エピローグ 村人A、帰る
「はぁー楽しかった」
「そう?」
「はい。とても」
「よかった」
村人Aと冬の女王はずっと協力プレイをしていた。最後は、ラオシャンロンを倒して、終わりにした。
気付けばもう夜になっていた。
夜道は危険だが、仕方ない。
早く帰らなければ、母さんに叱られてしまう。
「冬の女王様、貴重な体験、ありがとうございました。この思い出は一生忘れません。それではぼくは、もう帰ります」
村人Aは言った。
「そ、そう。それはよかったわ」
「はい。それではさようなら」
「……」
村人Aはお辞儀をして、扉を開けた。
「……ま、待って」
「はい?」
冬の女王に呼び止められ、村人Aは振り返った。
「……」
村人Aは怪訝な表情で冬の女王の言葉を待つ。
だが、冬の女王はしゃべらなかった。
「なんですか。なにも用がないなら、ぼくはもう帰りますよ。早く帰らないと、母さんに怒られてしまいます」
「え」
「はい?」
「あの……」
あの、と言った後、小さな声で冬の女王は何かを言ったが、村人Aには聞き取れなかった。
「ううん。何でもない。バイバイ」
「……」
冬の女王は何でもないとごまかして、バイバイと言って、寂しそうに村人Aに手を振った。
「なんですか」
「なんでもないわよ。バイバイ」
「なんでもありますよ。ぼくは、やられたらやり返すまで、根に持つタイプなんです。冬の女王様はなにかを隠しましたね? 白状するまで、ぼくは帰りませんよ」
「ほんと? ほんとに帰らないの?」
冬の女王の顔が晴れる。
「いや、帰りますけど」
「え」
「なんですか」
「……」
「なんですか」
「……あ」
「あ?」
「……した」
「した?」
「……明日」
「明日?」
冬の女王は明日と言った。
「明日も、来てよ」
「え」
村人Aは、びっくりした。早く出ていけとばかり言われていた冬の女王に、そんなことを言われるとは、村人Aはこれっぽっちも思わなかったからだ。
冬の女王を見ると、冬の女王は顔を真っ赤にして、俯いていた。
「え……いいんですか?」
村人Aは、またゲームが出来るかもしれないことに、期待しながら聞いた。
「……うん」
冬の女王は、顔を赤くしたままこくりと頷いた。
その日、村人Aと冬の女王はゲーム友達になりました。
その後、2人はよく遊ぶようになり、春の女王、夏の女王、秋の女王とも、ゲームを通じて遊ぶようになりました。とびもり、スプラトゥーン、ポケモンをやった村人Aは、全てにハマってしまい、最終的にはそれら全てのゲームを極めることが村人Aの夢となりました。
ですが、冬の女王の言うとおり、塔での電波はいいのですが、塔以外ではよく電波が切れて遊びづらい環境でした。
塔の電波が良いと気付いていたのは冬の女王のみ。後に村人Aの口からそれを知らされた3人の女王は、怒り心頭で冬の女王に迫りました。
異世界から来たという謎の人に「現代の技術だ」と言われ4人の女王にゲームが渡されたのは秋の暮れ。丁度、冬の女王が塔に入ってすぐのことだったのです。
そうして、冬の女王は3人の女王に根負けし、塔にはまたかつてのように、順番に住むことになりました。
また、季節を巡らせることを叶えた村人Aは、王様からたんまりと金貨を貰い、一攫千金の夢も掴みました。
村人Aはその後、その金貨をなにに使ったのでしょうか?
残念ながら、村人Aは、一銭も使いませんでした。
なぜなら、村人Aは堅実だったので、老後の貯蓄に回したからです。
おしまい。