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⑫-B 【 大上家シリーズ】おおかみはかぐや姫を食べた  作者: 邑 紫貴
【大上家シリーズ1】おおかみはかぐや姫を食べた

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9/77

赤頭巾


 次の日。


「そう、やっぱりね。

おかしいと思ったのよ。で、本当は?何があったの?」


白雪の噂の真相に、杏は興味津津。


「赤月さんて、本当は・・近づきやすいのね。」


白雪は、違和感なく杏を受け入れた。

もちろん、白雪の言葉に赤面。


「・・杏で、いいわよ?で、続き!」


なんて、可愛い人だ。


「え・・。私も、詳しくは知らないんだけど・・。」


「大体は、分かるでしょ?

一番、真実味のある話が・・ずっと知りたかったのよ~。」


なるほど、杏の知りたいのは・・常に真実だけ。


「友達、ストーカーだった・・らしいの。

先輩の物を取ったみたい。友達は、拾ったって・・言ってたんだけど。」


「ストーカー話は、噂になかったな。

で、本当は・・付き合っていないわけか。」


・・私は、友達を手に入れた。

不思議だ。白雪の好きな人は、稜氏くんだった。

稜氏くんの許嫁が、杏。杏は、オオカミが好き。

オオカミが選んだのは、私。

私の(白紙になる)婚約者は、誠志。誠志は、白雪を選んだ。


・・この形は、変化している。


「不幸体質?・・気にしないわよ。バカバカしい。

何、歌毬夜は・・気になることあるの?」


「う~ん。一応、聞いてみる。気が済むかな?

髪を触った後の話は、納得できたし・・。」


「何、順番に言ってよ?気になる!」


杏は、好奇心旺盛。


「私が、歌毬夜の髪を凍らせかけたところで・・オオカミ様が助けてくれたの。

危うく、髪が・・落ちるところだった。」


白雪。そんなにひどいなんて、聞いてないよ?


「雪女なんて、歌毬夜に嫌われると思った。

オオカミ様、上手くフォローするからって・・。」


それは、オオカミの嘘だ・・。


「さすが、オオカミ様~。」


・・はは、笑える。


「で、一つ解決。

次ぎ、移動教室に行く途中・・どこに行ったの?」


「私、方向音痴なの!!

ごめんね?今も、どこって・・説明できない。」


白雪は、顔が真っ赤。本気で、迷子か・・。


「それが二つ目。

三つ目は、被服室準備室。頼まれた本、探したけど・・見つからなかったよ?」


「オオカミ様が、私といた時ね。」


そう、偶然と言うよりは・・意図的に感じるぐらい。

でも・・


「部屋、間違えて教えてる!

呼び出しも・・私のドジなのを知っている先生が、捜してもらった本を渡すためだったのよ。

言うの、忘れてた。ゴメン・・」


本当に、偶然。


「あはは。白雪、面白い!!」


「無いわよ~。ドジで済む話じゃないわね・・。」


笑う・・。


「ね、歌毬夜。伝承も、詳しく知りたいな。」と、上目でお願いする杏。


いつも思うけど、ホントに色っぽいな。


「う~ん。面白くないと思うけど・・。

みんなの知ってる伝承や、オオカミの方の伝承を知らないから・・教えてくれる?」


私は気になっていた。

口伝えだから、伝承に食い違いがあってもおかしくない。

でも、私の知らないことが・・多すぎる。


稜氏くんは、教えてくれなかった。

・・今、杏に聞いてもいいのかな?


「オオカミ様に、直接聞いたほうが良いわよ?」


・・出来るなら、聞いている。

口を閉ざした私に、「・・逃げてるのね。」

白雪が言った。


私は、黙ったまま・・言葉が出ない。二人は、小さいため息。

情けない。涙が出そうになる・・。


杏は「じゃ、伝承を聞かせて?」と、話を変えてくれた・・。



「・・一匹のおおかみが進入し、かぐや姫を食べてしまう。」


築嶋家の伝承の途中に、杏は口を挿んだ。


「え、嘘でしょ?何、その現実的な話。

・・歌毬夜、いい?

おおかみと、かぐや姫は一緒に逃げたの・・。大恋愛なんだから!」


杏は、興奮気味。


「そうよ!そんな現実臭い話で、大上家の呪いは消えないんだから!」


白雪も、大きな声。

え?大上家の呪い・・?


「歌毬夜、命令よ!

いい?必ず、オオカミ様から伝承を直接聞くのよ!

じゃないと、一切話しないから!」と、杏に言われた。


・・・・。

話も、してくれない・・?

そんなに大切なの?伝承を知ることが・・。


考え事をしていた私は、聞いていなかった。


「ね、杏?

あなた、本当はオオカミ様じゃなく・・」と、白雪。


「し・・」


口に、人差し指を当てる杏。




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