだ。


石碑には転生者を元の世界に戻す術は記してあったが、石碑に記された術に必要な代償、犠牲が大き過ぎたため、石碑を見つけた3族の長はその代償や犠牲を1人の為に取ることが出来ず、転生者を元の世界に返すのは諦めた。しかし転生者は目の前に元の世界に帰る方法があるにも関わらず諦められるはずもなく、3族の反対に耳を貸さず。1人で帰る方法を引き続き探った。


そんな転生者を3族は転生者を危険思想の持ち主として牢獄に閉じ込める。それから10年もの間投獄される事になるのだが、ある日突然転生者の姿が消えたのだ。それから数年してその世界は消えたのであった。というのが大まかな内容である。



(元の世界に帰るだけで危険思想の持ち主とされて10年も投獄させられるってどんな代償と犠牲だよ、、まぁ先生曰く話の殆どが伝わっていくうちに変えられたりしたらしいから本当の事を知る術はないんだけどな)


(絶対何か悪いこと企んでるやつが滅ぼしたんだよ、こういうのはアニメや漫画では決まって人間なんだなー)


(絶対そうだな、人間ほど欲深い生き物なんてこの世n)バンッ!!!


「っ!びっくりしたー、、なんだよ母さん!?」


突如リビングに響いた机を強く叩く音で我に帰るカイト。


「カイト?早く食べないと遅刻するよ?ルフトもあんたの事わざわざ迎えに来てんだから!」


カミラにそう言われ、指している指の先にあるリビングの窓を見ると、、、


「よっ!また何か考え事してんのかー?そんなに怖い顔して考え事してると、女の子寄ってこないぞ〜?」


枯れ色の髪を右に流したミディアムヘアーの少年がリビングの窓からカイトに挨拶をする。


この少年こそが妹のエリーゼによからぬ言葉を教えた張本人ルフトである。ルフトの母とカイトの母は小さい頃からの幼馴染みで、家族ぐるみでルフト家とは仲がいいのだ。今では同じ学校に通っていて、性格はとにかく明るくてうるさい。女好きで、バカで、アホで、良い所はー?ないなと言うのがカイトから見たルフト像である。


「うるせーよ、お前は少しは考え事しろ、てかなんでうちに居るんだよ?」


「えー?酷くなーい?なんでそんな今日も辛辣なのよ?カイトきゅんっ」


「バカっ!顔近づけんじゃねー!もう弟で懲りてんだこっちは!」


キス顔で近づいてくるルフトを躱し、洗い物を片付ける。


「そういえば、エリーゼちゃんとアルトは見かけないな?」


「さぁ?バカが移るのが嫌で隠れたんじゃね?」

ポコッ


「カイト?折角ルフトに迎えに来てもらってるのに、失礼でしょ?」


横で皿を洗うカミラに頭を軽く小突かれるカイト。


「いてーよ母さん、大体コイツが、、、」


今朝エリーゼが言ってた言葉を思い出す。


「おぅおぅルフトォ、そういえばお前、うちの可愛い妹になんて言葉教えてくれてんだぁ?おぉ?」


「ちょっちょっ!え?待て待て!俺が??エリーゼちゃんにおしえtブフォッ!!!」


問答無用で腹部に拳をめり込ませる。


「こっちから出向く手間が省けて助かったぜ」


「イテテッ!俺はなんモホォッ!!おしえでぇあいでふ...」


往生際が悪いのでコブラツイストで応戦する。


「いつもお前は往生際が悪りぃんだよ!観念しやがれ!この変態野郎!」


「グヘェ......あっ!!エリーゼちゃん!!!たすげぼぉっ!」


「...フッ」


「ちょっと待てカイトっ!エリーゼちゃんの顔を見てみろ!!」


腕をタップしながら苦し紛れに指を刺すルフトの指の先を見ると、エリーゼが口角を上げていた。


「あ?、、、っ!!あの顔は...」


「ニヒッ」


あれは、、、エリーが4歳だった頃。夏休みの宿題を学校に持って行ったが学校に着く頃に宿題が無いことに気がつき、「やったのに宿題を家に忘れてきてしまいました」といかにもやってきていない奴がよく使うセリフを言わされ、先生に猛烈に叱られ、家に帰っても親に叱られ悔しさのあまり泣いていた俺を見て妹が宿題のノートもったまま「ニヒッ」とだけ言い悪魔の様な笑みを浮かべたのだ。


(あれはあの時の顔!誰かを貶めた時の顔!)


背筋に悪寒が走るのを感じたが、しかし今回の矛先はカイトではなくルフトなのだ。


と思っていたら...


ゴォゴォゴォゴォ



「「え?(汗)」」


背中から感じるただならぬプレッシャーを感じ、カイトとルフトの口から同時に情けない声が出てくる。


背後から物凄いプレッシャーを感情振り向くと、そこには怒髪天を衝いた普段は温厚で優しいカルラ様が血管を浮き彫りにして何も言わずただただ微笑んでいた。


「あんたたち?おふざけはもう終わったかしら?」


「「へぇあ?、、っはいっ!」」


「何突っ立ってるの?いってらっしゃい?」


笑みを浮かべながら、その身に宿す気配は修羅そのもののカミラに気圧されるカイトとルフト。


「「はい、行ってきます」」


「ニヒッ」


と実は今日から高等学園生活の1日目、学園から支給された紺色の制服を着て登校する2人。


因みにこの世界では高等学園は前世でいう中学校の年齢で通う場所で、6歳〜10歳は初等学園生、10歳から13歳まで中等学園生、そして13歳〜16歳迄が高等学園生、その上に16歳〜20歳迄の大学園生がある。


ここの世界は16を成人とし、殆どの子供が16の高等学園を卒業した年で社会に出て行く。じゃあ大学園を主に行く人はどんな人かと言うと、家の跡継ぎなどで学ぶべき学問を主に学ぶ場所で、貴族や裕福な家庭に生まれた者で無ければ関係のない話である。



======================



「間一髪で母さんがブチ切れる前に、家から出られたぁ」


「マジで怖かったー、、、てか指が机にめり込んでたよな?」


「ったくなんで俺まで巻き添え食わされるんだよ」


「、、にしてもエリーゼちゃんのあの顔よ、顔!」


「あぁ、俺はあの顔に何度痛い目にあってるかー、同情するぜ」


「つか、気になってたけど、俺が何を教えたって言ってたんだ?」


「お前が女にしそうな事だよ」


「俺が女の子にしそうな事ー?んー何だー?パンツの覗き見は別にしなくてもー、だとしたら何だー」


自ら別の引き出しを開くルフトに呆れるカイト。


「お前もう高等学園生にもなってパンツ覗いてんのかよ」


「んーーー、、、わかんねぇよ!!多すぎてどれだか分かんねーよ!!!」


「引くわー」


「お願いカイちゃん教えてーー?今度可愛い女の子紹介してあげるからーーねっ?」


「絶対教えねーよ、もし万が一教えたら、本当にエリーに教えるかもしんねーからやだ」


「えーー?それはひどいよー、そんな馬鹿じゃないよ俺ー」


「馬鹿だから言ってんだろ馬鹿」


「馬鹿馬鹿言い過ぎなんだよコノッ!!」

ドサッ


ルフトがカイトに飛びかかりクビに腕を回し小突き始めた。


「っおいやめろよ馬鹿、離しやがれ馬鹿」


「ヘッヘヘ、馬鹿って言ったこと訂正して謝ったら許してやろうではないか」


「アッハハ、分かった分かった、悪りぃ馬鹿に馬鹿って言って」


「お前っ!!」




そうこうじゃれあいながら徒歩で学校に着いた2人。


「おぉ〜!やっぱでけぇなウルミスト高等学園!!」


校門を潜り抜けた先に聳え立つ目の前の巨大な校舎に感嘆する2人。


目の前に聳え立つ建物の左右には同じ大きさの校舎が各2つずつ立っており、その建物の背後には更に広大な敷地と運動場の様な広場と、その外側を囲う様に様々な建物が並んでいた。


「まさかこんなすげぇ学園にカイトと一緒に受かるなんてなぁ」


「そうだなぁ〜今日から俺らも高等学園生か〜」


「俺は槍術専攻だけど、お前は結局どこの学科を専攻したんだ?」


「俺はもちろん剣術だぜ!」

(そう!異世界といえば剣と魔法!)


互いにポケットに隠してあった自身の学科を証明するバッヂを見せ合う。


カイトのバッジは銀色の金属で出来た小指程度の剣で、ルフトのは槍であった。


カイト達の入学したウルミスト学園には大きく2つ学部があり、1つは勉学を勤しむ、『法学科』と『文学科』の博学部。


もう一つは『剣術科』『拳術科』『槍術科』『魔術科』『弓術科』の5つからなる、戦学部。


生徒はこの中から第一専攻と第二専攻を選び、学ぶのだ。カイトは第一専攻を剣術、第二専攻を魔術にし、ルフトは第一専攻は槍術、第二専攻はカイトと同じ魔術にしたのだ。因みに第一専攻は一度決めれば次の年まで変えられないが、第二専攻は第一専攻に集中したければ選んでも、選ばなくても良くても良しとされている。


「それじゃ槍術学科の教室はあっちだから行ってくるわ!んじゃまた放課後会おうぜ!」


そう言ってルフトは目の前に聳え立つ5つの建物の左から2番目の建物へと向かっていった。


「おう、ナンパはほどほどににしろよなー」

ボフッ


「あ!すいません」

*「いえいえ、こちらこそ、、あっ!君も剣術専攻!?」


ルフトと別れながら手を振っていると、突如背後から衝撃を感じ、ぶつかった感じたカイトは振り向き相手が女子生徒だと分かった瞬間、すぐさま謝ると、カイトのバッヂを見て自身のバッヂと同じ事に気が付く女子生徒。


「あぁ、はい」


*「それじゃ今日から同じクラスメイトだね!よろしく!」


ぶ気さくに手を出して握手を求めてきた相手に、戸惑いながら手を出して握手するカイト。


「よ、よろしく」


*「あ!そういえば自己紹介まだだったね、ごめんごめん!私の名前はセニカ・ルーストリア!君は!?」


そう言って、自己紹介してきたのはセニカという身長はカイトの顎くらい(因みに今のカイトの身長160)で首までしか伸びてない薄い金色の短髪で目の色は青。前世でいう白人のような彫りの深い顔立ちに少し薄いアジア人の顔が混じった感じの子だ。一言で言うとかなり美人であった。


(こんな子でも剣術を習いに来るんだな〜、てっきりもっと男臭い連中ばかりだと思ってたわ)


小さな心臓が僅かに弾んだ事を意識する前に、カイトも自己紹介をする。


「俺の名前はひらs、、、カイト、平民の出身だから姓はない」


この世界には王族や貴族が存在していて、王族と貴族以外の名前には姓がないのである。そして平崎斗真ことカイトは未だに自分の名前を名乗る時、前世の方の名前をうっかり口走りそうになるのだ。


「よろしくね!カイト!」


「あぁ、よろしく」


(こういう初対面で相手の事を何も知らない時のこの後の話の展開が思いつかないんだよなー...こういう時ルフトがいてくれたら...)


「あのー、、、き、教室ってー何処か分かる?」


「あぁ!それじゃあ一緒に行こ?ちょうどあたしも行こうと思ってたから!」


「ありがとう、助かるわ」


会話の展開に困り、咄嗟に嘘をついて難を凌いだカイトはセニカと共に右から2番目の建物の中にある教室へと向かう。


教室へ向かう途中も、カイトは沈黙が生まれない様に、中等学園はどこだったとか、どうして剣術科を選んだのかとか様々な質問をしていると...


ドスッ

*「すみませんっグッフ」


校舎と校舎の間の隙間の奥から声と何かが倒れる音が聞こえ、足を止めるカイト。


*「よくもっ貴様っ!」


耳をすませると、何やら怒号の様な声と、ひたすら謝る声が聞こえ、ゆっくりと隙間の中に入っていくとゴミ捨て場の様な場所に繋がっていた。


*「....はぁはぁ」


そこには如何にも貴族と言える、支給された制服の上に独特の装飾をを施した金髪の男子生徒が、倒れこんでいる男子生徒の頬に靴を押し付けていた。


それを見たカイトは、前世の様にただ見ているだけの親不孝な人間にならないよう母との約束を守る為…


「おい!何やってんだお前ら?」


*「何用でしょうか?私は今この身の程をわきまえない平民に教育を施しているのでっ」


ドスッ!


頬を踏みつけていた靴をどかし、腹部に蹴りを入れる貴族に、詰めよるカイト。


「いい加減にしろ、もう謝ってんだろそいつも?離してやれ」


*「何を仰ってるのやら、、こういう平民には優しく一回教育しただけでは、直らないのですよっ」


ドッ!


もう一度腹部に蹴りを入れようと、踵を上げ振り下ろした貴族の靴を蹴り返すカイト。


「だとしてもやり過ぎだ、ここの学園には生徒以外の身分なんてものはねぇよ、それがこの学校のルールだからな。貴族だろうが王族だろうが、ここの学校では皆んなが同じ生徒だ!だからお前にはその教育とやらを与える権利はねーんだよ」


蹴りを止められた挙句、ピカピカに磨き上げられた靴に付着したカイトの靴の汚れに、怒りを露わにする貴族。


「優しく話しかけている内に引いとけばいいものを、この私に逆らつもりか?」


「逆らうも何も最初から従ったつもりなんてねーよ、そもそもお前は運良く貴族の元で生まれただけだ。偉いのはお前じゃなくてお前の親だよ、七光り馬鹿」


「おのれぇ、許さんぞ私を侮辱した罪思いしれぇ!」


そういうと七光り馬鹿、略して七バカはカイトに向かって走り出した。


スッ!


「え?」


ドスッ ボゴォッ バキィ


瞬きをした次の瞬間には拳が目の前に来た事に思わず、口を開く。


「え?....ちょっとガハッ...待って?....グフッ...強くない?」


一瞬で顔が血だらけになるくらい殴られるカイト。そして七バカは右手を掲げて突如大きな声を出した。


『フレアァ!!』


七バカの手のから淡い光が現れ、ゆっくりと掌に収束しやがて光が炎へと変換し、カイトに向かって放出された。


(....やべぇ、コイツ魔法も使えんじゃん...助けたのは良いけど、ケンカ売る相手間違えたぁぁぁ、やべぇまた死ぬじゃん俺.....)


(....フフッ悪くない2度目の人生だったぜ...ごめんよエリーゼ学校行く前に、お前のお菓子朝のお返しで全部食っちまって...)


死を覚悟し、妹に今朝の仕返しを謝りながら目を瞑る。


『アクアキャノン』


バシャーーーン


ジューーーー


「うおっ!」


突如カイトの右耳を掠めた冷たい何かに驚いて目を開けると、水の塊がアルベルトの放った炎とぶつかり相殺した。


「何?私のフレアが相殺されっ!?、、、アナタは!?」


*「校内での規則で魔法を使った戦闘および虐めにあたる行為は禁じられているはずだが、、これはどういう事だ?」


そう言ってカイトは自分の来た道から聞こえた心地よさを感じさせる程の両性的な声の方を振り返ろうとした所で目の前が暗転した。


気絶したカイトを他所に七バカを睨みつけるその男の正体はウルミスト高等学園3年ガルハート・クインスであった。


「すいません、ですが!此奴らが私を侮じょっ!」


先程までの傲慢な態度とは逆に、ガルハートを

見た瞬間に、まるで調教されたペットの様に一瞬大人しくなるも、正義は我にあると言わんばかりに、自身の主張をする。


「そこで倒れている奴も言っていたが、お前は少々度が過ぎている。魔法を使ってトドメを刺そうとしていたな?まさか校内で殺人行為でもしようとしてたのか?」


ガルハートの質問に再び黙り込み俯く七バカ。


「それは、、、そいつが、、」


「言い訳は無用だ、取り敢えずコイツは診療所に連れて行く、その後はゆっくり話を聞いて、お前の処分をどうするか決める」


「くっ...」


そしてカイトはガルハートに抱え上げられたまま診療所に連れて行かれた。


まさか初登校でボッコボコにされるとは思いもしなかったカイトであった。


とこんな感じでカイトはとても弱かったのだ。



異世界に転生してからというもの、カイトは自分に何か特別な力が宿っているというお約束があると思い、7歳の頃色々試してみた。魔法を使おうとしたが、力み過ぎてう○こを漏らしたり、剣を使おうとしたら重過ぎて持てなくて、また力んでう○こ漏らすし。今のところ肛門が緩いだけのただの一般市民なのだ。



なんの特別もない普通の家庭で生まれたと知った時は結構心にくるものがあった。だって普通転生したら何かチートみたいな能力宿るんじゃねーのかよ!!


なくてもなんかほら...最強の魔法使いとか種族とたまたま会って、力を託されて強くなるとか。そう出会いだよ出会い!結局出会ったのはルフトとかいう幼馴染の馬鹿だし、あいつに何か特別な力があるのかと調べてみたが、結局やっぱただの馬鹿だったし。



とまぁこうしてカイトの平凡な異世界生活が始まった訳だが...


ちなみにセニカはカイトが途中で助けに行ったことに気づいていなかったらしく、そのまま教室まで1人で話ながら、教室に着き、着いてからカイトがいない事に気がついたらしい。ちょっと、いや結構天然なのかな?


一応何か特別な力があるとすれば、前世の記憶や知識が使えるって事ぐらいしか思い浮かばないカイト、漫画やアニメ知識をフル活用して強くなってやんぜ!まぁ勇者とか世界を救おうとする程の事はしないけど、てかここの世界魔王とかの恐怖に晒されてると思いきや、クソ平和だしな...


とにかく前世みたいにクソみたいな後悔ばかりの人生を生きないように、そしてできれば元の世界に帰る方法を見つける、それが俺の目的だ。見つからなかったら見つからなかったで良い。


てか異世界物の小説とかアニメを見て元の世界に帰るのが普通だと思ってるけど、元の世界は存在してるのかさえわからないし、同じ時間軸なのかもさえわからない。もしかしたら地球が滅びて何万年後の世界とかって言う可能性もあるし、マルチユニバース的な可能性もある。まぁのんびりと色々考えて生きていくさ。



あぁーまたダラダラと書いてしまったー、名前とか決めるの難しいなー。まぁとにかく異世界に転生して新しい人生をこれから過ごしていくわけですけど。まずは学園生活とか書いてみたかったのでいきなり学園生活に行きました。この世界だと16の年で成人で、高等学園は私たちの社会でいう大学みたいな感じです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ