異世界の布団文化遅れすぎじゃね?
思いついて3時間で書き上げた、ネタ小説ですがよろしければお付き合いください。
俺は布団瓜生28歳独身。
東京都の下町にある布団屋の息子として生まれた。
2018年現在様々な布団が売り出されているわけだが、最近の布団はすごいぞ。
完全に圧力を分散してくれる布団や空気であっという間に膨らむ布団、寝ても湿気が抜けていく布団、ひんやりする布団、あったかくなる繊維でできた布団本当に色々な布団がある。
俺はそんな布団を大学に進み研究開発していた。
苦しい家計の中で俺を大学に行かせてくれた両親のために何とか恩返しがしたかったので来る日も来る日も布団について研究し続けた。
そして今、日本に存在する布団会社ほぼすべてとコネクションを持った。
「これで恩返しできる!」
そう思った矢先だった――
父親が病気で倒れた。
そしてそのすきをついて地上げ屋が現れた。
安いホームセンターができた結果売り上げが落ちていた。
借金はかさみなんとか早く返そうと頑張っていたのがあだとなったのだ。
そして今、母と俺の目の前に地上げ屋がいる。
黒服サングラスいかにもな連中。
「なんだお前らは!」
「はーわてら金本不動産のものです。お宅の借金がいつまでたっても返していただけないので直接受け取りに来ました」
「1週間先までに返せないならこの店つぶさせてもらうしかないですわ!」
「待ってください夫が倒れて大変な時期なんです必ずお返ししますから」
母が必死に頼み込む。
「待てません。社長に怒られちまうんですよ」
「そこをなんとか」
「いやー悪いとは思ってますよでも仕方ないですよね借りたお金は返してもらわにゃあいかんのですわ。そんじゃまた来ますんでそれまでにここを開ける準備をして置いてくださいや。ま、返せるんいうんやったら返してもろうてもかまいませんが。がっはっは!!!」
大きな笑い声を上げながら店を出ていった。
「母さんなんであんな奴らに金を借りたんだ?」
「最近売り上げが悪くてお金に困っているところに彼らがやってきて年利0%で貸してもらえるっていうから借りたのだけどこんなことになるなんて……」
「母さん……俺が何とかするよ!だから安心して待っててくれ」
その後、周りに聞き込み調査や相談センターに行ってわかったことだが他にも同様の手口でやっていたらしい。
その方法だが、まず客が寄り付かないように悪いうわさを流す。
金に困ったところに金を貸すと現れる。
借りたところでさらに悪いうわさを流し客を減らす。
あとは俺が身を持って体験したとおりだ。
「畜生、奴ら最初からこの土地が狙いだったんだ!!!俺がいない先に好き放題やりやがって!!!」
俺は憤慨していた。絶対に許せない!!」
しかしどうしたものか。
借金は1000万。まともな方法で1週間で返せる金額じゃないな。
……無理だ
一息つくために部屋に転がっていたラノベに手を出した。
異世界転生物はやっぱり面白いよな。
現代の技術を使って金儲けしたり、尊敬されたり。
「そうだ。異世界行こう。」
俺のもつコネクションは布団業界だけだ。
各企業に相談してみよう。
その日1日は100件近く電話した。
99件に頭大丈夫ですか?と聞かれて諦めようとしたときだった――
「はい。行けますよ」
「は?」
「行けます。うちに試作機があります。もし興味があるようでしたらいらっしゃってください」
「行きます行かせてください!!!」
興奮を抑えきれず指定の場所に向かった。
ISEKAI(イン・シーム・エンジン・開発研究所)略称異世界研。
受付にいき、用件を伝える。
そのままエレベーターで7階に向かう。
目の前に白衣を着たさえないおっさんがいた。
「ようこそ我が社へ」
「どこですかそのシステムと言うのは!」
「こっちだ。ついてきたまえ」
そのままさえないおっさんに連れられついていく。
「これだよ」
目の前にあったのはただの布団だった。
ただ見慣れない装置が枕元に置いてある。
「ここに寝てくれたまえ」
いたって普通の寝心地のいい布団だ。
少々機械のあげる音がやかましいがそれほど気になるほどでもない。
目をつむり羊を数えているといつの間にか気を失っていた。
目覚ますとそこは知らない天井だった。
いや元々研究所の天井も見慣れてはいないのだが――
小さな木組みの小屋にポツンと布団だけが置かれている。
目の前の扉をあけ外に出た。
そこは山だった。
目の前には山々に囲まれている。
ガタガタと何かを転がす音が聞こえる。
音のなる方を向くと動物が荷車を引いていた。
その動物は――ケンタウロスだった。
半人半獣の伝説の生き物が直立二足歩行で人力車を引くように荷車を引いていたのだった。
この奇妙な光景を見た瞬間。ああ異世界に来たんだなと改めて気づいたのだった。
「あのー。そこどいてもらえませんか?」
ケンタウロスに話しかけれられた。
えっていうか日本語話してる?異世界なのになんで言葉を理解できるんだ?
うーーーーーーーーーーーーーーーーーーん?
あ!――もしかして睡眠学習ってやつか?
凄えぇな!!!おい!!!異世界ベッドやべーーってかこれ売れば借金返済できるんじゃね?
ふぅうううううううううううううううううううううううううういぇいwwwwwwwwwwww
テンションが爆上がりしておかしなことになっていた。
「うわ。気持ち悪。危ない奴だ関わらないでおこう」
そういうとケンタウロスは俺の隣を通り過ぎていった。
気になるのは個々の文明レベルだ。
もし、俺のいる世界よりも文明が発展しているのであれば俺が来た意味がない。
まずは、どのような環境で暮らしているのか調査しなければ。
あたりを見渡すと洞窟を見つけた。
くらいが見渡せないほどではないので入っていく。
「だれだ?」
「すいません隣の家の者なんですが」
「隣は空き家のはずだ」
「今日引っ越してきたんです(布団でだけどw)」
「こんなところに引っ越してくるとは変わった奴だそのまま進んで来い」
中から出てきたのは巨大な竜だった。
「どうもこんにちは。布団瓜生と申します」
「人間の癖に我を怖がらないのだな」
「あ、アニメで見ていて見慣れてるので、あとゲームで何回も戦ってるので」
「そうか――じゃあ取り繕う必要はないな」
「え?」
そういうと人間の姿になった。
「いやー疲れるわぁーやっぱ人間モードのほうが楽ね。マリーといいますこれからよろしくお願いします」
「めっちゃ丁寧かよw」
「引っ越してきたばかりで分からないことが多いので少しお話させてもらってもいいですか?」
「いいわよ。とりあえずこっちへいらっしゃい」
「どうかしました?」
「いやぁ、遠くから来たもので内装が目新しくてついつい」
「ふぅんずいぶん遠くから来たのねぇもっとみるかい」
「お願いします」
「すいません自分は寝具の店をやっていたのですがどのような布団を使っているのか見せていただいてもよろしいですか?」
「寝室はちょっとねぇ」
「そこをなんとかお願いします」
「…わかりました。すこしだけですよ」
洞窟の奥へ行くとそこには驚きの光景があった。
「藁だけ?」。
「おかしなことを言うわね、これが普通よ」
何故だ!?なぜ寝具だけこんなに文明度が低いんだ!!!
許せんこんな状況は許せんぞ。布団屋としてこの状況を変える!絶対にだ!
「寝心地わるいなぁって思ったことありません?」
「少し硬いですけど別に大したことないですよ?」
「ちょっと今から持ってくる寝具を使っていただいてもよろしいですか?」
「え、いやよ寝具が変わると寝れなくなるタイプなのよ私」
「私の布団をつかったらもう戻れなくなりますよ待っててください今から持ってきますから」
そういうと小屋に戻った。
異世界布団に寝る。
「日本に戻りますか?」
脳内に語り掛けてきた。
「布団を仕入れに行かなければいけないからな」
「その必要はありません。あなたが構造をよく知っていて布団程度の大きさのものであれば魔法で作ることができます。」
「まじで?!」
「まじです」
「んじゃよろしく」
「10分ほど寝ていただきます」
「オーケー」
目を閉じ眠る。
そして何事もなかったかのように目を覚ました。
「お目覚めですか。昨晩はお楽しみでしたね」
「いや、一日も寝てないんだけど!?ていうか女の子連れ込んでもいないんだけど!」
「クリエィトゥウウウウウウウウって叫んでみてください」
「え?!それ呪文?!おかしーだろぉおお」
「うるさい早くやれ」
「ク、クリエイトゥ」
目の前に一般的な羽毛布団が現れた。
「こ、これはすごい!!!これで俺も異世界主人公だああああああああああ」
「落ち着いてくださいマスター」
「あ、すいません」
「気をつけて欲しいのは詳しく構造を知らないものは作れないということです」
「ちぇ。じゃあ銃作ったりメイドロボ作ったりはできないのか」
「夢見ないでください」
「今も夢見てるようなものだけどな」
「うまくないです」
「それにしても睡眠学習さいつよかよ」
「マスターその言い方は古いです死語です」
「え?」
「え?」
「まあ、いいや行ってくるわ」
「いってらっしゃいませ」
洞窟に戻りドラゴンのもとへ向かう。
「マリーさーん持ってきましたよ」
「それがフトンってやつなの?」
「そうですぜひ寝てみてください」
「え、うわなにこれめっちゃふかふか。これもう返さないからな。我の我のぉー♪」
布団に寝ながらものすごく喜んでいる。
やべぇドラゴンめっちゃかわいい。
「おまえめっちゃいい奴だな我のシモベにしてやろう」
「しもべはちょっと友達でお願いします」
「ふむ、それもいいな。友達かぁ――友達初めての友達なのだぁ」
そういうとニヤニヤしている。
そんな姿を見て幸せになっていた。
「ところでなにか我に恩返しさせてほしいのだ。望みはあるか?」
「実は実家がピンチで布団を売りに来たんだけどこの辺は人がいないんですね」
「それじゃ我が、王国まで送ってやるぞ」
「頼みます」
そういうとドラゴンは竜形態に変身した。
魔法で浮かされて背中に乗る。
「しっかりつかまってるのだぞ」
「了解です」
大きく翼をはためかせ空へ舞うと音速で洞窟を飛び去った。
巨大な城壁に囲まれた都市が眼下に広がる。
その中でも一層大きな建物へと向かってゆっくりと下降していくと大勢の人がわちゃわちゃしている。
軽装の鎧をまとったその姿から兵士であることがうかがえる。
「緊急!緊急!ドラゴン襲来直ちに砲撃を準備せよ!!!」
「やばくないですかマリーさん!」
「なーに大丈夫、我の鱗は伝説の鉱物と言われるミスリル銀でも傷一つつかないのだ」
「撃てええええええええええええええええええええええええええええええ!!!」
無数の砲弾や魔法の弾がこちらへ向かって飛んでくる。
あまりの量に躱すことは不可能だろうと思われた。
しかし音速で飛べる竜に躱せないものなどなかった。
そのまま急降下し王城へ向かう。
幾多の兵士が待ち構えているがこのドラゴンの前では無力だろう。
「王を出せ今すぐにだ!」
「すいません布団売りに来ただけなんですけど」
「は?」
「いやだから……」
「捕らえろおおおおおおおおおおおお。まったく王を殺しに来るとはなめられたものだな」
「動くな!!!!」
ドラゴンの咆哮で兵士たちは震えあがり動けなくなった。
「おとなしく案内しろ。そうすれば命までは取らないでおいてやろう」
「わ、わかりましたぁあああああああああああああああ」
こうして王のもとまで案内された。
あたりを緊張感が覆う、城に攻め込まれてなすすべがないもののかなり警戒されている。
大きな扉が開けられ玉座の間へと通される。
かなり年を食って白髭を生やした王様がそこにはいた。
「何が望みだ」
「寝具を買っていただけないかと思い参上つかまつりました」
「え?」
「我が社が開発した寝具をぜひ王様に使っていただきたく参りました。つきましては王室まで案内して頂いてもよろしいですか?」
「いや、え?、宝とかワシの命とかじゃないの?え?売り込みに来たの?えーー」
「ぜひお願いいたします」
「んーまぁいいけどさぁー。緊張して損しちゃったよというかちょっと期待してたのに。最近年のせいで体ばっきばきでさぁもう死んでもいいんじゃないかなぁって思ってたからセリフまで用意してたのにさぁ……」
何故かがっかりしている王はぶつくさ言いながらも案内してくれた。
部屋に入るとベッドが置かれているがシーツ一枚だけ。
「これでは痛くなるでしょうわたくしがおつくりいたします」
メジャーを魔法で作り王様の体を測定、角度計で首の角度、腰の角度を測る。
最適な角度を調べ、布団を作る。
「クリェイトゥウウ」
やめてくれそんな目で見ないでくれ。
俺だって好きでやってるわけじゃない。
分散分圧使用で体にフィットし本来負担のかかりすぎる、お尻と腰、そして首にぴったりとフィットし一部にかかる負担を全身で統一することで楽にしてくれる最新式の布団を作った。
「寝てみてください」
「変な寝具だなこんなものの上に寝るのか。もの凄くふかふかしておる。ぬお。うほ。ひゃっほーおおおおおおおい」
「いかがですか?」
「最高!わしもう死んでもいい!」
「陛下冗談でもおやめください」
「えーいうるさいお前もねてみろ!」
「これは最高ですね」
「じゃろ?」
「おい、これを100個持ってまいれ」
「100個ですか……お時間をいただければやってみせます」
「うむ待つぞいくらでも」
「それと販売ルートを用意して頂けないでしょうか」
「わかった。わしの墨付きをつけて店も用意しよう」
「ありがとうございます」
「それと褒美の品も渡そう」
こうして宝石類、金塊などをもらいドラゴンに乗り飛び立った。
元の場所につき異世界布団に眠り現実世界へ戻った。
おやすみ。バイバイ異世界。
目を覚ますと異世界研に戻ってきていた。
「やぁお帰り」
「おはようございます」
「その手に持っているのは何かな?」
「やってやりましたよ金換金しなきゃ」
「うんうん成功したみたいだね実験は成功だ。これからも実験に付き合ってもらうよ?」
「ええ」
次の日買い取ってもらうため買取ショップに向かい買い取ってもらったところ三千万ほどになった。
数日後、地上げ屋がやってきた。
「1000万きっちり払ってもらいましょうか?」
「ふふふ……もう一回いってくれないか」
「1000万払えつっていってんだよ!」
「証書渡してくれる?」
「あ?!」
「金はあるこの店は渡さねぇ!以上!」
「へ?まじかよ?!どうやりやがった?」
「布団を売ったのさ布団屋らしくな」
「……まじかよ」
「まじだよ」
「ちょっと待ってろ。ボスすいません。金用意されてまして。ええ、はい」
「今日までに振り込めばもう手を出さないそうだ。よかったな」
「おつかれさん。二度とくんじゃねぇぞ。」
「ありがとう。あんたは私の誇りよ」
涙が出るほどうれしかった。
ぎゅっと抱きしめて、俺も抱きしめた。
こうして事件は解決したのだった。
つづく…?
読んで下さりありがとうございました。