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B 【 大上家シリーズ】おおかみはかぐや姫を食べた  作者: 邑 紫貴
【大上家シリーズ0】(改)おおかみは羊の皮を被らない

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73/90

円華の出逢い(side:遠矢)


本家に呼ばれ、指示通りに円華を連れて行く。

小学生になったばかりの円華は、本家の決めた婚約者……諷汰を知らない。

今はまだ知らせない方が良いと思い、美彩と話し合った結果だ。

本家には、その意向を伝えた。

しかし本家は、我が子の感情が増えるかどうかの瀬戸際……

円華を、影から諷汰に見せたいと言う。

応接間に集まる大人にまざり、円華は出されたお菓子を美味しそうに食べた。

本家の雰囲気か室内の空気を察してか、庭で待つと言うので注意をしておく。

「円華、池には近づくなよ。深くて危ないから……約束を守れるなら、自由に遊んできなさい。」

諷汰に出逢ってしまえば、それは何かの縁だろう。

そこまで制限するつもりはない。

応接間から見える円華は、綺麗な庭を嬉しそうに走って回る。

「で?俺達に隠しているのは、何だ?」

諷汰の父親に、問いかける。

「……時期が来たら分かるだろう。」

必要な情報も与えず……

いや、本家という特別な空間が作り出したものなのか?

苦しそうな、悲しそうな表情。

本家は欠けたモノを探すのに必死だった。

諷汰は身近にいたが……

保志が本家に初めて来た時、本家の望みは儚く消えた。

俺達が知るのは、もう少し後の事……


「お久しぶりです。遠矢さん……円華ちゃんを見てきても良いでしょうか。」

応接間にやってきた諷太は俺に挨拶をして、表情もなく問う。

「あぁ、行っておいで。」

父親から円華が食べたのと同じお菓子を受け取り、口にしても無表情。

これが呪い……

諷汰は去り際に周りに挨拶を済ませ、円華の居場所も尋ねずに部屋を出て行く。

感情を与えるのは相手のみ。

円華と出会っていない諷太に感情は増えない。

聞いてはいたけれど、それが今更ながら恐怖に変わる。

「彼の感情を、円華がどうやって与えるんだ?どうして呪いで感情が無い?原因は何だ!」

不安に、俺は質問攻め。

しかし本家からの返事は。

「その方法を知らない。昔……昔の物語。本家に残っている一説でさえ本当なのか、真偽も不明。……語り継がれる物語を理解できるのは、その呪いの当事者たちだと……残っていないんじゃない。残らないんだ……相手を失い、独りで生きる“おおかみ”の多さ……手に入れる幸せも、呪いと共に受け継がれていく……呪い……」

また“おおかみ”。

雑種といい、まるでそれは。

「大上家の由来、それは“おおかみ”に関係しているのか?」

必要な時に必要な分だけ。与えられる情報……

「呪いで感情がない事を調べ、過去の文献に人型になれる狼の記載を見つけた。」

……人型になれる狼。

呪いの増幅、雑種の末路で狼になる……それは。

呪いの原因すら語り継げることが出来ず……呪いで、独りになったおおかみ達の多さ……

考えただけで寒気がする。

「かぐや姫を知っているか?俺が、何も知らないと……」

【ザバッ】

水に何かが落ちた大きな音。

嫌な予感。俺は質問も途中で、池の方に走った。

諷汰が池の前に立ち、言葉も出さず無表情で見つめている。

その視線の先に、溺れている円華。

俺は池に飛び込み、泳いでいって円華を抱き寄せる。

本家の池は深い。防火用に作られたもの。

「けほっ……ごほっごほ!」

荒い息で、俺の服を必死で握り締める。

旧家。火事や何らかの災害時、外部からの助けが遅れても大丈夫なように水の確保の為に作られた深い池。

近づくなと言ったのに……

「うっ……嫌い……うぅ~~、ダイキライ……うえぇ~~~」

円華が落ち着いたわけではないのに、荒い息から泣き声に変わったのを聴いてホッとした。

嫌い、それは。

池の淵に立つ諷汰に目を向けると、無表情で俺達を見ていた。

俺は円華を抱えて池から上がり、騒ぎで駆け付けた人から毛布を受け取る。

池に落ちた円華を見たからじゃない。水に濡れたからでもない。

静かな冷たい視線。その感情のない目が、俺に震えを与えた。

円華の愛情で、この諷汰が変わる?

呪いの告げる相手が、命を落とす目前。それでも動かない感情。

変わらなければ、円華は命を失うかもしれない。

絶望と恐怖……


俺は濡れたまま、円華に毛布をかぶせて家に帰る。

俺達が家に着くと、美彩はお風呂を準備していた。

「すぐお風呂に入って。本家から状況は聞いてる。」

美彩の不安な表情。

円華は恐怖からか、抱きついて俺の服を決して放さなかった。

服を着たまま、一緒にお風呂に浸かる。

その温もりに安心したのか、円華は気を失ったように眠る。

もし円華の相手も諷太なら。

いや、諷太に呪いが告げたなら。円華の相手は諷太なのだろう。

円華にとって家族以外の、顔や表情が認識できる特別な異性。

きっとあの池で出会い、円華は気づいたかもしれない。

それが死ぬかもしれない危機的な状況に、感情のない顔を見て、円華はどれほど怖かっただろうか。

円華の記憶から諷汰との出会いは消え、それで良かったのか俺には分からない……





反抗期:采景(side:美彩)


采景が我儘を始めた。

「や!ピンク、キライ!!」

最近、采景が嫌いだと言っているのに、お父さんが送ってくる服はすべてピンク色。

しかも着たところを写真で見たいと駄々をこねる父。

当然、送られてきた服を見せた途端に、采景はどこで覚えたのか大暴れ。

同じ色にあきたのか、かわいいと言われるのが嫌なのか、まだ原因もはっきりしない。

最初のころは好きな色だったし、むしろ好んで着ていたのに。

写真もポーズを決めてノリノリだったし。

イヤイヤ期ではあるのだけど。

円華とも保志とも違う、采景の強烈さ。

子育ては全て同じではない。

父の我儘に似ているような。

そんな苦悩中の私の傍には、遠矢と保志がいるんだけど。

「嫌だ!俺は美彩と寝る!!」

「おかあさん、ぼくのこときらいなの?」

明らかに、この二人の影響だ。

「保志、美彩は俺の事が好きなんだ!」

子どもと張り合って、遠矢は何を言ってるんだろう。

私は落ち着いた采景を抱き寄せ、柔らかい頬をムニムニ。

采景はご機嫌で笑ってる。

「おかあさんから、きいたことないよ?」

「恥ずかしくって言えないだけだ!俺の前では……あれ?最近、聞いてない?」

何だか面倒な会話をしているぞ。

「美彩、俺の事好きだよね?」

あ、汚い!!子どもたちの前では、嫌いも言わないのに。

いや、問題はそこじゃない!

「遠矢、采景が真似をするから……我儘を言わないで!」

すると。

「嫌だ!」

「いや!」

「や!」

……増えた。

我儘な男が増えたぁ~~~~。

「円華!円華は、どこにいるの?」

そうだ。円華は、今日実家にお泊りだった。

なんで、こんな日に限ってこんな事に。

「美彩、俺の事好きだよね?」

「おかあさん、ぼくがいちばんでしょ?」

「ピンク、イヤ~」

采景は思い出したかのように泣き出す始末。

私は3人に抱きしめられ、幸せなのに苦しい……重いし……

【ぷちっ】何かが切れた。

「遠矢!お座り!!」

遠矢を正座させ、その膝の上に保志をのせる。

采景は自分の膝にのせ、向き合って説教。

「いい?我儘を言ってはいけません!いいですか?」

落ち着いて話をしようとする私に、遠矢は不機嫌。

保志は遠矢の膝上が気に入らないのか、抵抗している。

あ、これダメな感じがする。

「美彩、明日は美彩の嫌いなピーマンのフルコース。味付けもシンプルに、自然な味を楽しむ?」

……。

「イヤだぁ~~!!」

「ピンクイヤぁ~!!」

采景も何故か絶叫。

「保志は久々の高い高いだぞ~!」

「いやぁ~~!!」




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