赤頭巾
次の日。
「そう、やっぱりね。
おかしいと思ったのよ。で、本当は?何があったの?」
白雪の噂の真相に、杏は興味津津。
「赤月さんて、本当は・・近づきやすいのね。」
白雪は、違和感なく杏を受け入れた。
もちろん、白雪の言葉に赤面。
「・・杏で、いいわよ?で、続き!」
なんて、可愛い人だ。
「え・・。私も、詳しくは知らないんだけど・・。」
「大体は、分かるでしょ?
一番、真実味のある話が・・ずっと知りたかったのよ~。」
なるほど、杏の知りたいのは・・常に真実だけ。
「友達、ストーカーだった・・らしいの。
先輩の物を取ったみたい。友達は、拾ったって・・言ってたんだけど。」
「ストーカー話は、噂になかったな。
で、本当は・・付き合っていないわけか。」
・・私は、友達を手に入れた。
不思議だ。白雪の好きな人は、稜氏くんだった。
稜氏くんの許嫁が、杏。杏は、オオカミが好き。
オオカミが選んだのは、私。
私の(白紙になる)婚約者は、誠志。誠志は、白雪を選んだ。
・・この形は、変化している。
「不幸体質?・・気にしないわよ。バカバカしい。
何、歌毬夜は・・気になることあるの?」
「う~ん。一応、聞いてみる。気が済むかな?
髪を触った後の話は、納得できたし・・。」
「何、順番に言ってよ?気になる!」
杏は、好奇心旺盛。
「私が、歌毬夜の髪を凍らせかけたところで・・オオカミ様が助けてくれたの。
危うく、髪が・・落ちるところだった。」
白雪。そんなにひどいなんて、聞いてないよ?
「雪女なんて、歌毬夜に嫌われると思った。
オオカミ様、上手くフォローするからって・・。」
それは、オオカミの嘘だ・・。
「さすが、オオカミ様~。」
・・はは、笑える。
「で、一つ解決。
次ぎ、移動教室に行く途中・・どこに行ったの?」
「私、方向音痴なの!!
ごめんね?今も、どこって・・説明できない。」
白雪は、顔が真っ赤。本気で、迷子か・・。
「それが二つ目。
三つ目は、被服室準備室。頼まれた本、探したけど・・見つからなかったよ?」
「オオカミ様が、私といた時ね。」
そう、偶然と言うよりは・・意図的に感じるぐらい。
でも・・
「部屋、間違えて教えてる!
呼び出しも・・私のドジなのを知っている先生が、捜してもらった本を渡すためだったのよ。
言うの、忘れてた。ゴメン・・」
本当に、偶然。
「あはは。白雪、面白い!!」
「無いわよ~。ドジで済む話じゃないわね・・。」
笑う・・。
「ね、歌毬夜。伝承も、詳しく知りたいな。」と、上目でお願いする杏。
いつも思うけど、ホントに色っぽいな。
「う~ん。面白くないと思うけど・・。
みんなの知ってる伝承や、オオカミの方の伝承を知らないから・・教えてくれる?」
私は気になっていた。
口伝えだから、伝承に食い違いがあってもおかしくない。
でも、私の知らないことが・・多すぎる。
稜氏くんは、教えてくれなかった。
・・今、杏に聞いてもいいのかな?
「オオカミ様に、直接聞いたほうが良いわよ?」
・・出来るなら、聞いている。
口を閉ざした私に、「・・逃げてるのね。」
白雪が言った。
私は、黙ったまま・・言葉が出ない。二人は、小さいため息。
情けない。涙が出そうになる・・。
杏は「じゃ、伝承を聞かせて?」と、話を変えてくれた・・。
「・・一匹のおおかみが進入し、かぐや姫を食べてしまう。」
築嶋家の伝承の途中に、杏は口を挿んだ。
「え、嘘でしょ?何、その現実的な話。
・・歌毬夜、いい?
おおかみと、かぐや姫は一緒に逃げたの・・。大恋愛なんだから!」
杏は、興奮気味。
「そうよ!そんな現実臭い話で、大上家の呪いは消えないんだから!」
白雪も、大きな声。
え?大上家の呪い・・?
「歌毬夜、命令よ!
いい?必ず、オオカミ様から伝承を直接聞くのよ!
じゃないと、一切話しないから!」と、杏に言われた。
・・・・。
話も、してくれない・・?
そんなに大切なの?伝承を知ることが・・。
考え事をしていた私は、聞いていなかった。
「ね、杏?
あなた、本当はオオカミ様じゃなく・・」と、白雪。
「し・・」
口に、人差し指を当てる杏。




