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第1章 孵化



ファミルが精霊をカイト達に託してから3日後、いよいよ今日器に入っている光の玉が精霊となって誕生する。それとファミルがいなくなってからは魔法の修練は他の先生のもとで授業を受けることを勧められたが、今は闘技会に向けて色々練習もしたいし、何よりファミル先生からは色々と課題が残されているので、それがちゃんと出来て、何もする事がなくなってからまた決めるという選択肢をカイト達はとった。ちなみにカイトの姉のルミラの到着は急用ができて明日になったのだ。


朝の訓練が終わり、魔法の修練場で集まる3人。


「いよいよ今日ね、なんだか緊張するわね、、」


「どんな精霊が出るんだろうね」


「何してんだカイト?」


「お祈りだよ、強くてカッコいい精霊が誕生しますようにと、なにせ俺のは最上級精霊かもしれないからな」


「そんな変などこから採ってきたかわからない草を両手で持って、やっぱりカイトってどこか抜けてるよね」


ファーンッ!!


「おっ!?」


「なになに!?」


ルフトの器が突如光り出した。


ピキッ


ピキピキピキ


パァンッ!


「眩しいっ!」


「何にも見えないよ!」


全員が目を手で覆う、やがて光は消える。


「あれ?何にもいないじゃないのよ」


「でも器は粉々だよ?」


「うわっ!ルフト!お前頭の上」


「ん?」


バサッ


ルフトの頭を見ると、そこには6枚の翼が生えた鷲が気高く止まっていた。


「かっけー」


思わず見惚れるカイト。


「これが、俺の精霊、、、」


「見た感じ風属性っぽいよね」


「よかったじゃんルフト!自分の適正と同じ精霊じゃん!」


「うん、、」


不思議そうに自分の精霊を見るルフト。


「どうしたんだ?パッとしない顔だな?嫌だったか?」


「いや、正直こんなにも凄い精霊を自分が持ってていいのかなって思って」


「らしくないわね、そんなにクヨクヨしてどうすんのよみっともない、先生も言ってたけど、あんた実力がなかったら精霊と契約なんか出来なかったんだから、認めてもらった以上はビシッと胸を張りなさい!」


「今俺が言おうとしてた事全部言われたけど、胸を張れよ、お前がこれから悩まないといけないのはコイツをどう使うかだ」


「そうよ、ルフトだったら絶対に使いこなせるよ!一緒にみんなで頑張ろ?」


「うん、ありがとうみんな」


ピキッ


「ん?次は誰だ?」


「あたしよ!」


今度はラゼッタの器にヒビが入る。そしてルフトの時と同じように光を放ち姿を現わす。


「これはー、、、妖精?」


ラゼッタの前に現れたのは、黒色の髪をした手のひらサイズの妖精だった。


「綺麗ね〜」


ラゼッタの周りを黒い羽を広げて飛び回る。


「妖精か〜、一度見てみたかったのよねー」


「どんな魔法使うんだろうな」


「育てるのが楽しみだわ!」


ピキ


「お!」


「いよいよわたしね、ずっとそわそわしてたんだから」


セニカの器が光り出す。


ピカーン!


「ちょっ、光強くない?」


「なんか暑いぞ」


少し経つと光と熱が引いて、セニカの目の前に現れたのは。


「まじかよ、、、ライオンの子供?」


そこには、白い獅子の子供が立っており、首元がチリチリと炎が立っている。


「強そうだねー」


「大当たりじゃね?」


コツン


「イテッ、悪かったよ〜」


鷲の精霊が我の方が当たりだぞ?と言わんばかりに嘴でルフトの頭を小突く。


「これがわたしの精霊、、」


「ゴロゴロゴロ」


小さな獅子はセニカの足元に頭を擦り付け伏せた。


「かわいい、、」


「見た感じ火属性っぽいよな」


「俺のはいつくるんだ?」


再び自分の器を見るが、なんの反応も変化もないまま、淡く光っている。


「まーた、変なお祈り始まったよ」


3人は自分たちの精霊に名前を付ける事にした。ルフトの精霊はフィスと名付け。ラゼッタの精霊をリリー。セニカは悩んでた所にカイトがいくつか候補を挙げ定番のレオと名付けた。そして各々自分の精霊の能力を確かめている間、カイトはひたすら自分の器に向かってお祈りを捧げ、たまに闘気を交えた魔力を注いで強化を試す。


「ツヨクナレー、サイキョウデアレー、ハヤクウマレロー」


「レオ!出ておいで!」


セニカが名前を呼ぶと精霊がセニカの体内から現れ、もう1度合図や名前を呼ぶと体の中へ戻る。何故精霊を体内にいちいち戻すか。ファミル先生によると、これは精霊を普段使わない時には体内で休ませ、魔力を補充させ、使う時に補充した魔力を使って出てくるのだ。もちろん出している間も魔力を補充する事が出来るのだが精霊としては体内にいる方が居心地がいいのか体内にいる事が多い。


そして精霊の成長は契約者が成長すると自動で一緒に成長していく仕組みだった。なので契約者が弱ければ精霊も弱いままで、精霊だけがぶっちぎりで強くなることはないのだ。しかし最上級精霊にはその限度が無いらしく、魔力を吸わせたり、戦わせているだけで勝手に強くなっていくのだ。


「リリー戻りなさい」


小さな妖精の姿をした精霊がラゼッタの体の中に光の玉となって戻っていく。


「フィス!」


ルフトが名前を呼ぶとフィスがウィンドスラッシュを放つ。命令は直接させたい事を念じるだけで使い、自動で自分に合わせて戦わせる事も出来る。


こうして午後の授業の時間は終わった。


「あれ?カイトは?」


「なんか拗ねて武活行っちゃった」


「それじゃあ武活わたしも行ってくるね〜」


拗ねて武活に行ったカイトを追いかけるようにセニカが急いでカイトの後を追う。


(ちくしょー、なんで俺だけこんなに遅いんだよ)


「何かあったのか?」


シェインがカイトの様子を見て尋ねる。


「いやね、3日前に精霊の卵みたいなの貰ったって言ったじゃないですか?」


「お前が大事そうに持っていたあの箱か」


「そうですそうです、それが今日他の全員が孵化して俺だけまだなんですよぉ〜」


「いずれ孵化するだろ、何をそんなに焦っている」


「だってなんか置いてけぼりくらったみたいじゃないですか〜」


「そんな事で置いていかれるほどやわな鍛え方はさせていないぞ?」


剣をカイトの目の前に投げつける。


「剣を取れ、そのクヨクヨしている顔を叩き直してやろう」


「使いかたそれで合ってるんすか?まぁいいですけど、ちょうどモヤモヤしてたんで手加減はできませんよ?」


「フッ、こちらのセリフだ、早く“手加減”している私から一本取ってほしいものだ」


「考えても仕方がない、今は目の前に集中だ」


ジリッ


「オラァ!」


ズバンッ


「もうその手は飽きている」


クローンを斬った後訓練場の入り口に向かって喋りかける。


「えー!今のクローンって見破りますか!?」


「分からなかったが剣筋を見て、いつものお前とは少し違っていたからな」


「なるほど、、せっかくいい芝居できたと思ったのになぁ、もう少し精度を上げる必要があるな」


「来なければ、こちらから行くぞ!」


ダッ


カイトに向かい突きを放つ、闘気を纏い手で掴もうとした瞬間、剣先が4つに分かれる。


ピタッ


「どうした?いつもと少し調子がっ!!」


ボフン


カイトと思っていた人物が突如爆発し煙を撒き散らす。


「ここだぜ!」


シェインの真後ろにテレポートしてきたカイト。すぐさま剣を横に振るうがしゃがんで避けられ、手を掴み。


『ウォーターロック』


ゴボゴボゴボッ


(あれもクローンだったか、本物と見分けがつかないくらい実は上手くなって“いた”のか)


『ライトニングボルト』


あらかじめ刻印を刻んだ火と水で生んだ雷雲をシェインの頭上に展開する。


ズゴォン!!


『テレポート』


カイトの頭上に飛ぶシェイン。


「自分の居場所を教えたのが間違えだったな」


『百刃』


無数の刃がカイトを襲う。


(くそ、テレポート使えたのかよ!)


魔法に闘気を練る。


『ロックバルカン』


ドゴゴゴゴゴゴッ


(煙で見えなくなった、絶対くる!)


『狼牙・一噛ミ』


(くっ、もう魔法剣の二刀流かよっ!)


右の首から火の剣と左の脇腹から風の剣が同時に名前通り噛み砕いてくる。すぐさま右手の剣に水を纏わせ、左手に闘気を纏わせ防ぐ。


ガキィンッ!!


「よく防いだ」


『狼爪・二裂』


(コンボ技かよ!)


すぐさま次の剣技が放たれる。


『エレキウェーブ』


バチバチバチッ!


四方八方に雷を放つ。


それ見たシェインはすぐさま技を中断し、後ろへ下がる。


「強くなったな」


「もう、、限界っす」


バタン


「すいませ〜ん、少し遅れましたー!ってあれ?カイト?」


「今着いたのかセニカ、ちょうど今手合わせを終えたところだ、どうだ?次はお前が相手をするか?」


「しんどー!今がチャンスだぞセニカ、俺がちょっとだけ弱らせといたわ」


「やめとくね今日は」


「そうか、それでは練習するか」


「「はーい」」


それから少し日が暮れるまで練習をし、家に帰るカイト。リュックから精霊の入った器を取り出し喋りかける。


「いつになったらお前は産まれるんだよ、、」


「おーい、聞こえたら契約した日みたいに喋りかけてくれよ〜」


「、、、、」


淡い光を放つだけで、もちろん返事は何もない。


「あぁー、ダメだー」


ガチャ


「ただいま〜」


「にーに!うまれたー?」


「生まれてない、多分明日になったら産まれるんじゃねーの?」


「エリーたのしみだったなー」


かなり楽しみにしていたエリーゼは少し落ち込み、それ見てカイトも少し落ち込む。取り敢えずご飯を食べる。


「なんにもかわらないねー」


「そうだな、産まれる時はピキってなって光るんだよ」


「そうなのー?いまうまれないかなー」


ご飯を食べながらいつ産まれるかわからない器を食卓に置きエリーゼと様子を伺うカイト。


「アァー!」


「こら、アル、食事中は大人しくするんだぞ」


「カイト?こんなところに置いたら邪魔じゃない、楽しみなのは分かるけど、違うところに置きなさい?」


「気になるからいいじゃん」


「もうー」


そして食べ終わった後、風呂に入っている途中。


パリンッ!


「エェェェェン!!」

「アァァァン!!」


(また何か喧嘩したのか?全く、、)


「カイト大変!」


「どうしたのそんなに慌てて」


「あなたが大事にしていた箱が」


「まさか!!割ってないよね!?」


「エリーとアルちゃんが取り合いになって、、」


バッ


すぐさま風呂から出てタオルを巻いてリビングへと向かう。


「あああああああああ!!!!」


器の取りに合いになって地べたに尻餅をつけて泣いていたエリーゼとアルトの間にはカイトが大事にしていた器が原形を留めないくらいに粉々になっていた。


「エェェェェン!!われちゃったよー!!」

「アァァァァァン!!」


「最悪だ、、、」


その場でぐったりするカイト。


「カイト?ごめんね、私がちゃんと見ていなかったせいで」


「もう、、いいよ、、、」


部屋へと引きこもろうとした瞬間。


*「イテテ、全く起こし方が乱暴過ぎるぞ」


「エェェ、、」

「アァァ、、」


「カイト?何?この生き物は?」


「ん?」


そう言って後ろを振り向くカイト。そこには仮面を腰に2つつけた小さな濃い赤色の短髪をしたリリーと同じサイズの精霊が浮いていた。


「もしかしてー、君が俺の精霊?」


*「そうだ!どうだ!?強そうだろぉ!?」


「うぉぉぉぉ!!やっと孵化しやがったのかこの野郎〜!!」


スリスリスリスリ


*「なっ、ちょっ、離しやがれ!俺様はこう見えても、、ダァァァッ!!しつけぇよ!」


「グスッ、だって俺、器壊れたからてっきり、、グス、死んじゃったと思って、グスッ」


*「あれくらいじゃあ俺様はしなねぇよ!ったく、人が孵化しようとしてるのに闘気なんか流し込みやがって、お陰で遅れちまったじゃねーか!」


「え?あれ、俺の所為だったの?」


*「ったりめーだろ馬鹿野郎、俺様が闘気を使えてなかったら更に遅れてたぞ?」


「闘気使えるの!?」


*「おうよ!なにせ俺様だからな」


「ちょっとカイト?お母さん状況がよく分からないわ、取り敢えず精霊様は孵化した事で良いのよね?」


「あ、ごめんつい、、そうみたい」


「初めまして精霊様、カイトの母のカミラでございます。息子は色々至らない点は御座いますが、根は優しい子なのでこれからはカイトの事をよろしく頼みます」


「ちょっ、母さん、急に恥ずかしいって」


*「任せときな、それとそこまで礼儀正しくしなくていい、そういうのは嫌いだ、普通に接してくれてかまわねぇよ」


「わかりまし、、分かったわ、所でお名前は?」


「あ、そうだ、名前つけるんだったな」


*「しっかりカッコいい名前を付けて貰うぜ」


「にーに、ごめんなさい」

「アゥ」


「ん?いいよいいよ、無事だったみたいだし」


「さわっていい?」

「アァー」


「いいぞ、今日からそいつがうちのペットだ」


*「おい、勝手に許可を取るな、それと誰がペットだ」


「取り敢えず名前はー」


「キャハハ、プニプニしててやわらかーい」

「アァー!」


*「早く決めてくれ、こいつらにめちゃくちゃにされる前に、早く」


「取り敢えず何が得意なんだ?色々特徴とか教えてくれ」


*「俺様は前世の記憶が少しだけあるが思い出せなくてな、たしか何処かの長だったんだが、それだけは覚えているんだが、、、あとー、そうだな素手での戦いが得意だ」


「その腰に付けている表情のついたお面なんだ?」


*「俺様にも分からん」


「そっか、お面、、素手、、記憶、、赤髪、、」


「よし!決めた!」


*「なんだ?」


「アッシュだ!」


「何がどうなったらアッシュになった?」


「ぱっと見だ」


「じゃあさっきの質問意味ねえじゃねーか」


「取り敢えずよろしくな!アッシュ!」


「あぁ、しっかり俺様が強くなるため早くお前も強くなれよ?」


バシッ


こうしてカイトは無事自分の精霊を手に入れることが出来たのだ。



======================



シュウウウウウ


そこは辺り一面草木が1つもなく、生物すらもな寄りつかない場所。


理由はそこに棲息している生物が原因とされている。その生物の名は竜喰らいの悪竜ヴリトラ、何故そこに棲息しているかも謎で、いつから棲息してたかも謎である。


ただひたすらなにかを待つように眠るその竜は滅多な事では目を覚まさない。


ゴゴゴゴゴッ


地面が激しく揺れる。


何かを感じ取り目を覚ます悪竜。


顔を上げ、空を見上げると黒い雲が渦巻いて、やがて2つに割れた後、穴が出現する。


すると数年に一度しか起きない竜はなんと、数十年ぶりに体を起こし


数百年ぶりにその場から動く。


少し前へ進むと2つに割れた大きな穴からは、鎖で巻かれた長方形の物体が降りてくる。


ガコンッ!


やがて元々悪竜が眠っていた位置までゆっくりと降りて、地面に着く、すると鎖が四方八方に飛んでいき地面に突き刺さり、その場で固定された。


それを見た悪竜は物体の前に戻り、再び眠りについた。


遥か昔、アグシュカとは別の世界であるルグドラでその物体と悪竜を研究していた学者がいた。


長年の研究の成果、その物体が巨大な扉だというのが分かった。扉の前で眠り、それを守っているように見えた学者はその巨大な門を開かずの門『ヴリトラゲート』と呼んだ。



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