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【 大上家シリーズ】 おおかみは羊の皮を被らない  作者: 邑 紫貴
【大上家シリーズ0】おおかみは羊の皮を被らない
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未来への道(side:美彩)

「墨・・俺は、主 失格かな?」


「・・主、選んだ決定に従いましょう。

ただし・・誓いは、誓い・・俺の提案に従ってもらいます。」


「墨に従う。今は、先が全く見えないから・・」


「選んだなら、彼女を解放してあげるべきです。

呪いから、遠矢からも・・」




side:美彩



 朝・・

涙に、重たい まぶた。


別れを告げたのは、私。嫌いだと何度も言った。

遠矢の目・・声を思い出す。

緑色の目が、私の決意に色を塗り替えていく。黒い瞳は、私を映すのに・・

触れる手は、私の熱を感じないかのように距離をとる。


「さようなら」


唇には、最後のキス・・



 遠矢の呪いは、解かれる。

呪いが、誰かの子供たちに試練を与える。それを、その子たちは乗り越える。

私の逃げた呪いに勝つんだ・・


私は逃げた・・遠矢との未来を恐れて。

遠矢の求める家族・・私への想い・・私には、重荷?

違う・・違うよね・・違うはず。


呪いの所為?私が悪いの?

怖かった。失うぐらいなら、自分から去る・・


遠矢が守りたい家族を、苦しめる試練・・

決まった未来を知っているなら、ない方がいいのかもしれない。

だって・・遠矢は、呪いから解放されるのだから。

私への愛情が、消えるかもしれない・・その時、私には何が残る?

試練に耐えた子供たちは・・



 いつもの時間に家を出る。

校門には、待っている人はいない・・愛しい姿。

残りの高校生活・・あなたの姿を、何度・・見ることが赦される?

私は、他の誰かを好きになる?


嘘だ・・この心に、遠矢がいる。

触れた唇を、他の誰にも触れさせない。心も赦さない・・

遠矢が、他の誰かを選ぶとしても・・


「くすっ・・やっぱりね。」


「くすくす・・言っちゃ、悪いわよ。」


・・?

私に向けられるのは、興味の目・・好奇心と嘲笑。

何?みんな、もう知ってるの?私たちが、別れたって・・


「遠矢には、綺麗な女が似合うのよ。

いくら可愛い系でも、この性格じゃ・・くすっ・・当然よね。」


通り過ぎ、戻って私を囲む。香水くさい女の子達・・


「何、何のことを言ってるの??」


睨んだ私の背より高いからじゃない・・明らかに見下した視線。


「今日、新しい彼女だって♪」


「遠矢が紹介してくれたの!」


・・新しい・・彼女?


「ふふ。解放されたんだって?

呪いから。」


解放?

呪いから・・解かれた・・


「かわいそう」


消えた?昨日の今日・・誰かが解いた?

そんな・・

何故?待って・・この心は?


新しい彼女・・うそ・・

嘘だ!!聞こえない・・何も・・


ただ、想いは・・

遠矢!!



 必死で走る私の足に、何かが絡む。

何かを確かめもせず、立ち上がり走る。痛みも言葉も感覚なく通り過ぎていく。


校内を走り廻って、裏庭・・

遠矢は綺麗な女の人に、顔を近づける。

キス・・しているの?


「止めて!!」


嘘だ・・

私以外にキスしても・・獣に、ならない・・


彼女に触れたまま、視線があう。

心には、えぐられるような痛み。


「・・美彩。俺たち、別れたよね?

解放されたんだ・・俺の目は、もう・・緑色になることはない。

君を求めることも・・

大丈夫、君も・・他の誰かを選べばいい。」


言葉が出なかった。

遠矢は、私を残して・・彼女と去って行く。


止まった時間の暗闇・・


解放・・された?私の心も、呪いから解かれた?

この・・心の中にある分からない感情は、解かれた影響?

それなら、何故・・涙が止まらないの?


「・・ふぅうう~~・・ぅっ・・ぅっく・・ふ・・うあぁあああ~~」


この想いは、呪いじゃない。

呪いで、好きになったんじゃない!!

本気なのよ・・


得てしまった幸せに、失った相手の心。

恐れていたモノ・・いつか、その想いを味わうことを・・


今だから、まだ間に合う?

存在しない・・できない子供たちは・・

そんな未来もない。今、あるのは・・何?

呪いに苦しんだのは、大上家じゃない・・私。逃げた私の結末・・選んだのは、私・・

後悔しないと思っていた。

なんて浅はかな・・弱い自分・・


いいわ。そう・・これは、呪いじゃない。

遠矢は、解放されたんだ。恐れるものはない。

なら、いいよね?私の本気・・

私の想いは、この初恋は・・片思いから!!


呪いなら、呪われたままでいい。

決意は強さとなって・・想いを増し加えていく!



 私は、宣戦布告をするため遠矢の彼女を呼び出した。


「ふふっ・・楽しい人ね。」


綺麗な笑顔は、余裕・・

そんなものは、私にはなかった。自分が、遠矢にふさわしくないと思っていたから。

それは、今も同じ・・でも、想いはその時よりはっきりと・・大きく、際限なく成長中。


「遠矢が好きなの!!

呪いじゃない。解放なんて関係ない。この留まる想いは本物なの。

遠矢が好き!!この想いを貫いても良い?」


「・・どうしようかしら。くすくすくす・・

ふふ。ね、美彩ちゃん?私に、チュウ・・できる?」


チュウ??ねずみ・・


「チュー?」


「ここに、チュッ♪

キスよ、接吻は古いかしら?」


ここって・・

彼女さんは、唇の上に指をなぞり・・舌で舐めた。


「・・・・何で??」


「何故でしょう♪

ふふふ・・美味しそう。」


「美味しそう??」


「あら、少し口が滑ったかしら・・。

そうねぇ~、間接チュウで遠矢を味わえるか・・

決意を試そうかと?」


やっぱり、チュウ・・したんだ。くそうぅ~~遠矢め!!


「いいよ!する!!

したら、遠矢に告白をするからね!!」


「決意を認めてあげるわ~~♪」


何だか、変な展開だけど・・試されるのは、当然だよね。

大丈夫、女の人とチュウするんじゃない。

遠矢の触れた記憶を、この人から奪うんだ!!


手を、頬に当て・・遠矢を思い描く。

背伸びして、唇を近づける・・


「ぷっ・・くすくす・・ごめん。

良いよ、覚悟を見たから、ここまでで・・じゃないと、私が困るかな♪

味わいたかったけど・・」


「??」


私の中では、嫉妬が行動を止めなかった。


【チュッ】


してやった!!遠矢のキスを、私のキスで塗り替えたんだ!

ふんっやり遂げた!!


「・・ごちそうさま・・?

うぅ~~ん、心が痛むなぁ・・

美彩ちゃん、遠矢ね・・遠くに行くのよ。私は、それまでの彼女なの。

想いを伝えるなら、急いだ方がいいわ。

私は、邪魔しないから♪思いっきり、頑張りなさい!!」


・・遠くに・・それまでの彼女??

今は、それどころじゃない・・遠くに行くんだ・・


「教えてくれて、ありがとう。」


走る・・何度でも走るわ。あなたへの想いを、伝える。

一生・・あなたへの想いを貫く。呪いじゃない・・この心は、私の決意。

失った方が、強くなれるなんて・・これ以上、失うとすれば私の弱さだ!

突き進む!!



 廊下で、遠矢を見つけた。

足を止め、思いっきり叫ぶ。


「遠矢、好き!!

一生、あなただけを好きで い続ける。

呪いから解放されたなら、この想いは本物よね?

遠矢・・大好き!!」


私の告白に、びっくりした顔。


「・・んでだよ。

何で、そんな結論になるんだよ!!

ぁあ~~、もう!来い!!」


肩に抱き上げられ、最後かもしれない温もりに身を委ねる。

遠矢の耳元で、囁けるだけの愛を告げる。


「愛しい・・

遠矢の匂いが好き。温もりを、覚えていても良い?

キスが、忘れられないの・・」


私に触れる手が、強くなるのが分かる。


【キュン・・】


胸が苦しい・・愛しさに、狂いそうになる。

呪いは、本当に解かれたの?


呪いを願うほどの愛・・



 たどり着いたのは、思い出の教室。

使用されていない その教室は、私たちの思い出だけを残せばいい。


「美彩、君の気持ちは消えるんだ。

俺が、呪いから解かれたように。」


「解かれて残るなら、本物でしょう?」


「何で、そうなる?

別れを選んだのは、美彩だよ?

・・くそっ!!去る準備が、もうすぐだってのに・・」


「私から、去るの?」


「去る・・美彩、君を解放するんだ。俺から・・

呪いからも。」


「・・え?」


「君は、呪いを知っている。

俺は、呪いから解放されてはいない・・」


呪いは・・今も・・


「君の苦しみに、俺は耐えられない。

・・一生、独りで生きていく。

美彩・・俺の目を見て。

現実は、君の逃げたいものが・・消えたわけじゃない。」


振り出しに戻った?

呪いに留まるなら・・この想いは、やっぱり呪い?

未来は・・


「遠矢、目を見せて・・

緑色の目。あなたは、その色を見せていない。

私の答えは、そこにある気がするの・・」


遠矢は、コンタクトを外す・・

そこには、あの緑色の目。


心を惑わしてきた?

どこが?何も気にせず、奪われたのなら・・こんな悲しみはない。

この経験してきた苦しみこそ・・本当の気持ち。


「ぷっ・・くくっ・・あはは♪

くすす、くすくすくす・・ふふふ。」


笑いが止まらない。

おかしい・・怖かった呪いが、私を笑わせる。

答えは、私の中にあった。


「遠矢、私を求めて・・

決意は変わらない。

あなたが、私を好きでなくなっても・・あなたへの想いは、変わらない。

子供を産むわ。あなたとの子・・

あなたが私を捨てるなら、その子たちと幸せになるから♪」


「・・何だよ、それ・・

ちっ!!・・美彩、俺の事・・好き?」


「好き!!

大好き・・愛しているわ。」


「触れてもいい?」


「・・ダメ、何で他の子にキスしたの?」


「美彩の位置から、そう見えるようにしただけだ。

呪いは、解かれていない。それが、何を意味する?」


「・・あれ?私、キス・・し損??」


・・騙された??

ま・・いいか・・この幸せに、浸れるのなら・・




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