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B 【 大上家シリーズ】おおかみはかぐや姫を食べた  作者: 邑 紫貴
感謝短編

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89/90

【被らない】②アンケ・ぽちり感謝短編

タイトル『漢』

Side:美彩みさ・登場人物:遠矢とおやあらし


買い物から帰ると、家に知らない若い男性……

保志より若いよね??

「あ、お邪魔しています。」

礼儀正しく、爽やかなイメージ。

「美彩、多河たがわ あらしくんだよ。麗季が小学生の時の同級生。羊二から電話があってね。」

何故、家に??

机の上には、時代劇で見たことのある日本刀……

意味が分からず、戸惑う私に遠矢は苦笑する。

「突然すみません。手に入った名刀なのですが誰かに譲りたくて……ヒツジから、保志さんや遠矢さんが似合いそうだと聞いて。」

羊二くんの二人のイメージも理解不能だなぁ。

「似合いそうって言われて、嬉しくなるのも……なぁ?」

遠矢は、今までにない笑顔を見せた。

今の彼は、親族と離れて独りで生きる覚悟のあった過去とは違うのだと理解する。

保志の奔放さが、それと違った孤独だったのを思い出して、羊二くんと仲良くする息子の変化に喜びを抱く。

呪いとの闘いは辛かったけど、周りに人を集めてかかわりを増やしてくれた。なんて幸せなのだろう。

遠矢の孤独を癒し、心を満たした歓びの表情……まさか、こんな日が来るなんて。

「遠矢さん。良かったら、振ってみてください。」

ご機嫌の遠矢は目を輝かせながら、日本刀を手に取って庭に出る。

嵐くんにも外に出るように誘って、無邪気さが可愛く目に映る。

遠矢は刀を鞘から抜いて両手で持ち、やや左上に構えて静止。

一瞬で張り詰める空気。おやぁ??何だか本格的な……

【ドクンッ】

遠矢の真剣な表情に、心臓が跳ねた。

視線を奪って、捕らえられたまま……思考も許さないほどの心音。

日本刀は、剣道とは違う感じの動きで、軽い振りに見え……

目の前にあった細い苗木をスッパリ……

「ぎゃぁ~~!!それ、楽しみにしていた桜の木!」

私は、遠矢を正座させてお説教。

あまりの怒りに、初めて会ったばかりの嵐くんも、その横に正座させていた。

遠矢は口をとがらせながら、刀を触ろうと手がソワソワしている。

「遠矢。それは、庭での使用を禁じます!」

嵐くんは、私と遠矢を交互に見て笑いを堪えていた。

「嵐くん?何で、笑うのかな。」

苛立ちに、我を忘れ……

「いえ、くくっ……すみません。ふっ……美彩さん、遠矢さんを叱りながら惚気てるの……気が付いていないし。」

え?

「うあぁ~、言いやがったな?ワザと、怒りを煽って言葉を出させてたのに。」

……え?……私、何を口走ったのかな?記憶が無い!!

遠矢と嵐くんは、足を崩して互いに顔を合わせて笑う……可愛いじゃない。

嵐くんは立ち上がり、ズボンに付いた汚れを払う。

「さてと、そろそろ帰りますね。遠矢さん、男の俺でも惹かれましたよ。ヒツジは趣味が悪いけど、俺……あいつの人を見る目は信用してるんですよね。……くくっ、言わないでくださいよ?」

なんというか、今まで周りに居なかったようなタイプ。

「美彩、誰を見ているの?」

見送る以上の視線に、嫉妬した遠矢の両手は視界を遮る。

「……あの子、小学生で麗季の呪いを見てきたのね。影響を与えたのだと思うと、胸が苦しいわ。」

私の答えに、片手が腰に回って抱き寄せる。

視界は、半分閉ざされたまま。

「美彩、それは……いや、これ以上、周りとのかかわりが増えるのは……良い事だと……思う?」

微妙な言い回し。

「遠矢。私自身に、あなたの姿に奪われる心が、まだあるのだと知ったわ。」

孤独とは違う新たな不安は、とても贅沢な物だと思う。

それを良い事だと、言いたかったのだけど……伝わっただろうか。

遠矢は、私の視界を遮っていた手を喉元に滑らせる。

顎を持ち上げ、見上げる私に悲しそうな……寂しい笑顔。

私は目を閉じながら、視界を狭くする。

「私の目に映し、記憶に留めたいのは……遠矢、あなただけ……」

上から重ねる唇は軽く、一度だけ。

「美彩、愛している。」

目を開けて顔の位置を戻し、後ろから抱き寄せる遠矢に身を委ねる。

「……また見たい。けど、木は切っちゃダメだよ?」

遠矢の姿に漢を感じ、少しだけ素直に……




【被らない】注意:唾液をゴックンする場面があります。

Side:遠矢とおや・登場人物:美彩みさ


明日、取引先に渡す書類が見当たらない。

「美彩、書類を知らないか?」

数日の忙しさに、不機嫌の美彩は視線を逸らして無視。

どこかに隠したのか?

寝不足で、普段なら冷静な状況にも、苛立ちが感情的に俺を急き立てる。

「美彩?仕事が大事なのは、分かっているよな。」

ソファーに座った美彩の両手を引いて、立ち上がらせる。

それでも、視線を逸らしたまま無言。

ん?不機嫌なのに抵抗しない美彩……あぁ、そうなのか。

書類は、きっと家にはない。墨にでも渡したのだろう。

拗ねた美彩の心境に、思わず顔が緩んだのを引き締めた。愛しい……

足りない愛情……それは、俺も同じ。

もっと上方に両手を移動させ、美彩は爪先立ちの状態。

苦しさとバランスの悪さで、震えて睨む美彩と視線を合わせた。

「何か言いたいのか?」

意地悪に訊く俺に、息が漏れるのを我慢して口を閉ざし、頬が染まる美彩。

堪らない。俺を煽るつもりもないのだろうけど、無意識が余計にくる。

美彩の両手首を片手で捕らえ直し、美彩の足が地に着くように位置を下げた。

「……はぁ……っ。」

安堵と、息苦しさから荒くなった呼吸……染まった頬に零れる涙……

「美彩、声を聴かせて。」

耳に唇を近づけると、抵抗するように体を動かして顔を逸らす。

【イラッ】

俺との時間を望んでいないのか?嬉しかったのに、俺の勘違い?

美彩の抵抗が許せなくなる。意地でも、美彩の声を聞きたい。

顔を逸らした美彩の唇に指を当て、息継ぎに開いたのを逃さず、親指と人差し指2本を口に突っ込んだ。

「ぐっ、……ん。」

かき回す様に口内を探り、舌を捕らえた。

美彩は俺の指に噛みついて、鋭い視線を向ける。

【ゾクゾク】

身体を刺激する感覚に溺れそうだ。

俺の指から口内の唾液が伝って手首を流れた。

荒い息と視線は熱を帯び、距離のある互いの体が体温の上昇を続けて尚、それ以上の溶け入るような感覚を求めて止まない。

美彩のあごに小指を移動させ、顔を上方に向かせた。

噛む力は緩まらず、痛みも無感覚になって……求めるのは甘いキス。

上唇に舌を這わせ、唇で挟む。

「……や、……ら。」

美彩から伝わるのは、やはり拒絶。

苛立ちと同時に、今まで感じたことのない情欲が生じた。

無感覚?無意識?自分の奥深くで、眠る何かに唆されるような……支配欲……

下から睨んだ美彩を無言で見つめ、口内に留まっていく唾液。

……ぷちっ……

美彩の両手を解放し、崩れそうになるのを片腕で支えた。

口から抜いた指は熱を飛散していく。

かぶりついた美彩の口に、流れる液体。

呑んで、俺の……

美彩の熱を受け、押し返す様に送り込む。

「……んぅ」

【ゴクン】

……悦びに満ち足りる感情……

目に映るのは、床にうつぶせて苦しそうに咳き込んだ美彩。

意外な自分の行動に戸惑いが突如として襲う。

「ごめっ……うそだろ。俺……。」

息を整えた美彩が涙目で、俺に視線を向ける。

そして、俺の表情に驚いた顔を見せた。

恐怖に突き落され、自分の体が震えているのに気づく。

視線を逸らすことも目を閉じることも出来ずに、終始……否応なしに美彩の様子が目に映る。

見開いた目に、美彩は穏やかな笑顔を見せて俺に近づいて来た。

そっと抱き寄せ、頭を撫で……

「遠矢、好きよ……大好き……愛してやまないのに、不安にさせちゃったね。」

美彩の愛情に包まれ、自分のしたことが許されたことに安堵と後悔。

そして動揺……

「美彩、ごめん。俺、そんなつもりじゃ……自分で制御できない、こんな……」

今後、また同じような事があるのかと思うと、自制できない自分に恐怖を覚えた。

「恐れないで……怖いのは、私も同じ。あ、遠矢にされた事は、怖いとは思っていないよ。ビックリしたけどね?ふふ。初めての遠矢の表情を幾つも見れた。これからも、二人で闘えるかしら?」

俺自身、新たな発見は美彩に誘発されたもの。

美彩の新たな面も、俺が導き出せるだろうか……

幸せと隣り合わせの恐怖に共闘……





end

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