表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
B 【 大上家シリーズ】おおかみはかぐや姫を食べた  作者: 邑 紫貴
【大上家シリーズ0】(改)おおかみは羊の皮を被らない

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

69/90

新婚(side:遠矢)

帰巣本能(side:遠矢)


結婚式は形だけって思っていたけれど、して良かったな。

すでに婚姻届けを出して子どもが生まれて……

やっと円華が落ち着いた時期。

何か変わるわけでもないような気がしたけれど。

美彩の両親に呪いについて報告したとき、結婚を反対された時のような反応はなく。

來名の事が頭によぎった。

美彩のいとこ。どちらかが大上家の呪いを解放するのだと、親族なら知っていて当然か。

海外に行った來名が美彩の記憶から消えて、不自然な日常に戸惑うのも見ただろう。

美彩の両親には覚悟があったのかもしれない。

円華が生まれる前から落ち着くまで、美彩は実家で生活するようにと言われ。

やっと結婚式も終えて。新婚ウキウキで会社から家に帰る。

今日から美彩と円華の三人で、やっと新居での生活がスタートするんだ!

そんな俺は家の前で固まった。

電気がついていない。匂いがしない……

今日は円華の検診で病院に行くと言っていた。

そのついでに買い物もすると。

美彩は、まだ新居に慣れないとも言っていた。

まさか何かあった?

美彩!円華……

学園の管理する大学病院、周辺の駅やビルを必死で探し、息を切らした俺が見つけたのは2時間後。

美彩と円華がいたのは、彼女の実家。

汗だくの俺に、美彩はかじったアイスを差し出しながら。

「どうしたの?これ食べる?」

のんきに微笑む美彩を睨み、いら立ちを抑えて尋ねる。

「ね、どうしてここにいるの?」

美彩は俺の質問に答えるより先に、アイスを口に含んで食べきった。

「やっぱ家で食べるアイスが一番だよね。」

視線を逸らして小さな声。

「答えてくれるかな、美彩ちゃん?」

俺のひきつった笑顔に、視線を横目でチラリと向けて逸らす。

「駅近くで迷子になったの。」

小さな声。

迷子になった?

「タクシーで帰れば良いだろ?それに、もうここは美彩の家じゃない。」

「歩いていたら、ここに着いたからいいじゃない!」

怒っているのは俺なんだぞ、いいわけあるか!

しかも。

「駅からここに来る途中で、家の前を必ず通ったはずだ。」

不思議そうに美彩は首を傾げた。

……。

「へ?」

「え?」

二人、沈黙で見つめる。

玄関で言い争っていた俺たちに、美彩のお母さんが近づき。

「美彩は、ここに帰れるようにお父さんが訓練したのよ。ふふふ……どこからでも、ここになら帰れるの。」

穏やかに笑う美彩の母。

隣の和室で、俺に背を向けたじじいが優越感を漂わせていた……




新婚でチュ!(side:遠矢)


仕事が終わり、家に帰る。

新居に明かりがついているのを見て安堵した。

「ただいま。」

「おかえりなさぁ~い!」

玄関に、円華を抱いた美彩が出迎えた。

幸せを感じる。

高校の入学と共に、寮で独り暮らしして家族の愛情を疑った時期もあったが……

本家での会話が、受けてきた愛情を思い出させた。美彩のおかげだ。

「むふふ……遠矢、先に食べて!くふふふ……」

食べて?

「くすっ……美彩、円華が起きているのに……大胆だね。」

【ベシッ】

抱き寄せ、キスをしようとした俺の顔に手のひら。

「痛い……」

何だか、懐かしい気がする。

「もう!もうぅ~~~~違うの!今日はね、料理をしてみたんだ。くふふ……」

嬉しそうな笑みで、俺の手を引いていく。

机には、何か分からない料理。

「ね、食べて?」

俺は、美彩を見ながら。

「戴きます。」

「あの、料理はそっちだよ?」

睨む美彩に、思わず微笑んでしまう。

椅子に座って、料理を口に入れた。

【モグモグ】

やっぱり。

「どう?」

「美味しいよ。」

迷いなく口に入れたのは、美彩の舌が確かだから。

美彩は、俺を試すような視線。

「何?」

俺は理解したように尋ねる。

「面白くないぃ~~。」

とか言いながら、ご機嫌だ。可愛い。

「ふふ。美彩、試したんだ?俺が躊躇すると思った?」

「思った。だって、見た目が悪いし……料理したことないでしょう?」

「ふふ。美彩は、美味しいものを知っているからね。」

「……遠矢の料理、好きだよ。」

お、かなりの好印象。

好きって言ってくれるなんて、余程のことだ。

「料理だけ?くすくすくす……俺の愛情を、疑って……俺も本気になっちゃうよ?喰ってもいいかな……」

「……円華が寝たら……いいよ?」

やった!くふふ。

美彩のご機嫌に、強引な事しちゃおうかなぁ~~

「ね、遠矢?お願いを聞いて?」

いつもはない甘えた声。

あれ?何だか、今日はいい感じ。

「何でも、聞いてあげる……その代り、美彩も俺のお願いを聞いてくれるかな?」

約束をしたら美彩は守る。

負けず嫌いだからね、念には念を!

「本当?良いよ……遠矢、怒らない?」

「俺が怒ったこと、少ないと思うけど?……」

嫌な予感に、嫉妬で良い雰囲気を壊しそうになって口を閉ざす。

「あのね……その……ふふ?」

視線は台所の方。

……まさか……

立ち上がって移動する。

目にしたのは、とんでもない惨事の台所。

「何でもするから……許して?」

くすん。今日は体力が残らない……

「約束だからね!」

くそうぅ~~美彩の計画か?

掃除が終わったのは、夜中……

「ね、遠矢……お風呂、一緒に入る?円華は寝ちゃったよ。」

「……入る……」

結局、美彩には甘いんだ……俺。

ウキウキで、お風呂へ向かうけど!

「美彩、料理は禁止!これでも言いたいことは、抑えてるつもりだよ?」

「うん……私もだけど!」

「くすくす……ふふ。知ってる……美味しい思いを味わうね。」

美彩が、いつもしない料理……俺の為に何かをしたくなったんだろう。

台所は凄いことになっていたけど……それだけ美彩の一生懸命な姿が目に浮かぶ。

出来上がった嬉しさと、俺に楽をさせたいのに結果が、あの惨事。

ふふ……何でもするって、負けず嫌いな美彩が約束した。

もちろん手加減はしない!今日は、俺のお楽しみ。

美彩の愛情のこもった料理を味わったように……美彩との貴重な甘い時間で、たっぷり愛情を味わう。

負けず嫌いな美彩を、少しだけイジメて……くふふ……

今日の美彩は嫌だと言えない。言っても、今日は止めない。

こんなチャンスは二度とないかもしれないから。

明日は、会社を休んででも……君への愛情を注ぐ……

幸せを味わいながら……





逆転?(side:遠矢)


今日の晩御飯。少し仕事が長引いて遅くなったので、目を輝かせて待っている美彩。

円華も椅子で大人しく待っている。幸せな家族の時間。

後は、野菜に火が通るのを待つだけ。

出汁の味を確認するが、自分では何か分からない違和感。

小さな肉が浮かんでいたのをすくい、粗熱を取って指でつまんだ。

口に運ぼうとした瞬間、視線を感じる。

「ね、遠矢!それ、ちょうだい!」

美彩は俺のすぐ横に駆け寄り、口を開けて無防備。

俺には別の欲求がわいてくる。

美彩は、俺の視線に口を閉ざして首を傾げた。

もっと見たかったなぁ。

美彩の空腹を知って、悪戯心がウズウズ。

少し屈んでニヤリ。

「美彩、チュウしてくれたら……」

【ちゅ】

軽く触れた柔らかい唇。

思考の止まった俺に、ニッコリ。

あまり見せない最高の笑顔。

「頂戴?」

不意打ちに、自分の顔が今までにないほど赤面しているのが分かる。

悔しいなぁ。絶対に、俺の方が美彩を好きだという自信がある。

美彩は俺の指から肉を奪いモグモグ。

「美味しい。遠矢、大好き!あとちょっとだけ甘さ欲しいな。」

「……嫌いだよ。美彩は、俺を無様にするんだ。」

素直な美彩に、物足りない何か。

俺には、もっと愛情の甘さを頂戴……



(Side:美彩)


仕事が休みの遠矢はご機嫌で、おやつ作り。

円華はお昼寝中。リビングにまで広がる甘い香り。

「美彩、味見しないか?」

「する。」

円華が起きない程度の声で即答。

遠矢の元に駆け寄った。

すると嬉しそうな笑顔で、スプーンを近づけてくる。

「あぁ~~ん。」

……口を開けろと?

ぐぬぬ。いつも、その手で甘えさせられてきた自覚がある。

「美彩、俺の事……好き?」

あぁ、もう。なんでいつまでも愛情を試すような質問なんだろう。

「嫌い!」

遠矢の眼差しが優しいから素直になれないのは、しょうがない。

そんな可愛げのない私に優しく微笑み。

私は近づけられたスプーンを口に入れ、とろける甘さを味わう。

「……美味しいよ。」

「そ、良かった。」

素直に出せる言葉は、味の事だけ。

たまに甘えることも大事……

「遠矢、キスして……いいよ。」

恥ずかしくて簡単に好きだと言えず、受けた愛情を返せていない自覚はある。

あなたは呪いが解けた時、私に愛想を尽かすかな?

「ふふ。可愛いね、美彩は。愛しさに狂いそうだ。」

甘い香りに包まれ、遠矢からのキスを受け入れて。

幸せ。大好き。

あなたには私だけ。私にも、あなただけなの。

言葉にしなくても心が伝わればいいのに……




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ