村人A、一攫千金を夢見て塔に進入する
「ここが冬の女王の住む塔か……」
村人Aは巨大な塔を見上げて呟いた。なぜかはわからないが、この塔には、冬の女王様が閉じこもっているらしい。通りでこの国だけ雪が降り続けているわけだ。
村人Aはたまたまこの国の近くを通りかかり、この国だけ雪が降り続いているのを不審に思って国内に入ってみたら、城前にお触れが出ているのを見かけた。その御触書には、こう書かれていた。
冬の女王を春の女王と交替させた者には好きな褒美を取らせよう。
ただし、冬の女王が次に廻って来られなくなる方法は認めない。
季節を廻らせることを妨げてはならない。
どうやら、この国では四季の女王様がそれぞれ時期毎に交代でこの塔に住み、それで季節が廻っているらしかった。
「しっかし、おかしな国もあるもんだ」
どうしてそんな面倒なことをするのか、村人Aにはわからなかったが、まあそれは、国それぞれだしな。
とにかく、村人Aは、褒美という言葉に釣られ、ここまで来てしまったわけだった。
だが、どうして国民は誰も女王様を塔から出そうとしないのだろう。しかも王様も国民に助けを求めているし。
しかし、その謎は、塔の前で少し待っていたらわかった。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
どどどどどどどど、と塔の扉が開くや否や、人々が塔から雪崩のように出てきた。
みんな泣いている。
どうしたというのだろう。
村人Aは逃げていくうちの1人に聞いた。「どうした」
「あんな女王様、誰にも止められねぇ!!!」
そう言うやいなや、ああああああああああと言いながら、引き留めた国民が逃げていった。
「なにがあったのだろう」
村人Aは、とりあえず、ちょうど塔の扉も開いていることだし、中に入ってみることにした。