彼氏彼女
続編風に時系列で短編を書いていきます。長めの短編や本当に短いものまで・・自由な感覚で♪
遠矢side
來名が美彩から、いなくなった。記憶も、身近な存在としても・・
君の中で、それは確実に何かを感じる違和感。
『サミシイ』
言わない君の強さが痛い・・
お昼は、教室で食べるようにした。
俺が現れるまで、來名と一緒に教室で食べていたから・・
「美彩、美味しい?」
「美味しい!」
「・・ふふ。俺の事、好き?」
「嫌い!」
相変わらず、素直じゃない・・
そこも、可愛くて・・喰いたい。
「にゃあ??何だ?寒気が!!」
見つめる俺を睨んで・・
「見ないで!」
口にご飯粒を付けて、顔を逸らす。
机を挟んだ距離が、もどかしい・・教室でなければ・・
「何よ!むぅ~~」
頬を膨らませ、不機嫌を示す。
「可愛い・・」
手を伸ばし、口に付いたご飯粒を指で拭い取り・・口に運ぶ。
「なっ!?・・恥ずかしいし!!」
顔を真っ赤に・・
ご飯粒が付いていたことではなく、俺の言葉や行動が恥ずかしいと言う。
愛しい・・狂いそうだ。
「美彩、好きだよ。」
教室なので、小さな声・・
それに対して、美彩は下を向いた・・表情が見えない。
「美彩?」
俺の呼びかけに、おずおず・・顔を上げる。
目があって、逸らし・・それを何度か。
あ・・あれかな?
「美彩、おいで・・」
違ったかな??怒る?
美彩は、席を立つ。
調子に乗ったかな・・美彩は黙って、俺の近くに来た。
膝に手を乗せ・・甘えたように乗ってくる。
【きゅぅ~~んん!!】
可愛い!激カワ!!!!
何かを言うと、その幸せを失いそうで・・黙って抱きしめる。
こんな幸せを味わえるなんて・・嬉しさの中、すぐに現実を味わう。
美彩の失ったもの・・大切な存在。
人前で甘えない美彩が、俺に甘えている。
この教室で、失った・・大切な友。唯一甘え、すべてを委ね・・すべてを語ってきた存在。
・・嫉妬・・と、安堵。
「美彩、そろそろ・・時間だよ?」
「・・うん。バイバイ・・」
温もりが、消えていく・・それは、美彩も同じ。
どうして、俺は・・美彩の苦しみを知りつつ、呪いと闘い続ける現実を・・
美彩、君は・・強い。そして、弱い。
自分の力のなさに、嫌気がする。・・美彩・・
俺は、君を抱く・・
君は知らない。寝ている君は、俺の腕の中で泣くんだ。
記憶にないはずの來名の名を呼びながら・・
そんな時は、必ず何かと闘っていた。
君は、俺には言わない。
墨の情報で、君の強さを見守ることしか出来ないでいた。
俺の手にいるのに・・護ってやれない。
「美彩、俺に言うことない?」
「ナイ!」
強い眼・・強い意志。想い・・思い・・
俺には、何が出来るのかな?
「遠矢・・」
続く言葉を呑み込み・・
美彩は、笑顔を俺に向ける。
「何?」
「何だったか、忘れちゃった・・」
俺の対・・
弱さをさらけ出してほしい。
「美彩、覚えておいて。
俺たちは、支えあう。そうやって、子供たちを見守るんだ。
今、それが・・むぐっ」
俺の口を唇で塞いだ美彩の眼は、真っ直ぐ・・
俺の欲しかった視線。
「・・うん。分かってる。でも・・
ごめんね。今は、まだダメ。
・・信じて、好きよ。愛しているの・・
遠矢、怖い。負けたくない・・あなたのために。」
そう言われると、何も言えなくなってしまう。
「信じるよ。美彩・・」
言葉が出ない・・ただ、美彩を見守る・・
美彩side
毎日が戦い。
愛しい人と共に時間を過ごす。遠矢と・・
でも、何かが足りない。
増えた感情が、毎日のように募っていくのに・・何か・・
うぅん、きっと・・試練。
未来のための戦い・・
遠矢の子を望む。未来・・子供たちの辛さに、耐えることが出来るだろうか?
愛しい人との子・・
護れるだろうか?見守れるだろうか?
「きっと、幸せになれる・・あなたは・・」
夢の中、懐かしいような安心するような・・声・・―――・・
「遠矢には、不釣り合いなのよ!」
「さっさと別れて!」
同級生や年下・・時に、先生までが。
私に、そう言うの。
「嫌よ!
ふふ・・うらやましい?呪いなの。
私以外に感じない。私しか、女じゃないの。
くすくすくす・・遠矢の子を産むわ。たくさん・・
彼の望み。幸せも辛さも見守る・・闘うの。今も、これからも・・」
呪いを望み、呪いを恐れ・・共に生きる。
一生・・あなた一人・・あなたには、私一人・・私だけ。
こんなのは辛さじゃない。
私が我慢すればいい・・未来を選んだ。
子供は、呪いと闘う。その強さを育むのは私・・
受け継ぐ強さも・・多いに越したとはない。そのためなら、喜んで試練に耐える。
もっと・・罵ればいい。もっと、私に孤独を与えればいい・・
共に戦う人を意識できるから。
独りじゃないと・・感じられるから。
遠矢・・愛しているわ。
好き・・大好き・・
「俺の事、好き?」
「嫌い!」
あなたも、傷つけばいい・・
私への想いを告げればいい。
「美彩、好き・・
ね、好きって言って?」
愛しさに、呪われたのは・・・・