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⑫-B 【 大上家シリーズ】おおかみはかぐや姫を食べた  作者: 邑 紫貴
【大上家シリーズ1】おおかみはかぐや姫を食べた

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白雪姫

保志side



 俺は、幸せに浸っていた。

歌毬夜・・柔らかい腕。甘い・・酔いそうな匂い。

受け入れる瞳。唇は、俺に反応した・・。


堪らない・・。

もたれる俺に、無意識か・・俺に身を許した。

歌毬夜、歌毬夜・・。どうしよう・・。嬉しくて、顔が・・


「緩んでるぞ?顔がひどく崩れてる・・。

なぁ、ポチ?」


せっかくの、いい気分を・・


「何の用だ?大路。」


「いや、忠告だよ。

歌毬夜の気持ちを、自分のものに出来ると・・勘違いしていると。今は、」


・・俺は、言葉を遮る。


「ふっ。『だから・・?』

・・お前、一体どうしたい訳?俺は焦らない・・。

例え、この緑の目で・・歌毬夜を惹きつけられなくても。

そして、歌毬夜が・・お前を選んでも。

一生は長い・・。さっきの一瞬の幸せで、俺は・・生きていける。」


「どうしたいか・・?

ま、邪魔はしたい。大事な、大事な妹・・だから。

彼女を、選ぶ事も出来る・・。が、白雪と契約を交わした。

見てたんだろ?雑種とはいえ、狼。簡単じゃない。」


「誠志。白雪は、」


今度は、誠志が言葉を遮る。


「知ってる。

・・どうにもならないのも、狼だろ?」


ふっ・・。俺たちは、同類。

一生に、一人の相手を見つけてしまった・・。


「けど、妹に・・キスマークを付けすぎだよな?・・」


思い出したら、腹が・・立ってきた。


「あはは。で、キス止まりか。俺の作戦勝ちだろ?」


「うるせぇ。お前の痕に、俺のが後から付いても・・。

くそ!消えたら、いっぱい付けてやる。」


苛立ちが募る。


「嫌われるぞ?俺は、話だけで済むが・・。

くくっ。見ものだ。歌毬夜の・・根は、深いから・・。」


「・・感じていた。なんだ?その・・根は。」


「俺は、お前の敵じゃない。が、味方でも無い!甘えるな。」


大路は、そう言いながらも笑っていた。


「はぁ・・。

ポチって、昔・・飼っていた犬か?」


「そうだな・・。昔・・。

昔に・・大事に想っていた、犬。歌毬夜の・・記憶は、薄いだろうな。

訊いても、知らないと言うと思うぞ。」


・・?

知らない・・?




歌毬夜Side



 教室。

白雪の姿はない・・。


「歌毬夜。

林五さんなら、体調不良で帰ったわよ?

・・あ~。その様子は、棘が刺さったのね?」と、杏。


私が、白雪がいないと聞いた反応でそう言った。


『きれいなものには、棘があるわよ。』


以前、杏が私に言った。


「杏。私・・入学式で白雪と、友達になったの。

でも、まだ・・よく知らなくて。どういう意味なの・・?」


杏は、「教えてもいいけど・・。一応は、彼女に本当か・・聞きなさいよ?

信じるのは、それから・・。私も、あまり係わらないし・・聞いた話よ。

歌毬夜・・一つだけ、先に言うわ。

信用するなら、最後まで・・自分で責任を取りなさい。」


・・?

この意味を知るのは・・。大事なものを、自分が優先せず・・傷つけた時。

味わったことのない悲しみと、後悔が襲う・・。


「中学の話だから、みんな知っているし・・ここでも問題はないけど。

・・ん~。外、行く?」


杏は、意外と・・周りを気にして行動する。

慎重な性格・・なのか、人を気遣える人なのかな。


「何、ニヤニヤしてるのよ。」


ツンデレ・・だけど。


「ん~?私・・今まで友達いなかったから、嬉しい。」


私の言葉に、杏は耳まで真っ赤で、「バカじゃないの・・」と。



 外。

裏庭の、遅咲きの八重桜が満開。


「・・口、開いてるわよ?」


慌てて、口を閉じる。

美しい・・。心を奪われる。が、話を聞かないと・・。


「さて、どう話したらいいのかな?

・・歌毬夜、『白雪姫』継母の物語って、知ってる?」


継母の話・・?


「知らない・・。」


「・・お抱えの狩人だけが、事実を知っている・・という。

ま、簡単に言えば・・。

『白雪姫』は、虚言癖があり被害妄想が激しくて・・愛情を持っていた継母を最後に処刑するのよ。」


・・!!


「そんな話、あるの?」


驚きだ。


「あ~。いくつか『白雪姫』の話に、意地悪な継母の処刑はあるみたいよ?

・・じゃ、なくて。

林五さんの中学生の時の話が、これに似てるって・・噂。

どこまで本当なのか、林五さんしか知らない。

いいわね・・?

中学の時・・林五さんに、親友がいたの。

ちょっとおせっかいな子だったみたい。で、いろいろ世話をしてあげたのに・・

林五さんから裏切られた。

綺麗な彼女に、今は違う高校なんだけど・・当時の王子様の心は奪われ、付き合いだした。

王子様が好きだった親友は、付き合い始めた林五さんからひどいこと言われたみたい。

王子様からも、言われたらしいわ。

で、噂は学校中に。

最初・・。悪いのは、その親友の子・・みたいな。結局、学校にいられなくなって転校した。

・・『友達だと思っていたのに・・』と、言い残して。

ま、それが・・どうしてか。今は、林五さんが悪者・・かな?」


・・噂。

誠志は、いい加減な気持ちではない。白雪は・・?

私を、羨ましい・・と言った。白雪の本心が・・見えない。

白雪・・。



 お昼休み。

誠志が、教室にやってきた。・・白雪の事と、あの日の事。


「食べた?」


誠志は、いつもと雰囲気が違う・・?

白雪、一人を選んだからかな?


「うん。・・さっき、食べ終わった。」


誠志は、にっこり笑う。

その笑顔に、クラスの女の子たちの奇声。


「・・。屋上に行こうか。ここでは話、出来ない。」と。


お昼を一緒に食べていた杏は、私にうなずいた。



 屋上。


・・?

立ち入り禁止?誠志は、鍵で・・開けた。


「・・?あの~、誠志?これ、大丈夫なの?」


誠志は、にっこり・・唇に人差し指。


「内緒ね。

あ、鍵の入手ルートも・・内緒。・・ふふ。」


間違いなく、オオカミの血筋だ。

知能犯・・。


ドアが開き、中に入る。


・・・・。

手入れの施された、庭園。


「わぁ・・。綺麗!!」


この学校は、自然に囲まれている。


「もう知っているよね。俺が、白雪を選んだこと。」


誠志は、目を伏せ気味に・・言い難そう。


「うん。

でも、知ってた。この時が・・いつ来ても、おかしくないこと。

誠志、一人に決めていたのに・・どうして?どうして、私に触れたの?」


他にも、疑問が残っている。


「・・歌毬夜。あの日は、特別な日だった。

オオカミを呼び寄せ、彼の覚悟を知るため・・。」


「特別な日・・?」


「歌毬夜・・。君には、“期限”がある・・ね。

その、期限の開始日が・・あの日だった。

竹の花・・120年に一度咲き・・一斉に竹が枯れる。

期限までに、オオカミと出会っていたら・・。伝承は、繰り返される。」


伝承・・。おおかみに、食べられる・・?

ピンと、こない・・。


「オオカミは、冷静・・。

それは、期限の意味を・・知らないから。」


誠志は、優しい・・。見つめる瞳に映る私は、今までと同じ・・妹。

それで・・いい。


「あ、歌毬夜。白雪は・・」


誠志は、口を閉ざす。

・・?


「いや、本人から聞いた方がいいか。彼女には、気をつけて・・。」


え?白雪に気をつける?

誠志は、いつも通りに微笑みながら。


「さ、見つかると面倒だ。見張りが来る匂いのないうちに、戻ろう。」と。


・・便利だ。



 1年と、2年の校舎に分かれる道。そこで、誠志と別れる。

・・“期限”。オオカミは、知っているけど・・意味を悟っていない。


「歌ぁ~毬夜。みっけ・・?」


オオカミに、見つかった。

いけない・・。私を、一人と言ってくれたから・・。心惹かれている。

距離を取らないと。


「歌毬夜・・?」


この間、気を許したのは・・誠志が白雪を選んだから。

淋しさだ・・。


「・・触らないで。」


これ以上、心を許してはいけない。

“期限”が、私にはある。彼も、他の方法で・・別の人を選べばいい。

一生の相手が、いなくなる私では・・可哀相だ。


「歌毬夜、俺を見て・・。どうして、心を閉ざす?」


どうしてこの人は、私の心を見透かすのか。

胸が、締め付けられる・・想い。


「嫌だ。触らないで!心に・・入ってこないで。」


逃げなきゃ・・。でも、どうやって?

あっ、お父様から貰った・・。ポケットに入れていた物を、口に持っていく・・。


「何だ?その笛・・」


勢いよく吹いた。が、音は出ない。

?!!


「うっ・・つ。」


オオカミは、耳を押さえ・・痛みを堪えている。

よく分からないけど、オオカミには聞こえたんだ。それも、耳が痛いほど。

私は、彼を後に・・走って逃げた。


安心・・のはずなのに、心は違う。

・・どうして?サミシイ・・。

ダメ!彼を巻き込んでは、いけない。

・・この笛があれば、“期限”まで逃げられる。


「築嶋さん。こっち・・。」


呼ばれて、立ち止まり・・周りを見る。

右側に校舎の影・・。稜氏くん?


「こっち、見つからないよ?」


助けてくれるんだ・・。

稜氏くんに導かれ、細い道を歩く。


竹林に出た。

・・思考が、止まる。私は、意識を・・失った。



懐かしい・・。


ここは、ドコ・・?イヤ・・ダ。ヒトリニ・・シナイデ・・。

ポ・・チ、ポチ・・どこ?

一緒・・って、言った・・のに。置いて、行かないで。

あなたを、愛しているの・・。




「・・ぐや、歌毬夜!・・よかった。気が付いて・・。」


ココハ・・?


「アナタ・・」


!!

目が覚める。


「白雪!?・・え・・?」


状況が、分からない。


「・・家、私の部屋。に・・白雪?」


「学校で、倒れたの。・・稜氏くんが、家まで運んでくれたらしいわ。」


・・あぁ、竹林で。


「で・・ね。その、私・・体調が良くなったから・・。

早く、歌毬夜と話をしたくて・・。」


白雪は、申し訳無さそう・・。

・・?寒い・・?


「ね、白雪・・。私の部屋、寒くない?」


「あ。ごめんね!私の所為なの!」


「・・え?」


「実は、私・・雪女の家系なの。

外国の白雪姫の意味じゃなく・・雪が白い・・から。」


白雪は、顔を真っ赤にして・・言う。

嘘ではない・・。


「普通の生活に、支障は無いんだけど・・。

歌毬夜が倒れたって聞いて・・感情が、コントロール出来ないの。ごめんね・・。他にも、いろいろ・・。私、ドジだから・・。」


白雪の目から、氷の結晶・・。

・・綺麗だ。


「いいよ。

話・・聞くから、ね?白雪を信じるよ。全部話して?」


白雪は、うなずく。


「私、本当は・・稜氏くんが好きだったの。

でも、大路様の・・緑色の目。それを見てから、私・・。

ごめんね。気持ち・・抑えられないの。

大路様が、好き。・・歌毬夜の婚約者だって分かっていたのに、キスしてしまった。」


・・誠志が、本気だったんだ。


「うん、白雪。なんとなく、誠志の気持ちは分かってた。

いつか、この時は来ていたの。白雪の所為じゃない。

婚約は、白紙。

気にしないで?私に、その気が無いのを・・誠志が知って、先に行動しただけ。」


「・・けど、中学のときの噂は聞いたでしょ?」


白雪は、傷ついている。


「本当の事は、白雪が教えてくれるのよね?」


信じる。

誠志の選んだ人を。


「中学の時から、稜氏くんが好きだった。

けど、彼も婚約者がいた。だから、秘密の片思い。

先輩の告白も断ったんだけど。私、不幸体質みたいで。

歌毬夜も、思い当たることないかな?」


そう言えば、オオカミに絡まれるのって・・白雪の後が多い?

でも、不幸とは違うような。


「無いよ!白雪、これからも友達でいて。」


「ありがとう!」


白雪の笑顔。

部屋の温度が、平常に戻る。


「誠志は、雪女のこと・・知ってるの?」


「うん。何故か、知ってたよ?あぁ、オオカミ様も知ってるね。」


え・・?


「ほら。オオカミ様が、歌毬夜の髪を口に入れたでしょ?

あれ、私・・危うく歌毬夜の髪を凍らせてしまうところだったの。

優しいのね、彼。」


そうだったのか。

誠志が、白雪に気をつけて・・は これの事。




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