第1章 本当の家族
朝早めに起き、アッシュと森に出て少し訓練をする。
「んじゃアッシュ、お前の強さを見せてくれ」
「ったく、いちいちそんなの見なくても俺様はつえーのに、、、んじゃ行くぞー」
少し文句をたれながら、森にある巨大な木の方へと飛んでいく。
「スゥー、、、オラ゛ァ!」
ズゴォン!!
巨大な木が殴られた勢いで吹き飛ぶ。
「おぉ〜、中々だな」
「チッ、今はこんなもんか」
「どうしたんだ?」
「本調子まではまだまだだな」
「やっぱりまだまだ俺の成長が足りない感じか、因みに本調子だとどれくらいなんだ?」
「んー、この木を10個並べて軽く殴れば消し飛ばせるな」
「バケモンじゃねーかよ」
「だからとっととおめーには強くなってもらわねーとな」
「そうだな、改めてよろしく頼むぜ相棒!」
「なんだよそんなにニヤニヤして気持ち悪りぃ」
「相棒ってなんかいいよな」
「好きにしやがれ」
「んじゃ行くか、精霊持ってんの見つかるとめんどくさいから窮屈かもしんないけど頼むわ」
「しゃーねーな」
そう言って、アッシュは小さな光の玉になり、黒い丸のタトゥーの中に入る。
(あーあ、こんなの母さんに見つかったら大変だよな、なんであの時タトゥー入れるって先に言ってくれなかったんだよ、分かりにくい言い方しやがって)
((オイ、俺様の悪口言ってねーか?))
「うぁ!誰だ!?」
((俺様だ、お前の脳に直接話しかけている))
「へぇー、そんなこと出来るのか」
(おーい、これで聞こえてるか?)
((、、、、))
「どうやったら出来るんだ?」
((魔力を集中させてみろ、そしたら肩に何か感じるだろ?))
「あぁ、これか」
((そこに魔力を少量でいいから、お前の言いたい事を魔力に乗せる感じで注ぎながら思い浮かんでみろ))
((おーい))
((聞こえるぞ))
((お、マジで!?))
((あぁ))
((すげー、テレパシーが使えるようになった!これ他の奴にも試せるのか?))
((何か特別な繋がりがない限り向こうに声は届かない))
((ちょっと慣れるまで大変だな))
((そろそろ学校にかななきゃいけねーんだろ))
((あ、忘れてた))
『テレポート』
((ここがお前の学校か、つえー奴はいるのか?))
「当たり前だろ」
(あ)
((当たり前だろ、急に話しかけんなよ))
((今のはどう見てもオメーが悪いだろ))
((とりあえず、強い奴はいるよ、後もうそうだな〜、確か4日後には闘技会で見れるぞ))
((へっ、それは楽しみだな!強そうな奴を見つけたら俺様がぶっ飛ばしてやるよ!))
((今はまだ無理だな))
((なに弱気になってんだ?そんなにつえーのか?))
((半端ねぇよ、ただ今年には全員追い抜いてやるけどな、そのためのお前だ、それにさっきの、“俺様”じゃなくて“俺ら”でぶっ飛ばすんだ))
((これは正直腕がなるな!))
((それまで死ぬ気で特訓だ!))
「おーい!カイトー!」
「ん?あ、なんだルフトか」
「ん?なんだよ〜セニカちゃんじゃなくて残念だったか〜?」
「うるせぇよばか、あ、そう言えば今日姉ちゃんが帰ってくるからお前の家泊まらせてくれ、なんなら姉ちゃんが行くまで泊まらせてくれ」
「修行もあるし、ずっとは無理だけど、1週間くらいだったらいいよ」
「そんなに長く泊まらせてくれたら十分だ、さすが親友感謝するぜ」
「ただ1つだけ言っておく!」
「な、なんだよ」
「もしルミラ姉さんが俺の家に来てお前の居場所を尋ねられたら、俺はすぐにお前を売る!」
「あぁぁぁ!それだけは、、ルフトさん、、、勘弁してください、、」
「そうしたいのは山々だがカイトくん、俺は昔お前を匿って後々バレた後どうなったか分かるな?」
「ま、まぁ、俺、隣にいたし」
「そうだ、分かってればよし!もうボコボコにされるのは勘弁だ」
(ヴァイス先生の所も一応聞いてみよ、、、)
ルフトと別れた後、訓練期間中なのでそのまま2年の訓練場へと向かう。
ジリリリリリッ
「それでは訓練を始めるぞ」
「「「よろしくお願いします」」」
「後4日で闘技会だ、今日は2倍の重力で模擬試合をしてもらう。尚ルールは剣術のみとする。それと予選の日にちも決まった」
「おぉ、いつですか師匠?」
「3日後だ」
生徒全員の顔が変わる。
「今日の模擬試合は当たり前だが予選とは関係ないが、今日が予選だと思って気を引き締めてかかれ」
「「「はい!」」」
こうして朝の訓練が始まった。普段の3倍の重力と授業終わりにセニカと残って練習した甲斐もあり、なかなか模擬試合での2倍は苦にならなかったカイトとセニカ。結果セニカがアルベルトを押さえて1位がセニカ、決勝でセニカに負けたカイトは2位となった。
「やっぱ強いなセニカ」
「カイトも剣の腕が凄い速さで上がってきたね」
「シェインさんに毎日叩きのめされてるからな、こんくらい上達してなきゃやられ損だよ」
「よくやったな2人とも」
「あ、師匠」
「どうだ?シェインの元での訓練は」
「ぶっちゃけすげぇ厳しいですね、毎日のようにコテンパンになるまで練習しています」
「ほんと、いつか練習のし過ぎで倒れるわよ?」
「まぁ、ファミル先生に教えてもらった回復魔法があるから効率めちゃくちゃ上がってるんだけどな」
「しかし魔法も万能ではない、時には休む事も必要だ、それに明日と明後日は丁度学校が闘技会の準備で休日になるから、その時にしっかりと休むんだ分かったな?」
「は〜い」
「いいか?これは命令だぞ?」
「わ、分かってますって、、」
((絶対練習するつもりだな))
((変なとこで出て来んなよ))
午前の授業が終わり、午後の授業には行かないで予選に備え、そのままルフトと帰ることにしたカイト。ちなみに今日の武活はシェインとシエルの特訓の日なので休みである。
「てかさ、なんでお前たちも付いてきたわけ?」
「暇だったし」
「右に同じ」
キョトンとした顔で付いてきたラゼッタとセニカ。
「いいじゃんいいじゃん、人多い方が賑やかで楽しいじゃん」
「俺はいいけどシュリカおばさんは大丈夫か?それにお前ん家のうるさい姉妹」
「まぁ大丈夫っしょ」
ガチャ
「たっだいま〜」
「あら、早かったじゃんルフト、もう帰ってきたの?」
「おにぃ!」
「おにぃ!」
「今日はいっぱいお客さん連れてきたよ」
「おっすシュリカおばさん!今日からお世話になりますっ!それとミルとミアも元気そうだな」
「カイトォ!」
「カイトォ!」
ルフトの妹ミルとミア、ミルはおでこを出したショートヘアーで、ミアは前髪を下ろしたショートヘアー、双子の4歳でよく妹のエリーゼを連れて来て遊びに連れて来た事があった。
「はじめまして、ラゼッタです」
「セニカ・ルーストリアです」
「あらカイト、それに女の子もいるじゃん、まーたどっかでたぶらかして来たんだろー」
「違うって母さん、恥ずかしいからからかうなってもう、とりあえず上がってくれ」
「あがってー!」
「あがってー!」
「久しぶりに来たわー、お邪魔してますヴェスター叔父さん」
カイトはルフトの家に入り、壁にかけられた剣とネックレスに挨拶をする。それを見たセニカとラゼッタは少し驚く。
「気にしなくていいよあんた達、カイトはいつもうちに来たらあんな感じだからね、昔うちの旦那に色々可愛がってもらってたんだよ」
「そうだったんですね」
「とりあえず俺の部屋まで案内するわ」
そう言ってセニカとラゼッタを自分の部屋に案内するルフト。
「なんか飲む?」
「適当でいいよ〜」
「わたしもなんでもいいよ」
「んじゃ取ってくるから待ってて」
「どうだ?ルフトの部屋は」
「男の子って感じはしないわね、物も結構片付いてて、意外に几帳面なんだねあいつって」
「わたしもそれ思った、ルフトの事だから女の子の髪の毛とか落ちてそうだったのに」
「アッハハ、意外だったろ!」
そしてルフトが紅茶を持って来た後色々と談笑する3人。そして時間は夕方になる。
「てかセニカちゃんとラゼッタ時間大丈夫?」
「そうだね、もうぼちぼち帰らないとね」
「取り敢えず学校までの距離なら送れるぞ」
「え?いいの?」
「ヘーキだって」
「んじゃお言葉に甘えちゃおっかなー」
「その前にご飯食べていけよ、ルフトの母さんが作るグラタン鬼美味いんだぜ!」
「鬼美味いって言い方よ、、」
「たまにカイトって変な喋り方するよね」
「俺はもう昔から聞いてるし慣れたけどやっぱりそうだよな」
「流石にご飯まで頂くのはちょっと申し訳ないかな〜」
コンコン
「ご飯出来たわよ〜申し訳ないなんて考えないで、あんた達も食べて行きなさい!遠慮しないでホラ!」
「聞いてたのかよ」
「聞いてたんじゃなくて聞こえたんですー」
部屋を出て食卓にみんなで座る。
「今日は賑やかだね〜!」
「はしゃぐなって母さん、恥ずかしいから」
「あぁ〜久しぶりのシュリカおばさんのグラタンだ〜」
「さぁ!あんた達もどんどん遠慮しないで食べて行きなさいよね!」
「ありがとうございますシュリカおばさん!」
「んぅ〜、このグラタン美味し〜!」
「だろ!?鬼美味いだろ?」
「鬼美味いわね!」
「おにぃだっこー!」
「カイトー!」
ミルはルフトの膝の上に、ミアはカイトの膝であーんしてもらう。
「ミアちゃんとミルちゃんって本当可愛いねうちもこんなに可愛い妹欲しかったなー」
プニプニ
セニカがミルのほっぺをプニプニする。
「おねーちゃん、おにぃのかのじょー?」
「か、彼女ですって!?そ、そんな、、こんなバっ、、、おにいちゃんとはただのお友達よ〜」
「一瞬いつもみたいに俺の事貶そうとしただろ」
「カイトー、エリーねえはー?」
「今日はエリーは家でお留守番だよ、代わりに俺がいっぱい遊んでやるからなー」
「やったー!」
「セニカちゃんだっけ?これも食べてみな」
「ん!?これは、、美味しい!どうやって作ったんですか!?」
「これはね〜カイトが小さい頃にくれたアイデアから試しに作ってみたその名もカイト命名プリンというものだよ」
「プリン、、 名前も可愛い、味も最高、、天才だ、、、是非つくり方を!」
「あとでレシピノートに書いておくから持っていきな」
それぞれ色んな会話が展開されているルフト家に突如それは現れた。
((カイト、何か近づいて来るぞ))
((どうした急に))
コンコン
「あら?誰だい?」
ガチャ
*「久しぶり〜シュリカおばさん!」
「ん?あんたルミラかい!?久しぶりじゃないの〜」
「弟探しに来ました、いますか?」
「えぇ、今ちょうどご飯を食べてるわよ」
名前を聞いた瞬間、背中から冷や汗が止まらないカイト。
「悪いセニカ、ラゼッタ、今日送るの無理かもしんない、、」
「どうしたのカイト?」
「顔色悪いわね、あたし達は大丈夫だから少し休んだら?」
「う、うん」
席を立ち 、ルフトの部屋へ逃げ込もうとした瞬間、、
「あ、カイト」
「あ、姉ちゃん」
「こんな所で何をしている?今日私が帰って来ると予め聞いていたはずだぞ?なのになぜお前はここにいる?」
ボキボキ
「え、えー、今日は元々ルフトの家で泊まりに来る予定だったしー、そのー」
「今の話本当かルフト?」
「今日うちに泊まりに来ることを伝えられた次第でありますお姉様!」
「ほぉ?さっきお前から聞いた話とは全然違うな、帰って話でも聞かせてもらうか?」
「、、、、」
ルフトの裏切りにより更に状況が悪くなっていく。
「すいませんシュリカおばさん、こいつ連れて帰りますね!」
「ほどほどにね〜」
「それとルフト」
「は、はい!なんでしょうかお姉様!」
「明日はお前にもな」
「ひぃ!どうかご勘弁を!」
「許可など得るつもりはない」
ルミラに片手で腰を持ち上げられ、家から連れ出され人気のない森へと到着する
(あー、またいつもの奴か、てかここ俺の秘密の特訓場じゃん)
ドサッ
「いてーよ姉ちゃん」
「久しぶりに会ったんだ、いつものやるぞ」
いつものとは、カイトがルミラに対して苦手意識を持つ原因とされている修行だ。まだカイトとルフトが小さい頃に、男は強くないといけないと言い出し、人気のない所にルフトとカイトを連れ出し修行と称して一方的にボコボコにしたり、新しい技のサンドバックをやらされていたのだ。
「確かに修行して強くはなったけど、流石に姉ちゃんには勝てないって、、それに姉ちゃん加減とか知らないし」
「うるさい、許可などいらない、私がやりたいからやるのだ」
「もぉ〜、やるけどルールはどうするの?」
「いつもと同じ、なんでもありだ」
「はぁ、、んじゃ行くよ〜」
剣を構えるカイト、一方ルミラは腕を組んだまま動かない。
(いつまでもそのわがままが続くと思うなよ〜)
((頼むぞアッシュ、姉ちゃんに一杯食わせてやるぞ))
((任せな、魔力の補充もバッチリだ!))
「最初から全力でいかせてもらうぜ、アッシュ!」
肩から光の玉となってアッシュが出てくる。
「ほぅ、精霊が使えるのか」
『よっしゃ!行くぜ!』
『ウォーターキャノン』
「フンッ」
バシャン
ウォーターキャノンを片手で殴り飛ばす。
((姉ちゃんは格闘攻撃が得意だ、お前もそうだろ?少し時間を稼いでくれ、頼むぞ相棒!))
バシッ
背中を叩いてアッシュの気合を入れる。
((俺が終わらせてやるぜ!))
アッシュの大きさが変わり、カイトより少し背が大きくなる。
『烈拳』
『フルブラスト』
ドガァン
拳と拳がぶつかり合い、周りの木が風圧で傾く。
(あいつら、、本気も本気じゃねーか、、)
「喋れる精霊か?それにこの力と魔力、上級くらいはあるな」
『オラァオラァオラァ!!』
アッシュの繰り広げる連打を全て紙一重で避けるルミラ。
『ちっ、ちょこまかと!烈脚!』
ガシッ
「うちの弟がまだまだ未熟ですまんな」
『あぁ?』
『ファントム、、』
バリバリバリ
ルミラが技を発動しようとした途端、アッシュから電撃が流れてくる。
「ぐっ、、るぅあああっ!」
(もうあの痺れに対する抵抗の仕方男じゃねーかよ、でも時間は稼げた)
((もう大丈夫だ!巻き添え食う前に下がってろ))
((まだ遊び足りねえけど、、))
カイトの中に戻るアッシュ。
「ファミル先生と俺が一緒にかけて作った渾身の魔法だ!!」
『テンペストボルト!!』
雷を纏った竜巻がルミラに襲いかかる。
「この魔力、喰らったらタダではすまないな」
(ここまで成長したんだなカイト)
『エアフォース』
ルミラの体を黄緑色の光が纏う。
「なっ!無茶だろそれは!」
なんとルミラはカイトの放った竜巻の中を自ら歩いて入る。
「あまり姉をなめるなよカイト」
『ガイアブレイク』
バゴォンッ!!
かかと落としで地面にクレーターができた。
「ハハ、俺の魔法を蹴った勢いで飛ばすなんて、無茶苦茶だ」
「どうだ?降参か?」
「参りました」
「降参なんて認めんがな」
「、、、え?」
ポキッ
「忘れたか?いつものルールだとどちらかお互い再起不能になるまで続けるルールだったろ?」
ポキッ
『テレポート』
「あ」
シュン
「フゥ、最初にこの魔法を姉ちゃん用に覚えておいてよかった〜」
ドゴォン!
遠くの方でかなり大きい爆発音が聞こえた。
ガチャ
「ただいまー」
「あらカイト、お姉ちゃんとすれ違い?」
「ううん、途中で会ったけど逃げ出してきた」
「お前ー、まーたルミラを怒らせたのか〜?」
「父さんも言ってやってくれよ、いつもいつも修行修行ってうるさいんだよ」
「いいじゃねーか、お前の為を思ってやってくれてるんだから」
「にしてもいつもやり過ぎなんだよ、いつもいつもボコボコにされてるの俺なんだからな」
「ほれみてみろ、噂をすれば帰ってきたぞ」
「げっ、早すぎるだろ」
「よくも私をコケにしてくれたなカイト、今日という今日は!!!」
「母さん!助けてぇー!」
「落ち着きなさいルミラ、カイトも色々と最近忙しいから疲れてるのよ」
「母さんの後ろに隠れてないで、出てこいカイト!」
「ひぇ、、」
「そろそろご飯にしましょ」
「俺はいいよ、さっきシュリカおばさんの家で食ってきたから」
「あらそうなの?せっかく今日は腕によりをかけて作ったのに、、」
「そんな悲しそうな顔で見てくんなよ、食べるよ、丁度さっき身体動かしたし」
「そう!それじゃあエリーとアルちゃん呼んできてちょうだい」
アルトとエリーゼを呼んで、久しぶりに家族全員でご飯を食べる。ルミラから旅先での思い出や出来事を色々と聞いてエリーゼも旅に出たいと言い始めたり、ルミラのいない間の話を家の話をしたり色々と充実した食事だった。
「カイト、少し外に出て話さないか?」
「そんなこと言ってまた、俺を修行に連れて行くんだろ?絶対にやだね」
「いいからついてこい」
付いて行くことにしたカイト。
「どうだ?最近調子は」
「ん?どうって結構充実してるかな、もうすぐ闘技会もあるし」
「闘技会に出るのか?懐かしいな」
「え?姉ちゃんもウルミストだったの?」
「あぁ、そうだぞ」
「どうりでそんなに強いわけだな」
「まぁな、当時の私は八星の筆頭だったからな」
「えぇ!?姉ちゃんそんなに凄かったのか!?」
「当たり前だろ、当時は暴王ルミラと呼ばれていて、学園中の生徒に恐れられていたな」
「ッハハ、暴王ってまんまじゃん!闘技会での結果はどうだったの?」
「もちろん1年から3年まではずっと1位だ」
「やっぱバケモンだな姉ちゃんは」
その後も学園の話で盛り上がるが急にルミラの顔色が少し悪くなる。
「どうした?急に黙って」
「実はな、お前に話したい事があるんだ。そして今から言うことは、絶対に他言するなよ?」
「急になんだよ、シリアスな顔して、怖いよ」
「いいか?特に家族には決して言うな」
「いいけど、なんなの?」
「実はな、、、もしかしたら私はこの家の娘じゃないかもしれないんだ」
「、、、え?」
「実はな、旅先でルマリア王国と言う国での話なんだが、その国を歩いていたらみんなやけに私の事見て驚いた顔をするんだ」
「その時私はある魔物について調査をしていて、詳しい人がルマリアにいると聞いてそこへ向かったんだ、そして詳しい人の家まで着いた時、その人も同様に驚いた顔をしたのだ、気になって尋ねてみたところ、この国の女王そっくりの顔をしていたらしい、それから気になってその国の女王がどんな人物か一目見たくて見に行くと本当に私そっくりだったのだ、目には覇気もなく、どこか悲しそうにも見える顔だったがそれでも驚くほど似ていてな、気がついたら後日謁見に行ったのだ。正直何故私も行ったかは分からない、そして謁見の間に呼ばれ女王が私の顔を見た瞬間、広間にいた人達を全員退出させて2人きりにさせられたのだ」
「女王は全員が退出した途端、涙を流し私をルリアという見知らぬ名前で呼んだのだ、見知らぬ名前を聞かされ知らぬと答えたら、女王が色々と説明をしてくれた。18年前当時産まれたばかりの私は他国の刺客に攫われ、当時国王だった夫と3歳だった息子を惨殺され、一夜にして全てを奪われてしまったと。その娘の名前はルリアと言い、右の口角の下にホクロがあるのが特徴的だったと言うのだ」
「姉ちゃんと同じだな、確かの口角の下にはホクロもあるし、姉ちゃんだけ俺たちと髪色も違うし、母さんとも父さんとも似ていないし、、」
「私もその時全て合点がいったよ、昔住んでいた部屋を見せられた時はどこか懐かしさも覚えていたし、初めての感じがしなかったんだ」
「そうか、、それじゃあ姉さんはどうしたいの?」
「向こうは直ぐにでも引き取りたいと言っているが、まだ親しくもなれてないし、攫われたとはいえ、今の家族に大事に育てられたのは事実だからな」
「もしかして攫ったのは母さんと父さんって訳ではないよな!?」
「あぁ、その辺は私が調べた、攫われた私を助けてくれたのは今の父さんだったらしい、その後身元が分からないため引き取ってくれたのだ」
「、、家族だよな、俺たち、、」
「急にどうした、当たり前だ」
「でもいつか決めなきゃいけないんだろ?大丈夫だよ、あっちを選べって向こうは言ってるけど、選んだからって俺たちは家族のままだ、何にも変わることはないよ」
「そうか、、ありがとうなカイト」
「やっぱり一緒にいてあげた方が多分いいよな」
「私もそう思う」
「18年も死んだと思って離れ離れになって、本当は生きてたって凄い嬉しい事だよな、俺だったら」
故郷の妹の顔が頭に浮かぶ。
「あぁ、私の顔を見るまでは表情も声もまるで死人のようだった」
「母さんと父さんにはどうやって言うんだ?もし辛かったら手紙にするか俺が言おうか?」
「直接私が自分の口から言うよ」
「そうか、、いつまでいるの?」
「丁度闘技会が終わるくらいだな」
「じゃあさ、俺が優勝するの見ててくれよ、もうずっと姉ちゃんに虐められてる弱っちい弟じゃないって事を見せてやる、それだったら少しは安心して向こうにいけるだろ?」
「全く、、私に指一本触れられないお前が優勝するとは思わないけど、少しは安心できるな」
「一言余計だろ、まぁ取り敢えず忘れんなよ、何処に行っても、本当の家族が見つかっても、俺たちは家族だからな、いつでも気楽に帰ってくればいい、誰も姉ちゃんの事よそ者扱いしないよ」
「ありがとうなカイト、お前が弟で本当に良かったよ」
「俺も、俺を虐めてる時の姉ちゃんは苦手だけど、いつもの姉ちゃんは大好きだよ」
「バカ者」
後ろを振り向き膝に顔を埋めるルミラ。
「さーて、俺は明日も早いし帰ろっかなー」
「、、、グスッ」
「風邪引かないうちに早く帰れよー」
こうしてカイトとルミラの久しぶりの会話は終わった。